すべてのおすすめ
タラップが外れて
四基のエンジンの
高音と共に
涙する風切り羽
揚力のうまれるままに
生活の足場を
芥子粒ほどにちいさく
後ろへと
吹き飛ばしてゆく
....
口を開けばこの世におわかれ
結局その理由がわからなかった
全て終わってしまった衛星都市で
いくつものぬけがらだけが
からからと丁寧に掃除されている
野良猫たちはそれでも
誰 ....
イージス
あらゆる災厄や障害から
まもってあげたい
イージス、その姿はかがみのよう
みなも、かけた
わけを聞かれると
うつむいてしまう
斜め上を向いて
....
三月まで残る雪
路傍で灰色に汚れる
事故のようにゆっくりと
とりかえしのつかないことを
ふりつもらせて
やっぱり雪が空に戻ることはなくて
溶けるか
三月まで残る雪
路傍
灰色に汚れる ....
必ず差し込まれる朝
その尻尾にぶらさがって
鋭利な朝陽の先端をつぶして出来た
鈍器のような昼の陽射しの中に
何度もなぐられては
巻き戻されてしまって
石は女のなかに
いくつも ....
鉱石は女のなかに
いくつもの錠剤と
かすかな焼け野はらの香り
それと、ちいさな紙切れは
緑がかった鉱石を仄かに
ひらめかせては
夜という夜のあとに
必ず差し込まれる朝
その尻尾にぶらさ ....
つながり続けるアールイーから
mon 16:52
「きょうはサイダーとサングリアと いろんなラムネ20錠コースです。明日やすみだからもっと盛大にいきたいところだけど、からだが重くな ....
森へ
つづく道は
つめたくて
きもちいいんだ
冬の
シーツみたいに
白くないし
深く
濡れているけど
たとえば
ビリジアンって
色が好きだった
絵の具
....
夏に実った果実は
その夏が暑ければ暑いほど
甘く、またみずみずしい
だからたくさんの輝く甲虫たちは
夏の果実に鉤爪を食い込ませて取り付く
夏の果実がとりわけ腐りやすいのはそういったわけで ....
線路というやつはなんだって
この直線的な箱を
ねじ曲げることなく
流していけるのだろう
緩やかに曲がってくクセして
ぼくは客車のぱさぱさとした手触りの赤い
キルトのようなベッドの上 ....
*
凭れたなら
鳥のように
木の欄干は鳴いて
帯のゆるんだゆかたのむねと
あのうみは
つながっているよ ....
もう香りがのこる
残り香が横断する道路の
ど
道路の
広すぎる
歩幅を足がちぎれるほど
振り出し
わたる
わたったあの環状道路
青く雲がたなびくあの
勾配ある町の向こうには
排気 ....
夏の日が薄紫色に
透けて近いので
君になにかを書きます
花が開いては
落ち
黒い道路を汚しては
それをふまないよう
ふまないよう
すこし飛ぶように
歩き
振り向いたなら
....
手のひらで乾きつつある血の色や
頬についた砂つぶ
それを指で払い落とす
あの
ざらざらとした手触りに
あの
深さをまして沈む色に
瑞々しさはあって
血の色が
紫がかっていた
だ ....
クラッカーが鳴らされた
遠い船旅への出航にも似て
さまざまな色の
無数のリボンが流れては
黒い羅紗の床を汚してゆく
ひとつの別れなのか
祝うべきことなのか
知らない
どこへ ....
金色の銀杏の葉が
車道の上で
巻き上げられて
流れて
はしる
オートバイの
吹きすぎる
排気に
何か書き込むなら
こんにちはと
さようなら
なんて
テキトーに
誰も聞いちゃな ....
あんた
さけ
のみなはれ
のみなはれ
ってうたってんのか
千葉の空が高い
ツーストのゼッペケのハチの羽音みたいな排気音も高く
犬吠埼へ行った昔
犬は ....
ジーパンに足を通す
スニーカーを履いて
アパートのドアを開ける
ひとつの町に住み
その町に射す
乳白色の光の中で
生活をする
カンカンと階段を降りて
ひとのか ....
海辺の杭だった
薄い色をした砂浜に
もうどこに打ち込まれたのか
砂に埋もれてしまって
分からない
どれだけの長さだったのか
その突き刺さった底が
砂に埋もれてしまって
分からない
....
この部屋の中にアナログ時計はなく
壁には40年近く昔の音楽祭のポスターが貼られているだけ
花に囲まれて幸せそうな
薔薇の花冠を被った骸骨の
風化させる横流れの青い光に
少し小首を傾げた笑顔
....
やるせないとは
どんな気持ちだ
胸の高さまでの柵から
少し乗り出して
空を仰いでいるのか
柵の欄干あたりで
透明度の高い水が
溢れそうに張りつめながら
....
陸があって
呟きがあって
知り合った
冬の夜に
繁華街の路上に
落ちた割り箸の
片割れみたいな
よごれ方は
気に入ってる
夏の
失明する真昼に
無数の甲虫が光って
あぶらぜ ....
何かにつけても
茫洋として寄る辺のない
暗い淵が見えるにもかかわらず
湿りを含まない
重さのない空気を吸い
吸うばかりでそのために
くらり
反転した写真のような明るさと笑顔の中
街を歩 ....
空が晴れていることを
飴玉にくるんで
青葉を打って落ちる
雨が
夜
ヘッドライトが近づく路上で
浸った黒さの中で
金色の連弾が
跳ね上げる音は
かき乱す
裏側 ....
海へ行った
病気の母を連れて
もう一年も前
秋の始まり
懐かしい
海岸線
生まれた町
揺れないゆりかご
籐の編み目の
飴色の海
その色を
ずっとみていた
ゆっくりと歩いて
波 ....
僕は睡蓮の池の絵に
名前を付けた
夕暮れ
どこかヨーロッパの石畳の町
大きな花屋が一軒あって
歩道に沢山の鉢植えの花をいくつもならべて
ほとんど黄色の花が多いみたいだけれど
どれも金塊を ....
らせんの黒いコード
何かと何かに繋がっているだろうから
青いといわれているこの島の空に
ひゅうひゅうと風を巻き
掛かっているのだろ
治りかけた風邪
鼻水をすすり
まだ少し寒いから
....
剥げてゆく空の下
車輪まわり、まわり
金の音さらに、
さらに遠ざかりゆく
緑金の春に
*
やあ
俺は
くちべたなんだ
どういうわけだか
とても仲のよいはずの奴と話していても ....
目から涙が
流れるのを見ている
左耳を枕に押し付けて
横たわって
右目の目頭から
左目の目尻から
梅雨の日のガラス窓
流れて渇いて
それを部屋の中から眺めているような
す ....
・
痣のある猫がいて
部屋の中に僕といる
・
ベランダで風に
煙草を吸っていると
くるぶしに柔らかい体が触れる
・
敷きっぱなしの布団に座 ....
1 2