いくつかの災厄のなかで
わたしは書机の下で頭をかかえておびえ
くらやみのなかで
あらゆる醜態をさらした
偽善と臆病とともに怒りを
蛙と虻のあと
彼らは過ぎ去ったように思えた
瓶につめられ ....
ルクトさんの住む家
から見える
パッチワーク的な畑
風が吹いている
鳥も二、三羽
屋根は赤い色
瞳は茶色
たまにやっている
散歩など
太陽がどちらへ沈むか
月がどこからひょ ....
はつかねずみ
きみの美しい視線が
ぼくの背に注がれていた時
ぼくはオールをこいで
春は
緑のビーズをこぼしたみたいに
あちこちで転がり跳ね回って
きみ
きみの手の中で飼 ....
ほら横なぐりの
ぼたん雪のなかを
回送バスがはしってゆく
窓を曇らせ
満員にひしめいた乗客の気配だけを乗せて
がらんと無人の灯りを点して
回送バスがはしってゆ ....
嘆こう
いつか早朝のラジオで聴いたんだ
「前半しっかりと絶望すること。
それが復活や飛躍への、ステップになるのです」
私たちの脳は生きるために
絶望と絶頂を繰り返す
友だちが教えてく ....
透明な絵本を
じっと見ている子供がいて
クレヨンを持って
かがやいた笑顔をみせる
(これは何色なの?
としきりに尋ねてくるので
答えに困って
好きな色で塗ってごらんと
うなず ....
つなみでうちあげられた
なもないさかなも
ひさいしゃの
ひとりなのだろう
なもない
さかなというなの
さかな
しかしそのさかなにも
ちゃんとなまえがあって
あのう ....
彼や彼らが死んで
しばらく経ってから
君は埋葬する
そして理解する
人は死んでも星になんかならない
人は死んだら死体になる
そして記憶になり
いずれ忘れ去られる
埋葬される者はまだ幸運 ....
鉄鉱石の中にある海を
小魚が泳いでいく
夜の明けない方に向かって
今日は海が重すぎるから
いつまでたっても
カモメは空を飛べない
そしてわたしは
シャボン玉の作り方を
....
昼休みのことだった
窓を過る影と鈍い音
次の瞬間に聞こえる悲鳴と溜息
今日、同僚が飛んだよ
別に珍しいことじゃなかった
俺はイヤホンをつけていて
隣の席の同僚は耳栓をつけていた
取り ....
ATの仮免に落ちる
友達は受かる
ATの仮免に落ちる
S字の縁石に乗り上げる
ATの仮免に落ちた
みんな受かったのに
ATの仮免に落ちる自分は
荒涼とした大地に芽吹く
寒空の下に頬 ....
聞こえて来るものがある。遠い過去から聞こえて来るものがある。それでもそれは今ぼくの耳元で鳴っている。ノイズ。新宿のエスカレーターを下っていく友人を見ながら、私は友人がこれから会いに行く人のことを考えて ....
もう少し
視野を広く持ちたくて
川の土手で写生していた
目の前を一頭の牛が通り過ぎて行く
あれを描けばよかったのに
川の土手で都会の高層ビルを描いていた
そこで暮らす自分の姿を ....
荒川洋治が書き記す、詩についての文章は、批評家や評論家のそれとは違う。意図的であるのかどうかはわからないが、エッセイ的であることをやめようとしない。しかし、カン所はいつも的確に押さえられており、透徹 ....
列車が揺れている
私は寒がりなので
毛布にくるまりながら
じっと座っている
ポケットの中には
手に握りしめられた切符が
入っている
行き先はわからない
....
クランクを回す
上りのエスカレーターが動き出す
人が乗る
負荷がかかる
乗る人の数は徐々に増え
更に力を込めて回す
見上げると人が
下りのエスカレーターを待っている
上り ....
詩を書くこと、つまり芸術というのは、一枚の写真を撮ることに似ている。
一見、平和そうに見える世界も、逆にそうでなく見える世界も、
ここからこんなふうに写真を撮れば、こんなふうにも見 ....
三年ぶりに異動が決まって
どんな気分かだなんて
芸術家には分かるまい。
土手から西日がもれて
絵画のような光景が広がる。
でもそこに立ちはしない
車を走らせるだけ。
整備工の友人は
仕 ....
【無為自然】
最近、写真を撮ったり絵を描いたりする。日頃からよく風景を眺め、虫や鳥や野生動物や雨や雲を注意深く観察したりして、クソ田舎で無為自然な生活を送っている。
そういう無為自然の視点 ....
赤い毛糸のような歴史の先端で
ストローに口をつけて
永い終わりが始まった
息を吹き込んでそっと膨らませたビッグバン
洗濯物が揺れる小さな緑の庭で
生まれては弾けるように消える
幾つものシャ ....
ここでとりあげる{ルビ佐藤泰志=さとうやすし}・著『{ルビ海炭市叙景=かいたんし じょけい}』は長らく絶版であったが、2010年の秋に文庫化が実現している。ほぼ同時期に映画化もされており、内容に言及 ....
ちょっと 宇宙まで
行ってきました
地球の生活
苦しかったから
いっぱい呼吸をして
きました
ついでに 月に
寄って きたのさ
やっぱり うさぎは
一匹いたよ
....
部屋の中で
未だ見ぬ 桜の花びらを
眺めてた
外に出て
車窓越しに
春を 見つけた
柔らかく 温かい
そんな筈は 無いのに
想像させる
甘い恋と
寄り添う 二人の
未 ....
ふと目覚めた枕もとに
思い出がきていた
いつなのか
だれのものなのか
わからないのだけれど
波の音が聞こえる
思い出の持ち主がいないので
尋ねることもできず
わたし ....
吉原幸子が亡くなってもう何年になるだろう。その吉原と近しい間柄だった石原吉郎が亡くなってからでもすでに三十年が過ぎた。一年がとても早く、時代の移ろいのスピードが加速度的に年々増してきている気がする。 ....
屑星で汚れた夜空に投下するスペースデブリ(わたしがみえる?)
「まってたよ」わたしの形をした猫に殺されて世界はなにもないまま
それあげる、ドーナツ型のクッションの血液の匂いしみつい ....
国道16号線を走る
千葉44km
渋滞に巻き込まれる
千葉42km
千葉40km
ゆっくりと近づいていく
千葉30km
千葉4km
もう少しだ
そう思って ....
大きさはクリアしたのに
質量オーバーで
1000円以内で 送れない
この間 安かったのは
パートの叔母ちゃんが
料金表を
見間違えた からなんです
そんなコトも 露知らず
「持 ....
朝早く起きて背筋を伸ばし
人の嫌がる重荷を背負い
嫌味にも笑顔で応えて
困難にすら感謝して生きる
あいつはいいやつだな
一言目には みんなの口から出る
でも ただそれだけ ....
髪を切った。たくさん。
ばかに明るく、たくさんの鏡に囲まれた美容院。やわらかくなった毛先と、骨ばった手にほぐされる頭皮。わたしは犬のように従順になって、なされるがままでいた。耳元をとおりすぎる小気味 ....
あおばさんのおすすめリスト
(15345)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
形骸
-
構造
自由詩
8
11-3-21
ルクトさん
-
ふるる
自由詩
10*
11-3-21
はつかねずみ
-
ふるる
自由詩
8*
11-3-20
それでも回送バスははしってゆく
-
石川敬大
自由詩
16*
11-3-19
嘆く背に桜前線の風が吹くように
-
たちばな ...
自由詩
19*
11-3-19
透明な絵本
-
かんな
自由詩
33*
11-3-16
名もない魚
-
小川 葉
自由詩
4
11-3-15
Doors_close_soon_after_the_mel ...
-
カワグチ ...
自由詩
19
11-3-13
授業
-
たもつ
自由詩
5
11-3-10
人形愛護センターにて飛んだよ
-
一 二
自由詩
6
11-3-10
ATの仮免許に落ちる
-
skc
自由詩
3
11-3-9
【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1 ...
-
渡邉建志
散文(批評 ...
5*
11-3-9
視野
-
小川 葉
自由詩
3
11-3-9
【批評祭参加作品】文法に果敢に肉薄する文学
-
石川敬大
散文(批評 ...
5*
11-3-7
列車
-
マフラー ...
自由詩
3*
11-3-7
生業
-
たもつ
自由詩
4
11-3-7
【批評祭参加作品】この世界を特別だと思ってる人たちへ(相田さ ...
-
小川 葉
散文(批評 ...
4
11-3-6
愚痴
-
プテラノ ...
自由詩
4
11-3-6
【批評祭参加作品】詩を特別だと思ってる人たちへ
-
相田 九 ...
散文(批評 ...
11*
11-3-6
永い終わり
-
村上 和
自由詩
7
11-3-6
【批評祭参加作品】となりに、近くにいる人は簡単には理解しえな ...
-
mizu K
散文(批評 ...
4*
11-3-6
ちょっと_宇宙(そら)まで・・・
-
森の猫
自由詩
8*
11-3-6
たけのこ
-
藤鈴呼
自由詩
3*
11-3-5
宇宙は膨張している/わたしのなかの
-
小川 葉
自由詩
4
11-3-5
【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性_ー石原吉郎試論ー
-
石川敬大
散文(批評 ...
6*
11-3-5
ナタリー・イン・ブルー・リア
-
ピッピ
短歌
7
11-3-5
目的地
-
たもつ
自由詩
4
11-3-4
もも
-
藤鈴呼
自由詩
2*
11-3-4
灯火(あかり)
-
yumekyo
自由詩
5
11-3-3
過去のこと
-
はるな
散文(批評 ...
2
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