弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れ ....
 洗剤の泡が
 細胞みたいにまだ
 残っている
 流しの排水口に垂れ下がり
 命乞いの甲斐なく
 数秒後
 消えてゆく
 ネスカフェの紙のふたを
 うまく破るこ ....
私は悪魔ではない
地獄の炎に取り巻かれているわけでも
コウモリの翼を持っているわけでもない
人間の中で暮らしてはいるが
私は れっきとしたマラークのひとり
今日も 無能な部下の提出する書類一 ....
それは自然のなせる業にはちがひないが

梢からまつすぐ

命中するやうに頭に降つてきた木の実

重たく硬い木の実


何か不当な打擲を受けたやうで

穏やかではなかつ ....
はだしの足跡を
顔にあてて
影の中の指を
切り取りながら
立ち上がって帰るところ
毎日 走る 音
じじじ
火の 燃える音

そんな日は
海を 見に行こう
旭日の 病気
病んだ 太陽の
走る 音

じじじ

寒風が 良寛を 屠った
それは
それで
良い事 ....
十月の昼下がり
ガードレールに寄りかかって
ゆっくり喫煙をすると
内側にある熱いものが
とろけるように放出されてゆく

確か理科の時間に習った
高温のものと低温のものを並べると
熱 ....
退屈が僕を殺す

単純なことほど難しく
複雑なことは解らない

無器用なことを言い訳にしながら
今、退屈が僕を殺そうとしている

出来ることと出来ないことの境目には
いつも壁があるか ....
しかしまあどうだ今朝のこの赤ん坊っぷりは
何にも考えてない
何にも考えてないで
シャウトしてるぜ
オパポー
オパポー
おぱぽう
おはようじゃなくて
おぱぽうだ
 ....
そらにもよ
でっかいそらが まつんだと

まんずだまって みあげてみれ
そっだらここちが するもんだでよ
ふしぎなもんさな
なしてかな

はらっぱはよ うみのすみっこなんだと
うなば ....
今夜
世界中の
すべての大阪弁の女の子が
ただ
しあわせでありますように
流れ星ひとつ


もう会えないあのこの
しあわせ願うほど
ぼくはおひとよしになりたくない


いいひ ....
大都会
夜を歩くよ
根無し草
ふわりふわふわ
漂うように
煙草の煙は真っ青で
空の彼方に消えてった

大都会
川辺を歩くよ
根無し草
ゆるりゆるゆる
漂うように
街の明かりは ....
本当の暗闇と出会う
それって
なかなか難しい
ひとつひとつの灯火を消しても
寝付けぬ夜に何処より話し声が漏れて
この街の闇は仄かに明るい
本当の暗闇
それは遠い日の感触
胎内にいたとき ....
 座席のゆがみに手を乗せて、背に残る強張りをじっと見張りながら止まった駅に降りていく。階段の手摺の汚れを照らす灯りには、あの真円の月は混じっていない。夜ばかりの駅に薄く削れた空をぐずぐずと舐めながら、 .... 親父・母ちゃん婆ちゃんは 
姉・婿・孫娘のいる富山に行き 
一週間は帰らないので
家はがらんと広くなった 

仕事を終えた帰り道 
夜空を見上げ 
雲から顔を出す十五夜お月さんと話し 
 ....
袋があって、それは不思議に光っている
袋の中に光がある

頼りない光だけれど、そっと触れると暖かい

袋は何の変哲もないありふれたものだけれど、
中からこぼれる光が袋をこの世にひとつしかな ....
?.


朝風呂が好きだった
その朝もおまえは
俺たちの小さな家の小さな風呂に
窮屈そうに仰向けになって
顔を沈めて
水の中で
目は見開いて
くちびるが
SEE YOU って
 ....
あたししか居ない部屋が寂しくて
だから誰かと居るわけでもないのに

あなた何を考えているの?
金魚の水槽はコポコポと水音を立てながら
月から取ってきた水晶玉みたいに
ぼんやりしていた
 
少しも嬉しくないのだ、という顔をして
柔らかく笑う君が
この手の中に入ってしまえば良いと思った
誰も
許さなかったけれど


喉の奥が鳴って
もっとずっと奥が痛む
そういう ....
マリーゴールドと
マーガレットの区別がつかない
ツバキとツツジを間違えて
笑われてしまう
アヤメとカキツバタにいたっては
はなっから諦観の境地で
でもそれはちょうど
パスカルとサルトルを ....
頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首 ....
昨日のこと。
夕暮れる空をくじらは泳いで
大きなくじらのそばには
半分ほどの大きさのくじらがいます。
小さなくじらは泳ぐのが苦手なので
大きなくじらよりも先に
尾が橙色に染まってしまいます ....
女にふられたので、
好きで好きでたまらない女にふられたので、
砂漠へ行って死のうと、
そのままとかげとかハゲワシだとかに、
食われてしまおうと、
十月の運動会で俺は考えた。
町内会のかけっ ....
ぼくの母さんは世界の果てで
アイスクリンを売っている



センサスによれば国道999号の平均交通量は
過去最高の1万台に達したらしい
世も末だねと母さんは顔をしかめるだろう
これほど ....
当たり前の衣食住
当たり前であろうと
みんな必死だね


嘘みたいなセレブたち
嘘みたいであろうと
みんな必死だね


ヤクザ役の役者たち
ヤクザ風であろうと
みんな必死だね
 ....
日曜の午後 
立川のカレー屋で行われる結婚式で 
新郎新婦に贈る小さい花束を傍らに 
大船駅から乗った東海道線に揺られている 

向かいの席に座った空色の服の女は 
携帯電話を鞄の上に持っ ....

ひとあし歩くごとに
わたしの身体からは石が落ちます
からからに乾いた石は
薄い色をしています
わたしはそれを
さらさらかちかち と踏みしだき
疲労し続けましょう
名 ....
割れた爪をぱちんと切る 君の音と
呼び鈴の音がかさなる。
そんな一瞬って、永遠になるかもしれない。

描かれた以上に、物事は動いていた。
ベランダに干されていたストッキングも
風に迷い込ん ....
I Love 熟女という名のもとに
私はカッポレカッポレしているので
唐突にネットラジオを聴きます
刺激的です! ネットラジオ
ビーンビーンなります
そして鳴るのです共鳴です

夏に咲き ....
棍棒を
作った
オークの
頭四キロの

素振りを
ずっとしてた
だってお前が
怖がるから

引っ越した家は
夜少し静か過ぎて
お前が怖がるから
まあ実は俺 ....
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