行き先も知らない船から
紙テープを投げて
わたしは今日、生まれよう
別れを告げるために投げるのではなく
離れるために切れるのでもない
風に大きなループを描き
旅立つために

    ....
 
あなたがブリキの本を開く

かつて繁栄した都と
路地裏で生き抜いた猫の
長い物語が始まる

朝から駐車場を壊す音がする日
僕は電柱を売りに出かける

どこか遠くで
孤独に電柱 ....
{ルビ鳴家=やなり}という言葉よりさきに
ラップ音という言葉を覚えてしまった。
部屋の片隅なにもないところで
ごく局部的に温度が上昇または下降し
はっきりと物質化したエクトプラズムがあらわれ
 ....
私は疲れていました
致死量の仕事を終えて
自宅に帰り着いた2時
夫は先に眠ったようです

机の上に塩むすび
豚の生姜焼き
キャベツのサラダ
豆腐とワカメのみそ汁
レンジで温めると
 ....
ある人は
足取り軽く
またある人は
ズシッと重く

それでも会場へ向かう
人波
オルゴールは卑怯だ
どんなに興味のないJポップも
いや時には嫌悪する曲でさえ
オルゴールで聴かされると何だか癒されちまう
職場で休憩室に行くとオルゴールがエンドレスでかかってるから
おかげで ....
陸があって
呟きがあって
知り合った
冬の夜に
繁華街の路上に
落ちた割り箸の
片割れみたいな
よごれ方は
気に入ってる

夏の
失明する真昼に
無数の甲虫が光って
あぶらぜ ....
{画像=080717222534.jpg}

         心
         静か
        に、耳を
       傾けよう。遠
      くに聞こえて来る
      ....
明日で一学期が終わるので
仕事用のパソコンを持って帰る
念のため個人データはすべてロック
ああ、重い重い…肩が外れそうだ
エスカレータ登ったら
電車 行っちゃったよ く、くやしい
肩が痛い ....
湖にボートで乗っかり
ゆっくり漕いでいく

メロンゼリーを思い出す
地球の穴にメロンゼリー
ボートのスプンですくう

目の前にかわいい女の子が
座っていたらいいなあ
僕が冗談を言って ....
コップの中に
朝が残った
醒めきらないままの
水を分けあって
ぼくらはターンする

魚のかたちをして
水がうごく
きらめき降りそそぐ
夏のはじまり

ゆっくり水際を
泳いでゆく ....
おなじすなをさわっている
別の数を言うから
涙がでるだけ
目を見て。 それか
目を閉じて。
見渡す限りの砂場で
雨が降って
いたとしても
同じところにいる、
それだけで
掘ったり  ....
雨は降らなかった 猛暑だった
埃っぽい早朝だった
突然のはげしいノックの音に眼をこする
ふあい なんか事件っすかあ 立ち上がりながら
生あくびひとつ 鍵は開いてますよお
次の瞬間 ドアノ ....
風はそよいでいる
海を山を野原を高原を

そして丘の大きな木の下で
鍵盤にしがみつく青年をみつける

ピアノを奏でようと必死だが
しばらくみつめても音は出ない

風は額の汗を拭い
 ....
 
 
村田川の土手を歩いていると
おーい
誰かが僕の名を呼ぶ

振り返っても
きれいな夕日がひとつあるだけだった

僕の名前を呼んだのはおまえかー
違うよー、と夕日が答える
な ....
私の住んでいる部屋の窓にはガラスがなく
ところどころ破れたカーテンと蜘蛛の巣が同居している
それらをすり抜けて虫が来る
上半身裸で寝ている私を食いに来る
寝返りで死んでしまう間抜けな奴もい ....
浴槽で飼っている人魚が
歌うように名を呼んでいる
それを無視する

愛した女
が好きだったガム
と死んだ猫
が好きだった煙草
を無造作
に或い
は的確
に並べて

ウヰスキー ....
あらゆるまがりかどの公園の
無人のブランコ
ばかみたいにゴミ箱の中身はちらかったまま
カラスが群れる

夜道切り分けて曇り空は進む
ガラス窓が割れて
流線型で情報が流れ込んでくる
ひき ....
 
魚のために
椅子をつくる
いつか
座れる日のために
 
背もたれのあたりを通過する
ふと、足りないものと
足りすぎているものとが
少しずつある

雨に濡れた生家が
生乾きの ....
電気冷蔵庫が普及し始めた頃
僕たちの生活はひもじさと同居していた
だから 冷蔵庫の中には
いつ見ても細長いノンスメル(脱臭剤)の箱と
小鉢に入った沢庵だけが入っていた
おっと忘れてはいけない ....
{引用=ばたん――
ドアがしまるような
収穫の音がして、巻きあがる
走り去ったランナーの
一陣の風

よみがえる
まなざしの白さ、
青い息
ゆらぐ光彩に
ぼっ
と一点とどまる
 ....
春にまいた種が
いつのまにかもう
つぼみをつけていたことに

気づいていなかった

「先生と会えるのは今日が最後なんだよ」と
ひとりの生徒が言ってきた

本当は
知っていた

 ....
ゆれる
ねんだいがゆれてる
かこたちが
こおるこおり
ぐらすにひとつ

とけてゆらゆら
しずむまで

ひみつ

わすれたふりして
レディオから
あの日もたしか
げつようび
 ....
雲のない、風のない、
夕暮れの山の静かな尾根に、
連れ合いをなくした龍が、
孤独な炎をあげる。

ぼんやりとけむる色彩は、
何色と定めることもできず、
ひらりひらりと空に拡散し、
おぼ ....
昨日喧嘩した彼女と小川へ
蒸し暑い中で何時間
喧嘩したっけ
汗をかきながら

小川は澄んでいて
透明な絹が川底の小石をなでているみたい
彼女の足の指はまるで
ボタンに見える
きれいに ....
鍵、いれる
扉、ひらく
靴、ぬぐ
鍵、おく
髪、ほどく
服、ぬぐ
上、下、ぬぐ、ぬぐ
靴下、ぬぐ

筋、のばす
息、はく
足、すすむ
ゆれる、ゆれる
ゆれる、ゆれる
水、の ....
詩人たちよ 言葉の花火を打ち上げろ
俺たちは皆 か細いか細い神経の束
か細ければか細いほどいいんだ
繊細パワーを爆発させろ
神経の一つ一つに魂の高圧電流を流し込んで
言葉としてはじ ....
何かにつけても
茫洋として寄る辺のない
暗い淵が見えるにもかかわらず
湿りを含まない
重さのない空気を吸い
吸うばかりでそのために
くらり
反転した写真のような明るさと笑顔の中
街を歩 ....
 *灯台

   かすかにまだ
   光っている
   間違えたままの、
   やさしい思い出
   わたしの幸福な思い違いを
   あなたは
   そのままにしてしまったから
 ....
ペットに名前を付けるように
感情にも名前を付けたらどうだろう
俺は苦しみをポチと名付けた
ありきたりだがわざとかわいらしい名前にしてみた
そうすればこの苦しみの苦しみらしさがいくらでも和らぐか ....
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