夜道を散歩しながら
人知れぬ夢を呟くと
胸に溢れる想いは
目の前の坂道を昇り
仰いだ頭上には
只 白い月が
雲間から地上の私を見ていた
半年前
オートバイに乗ったお爺さん ....
その夜 女神が降りてきて
真実を映す鏡だと言うから、覗き込んでギョッとした
これは私ではないと訴えたら 女神は笑う
皮膚が剥がれているのは
上っツラだけ善く見せようとしていた所 ....
鉄の味が庭先をくるくる泳いで
昔の叔父さんに似ていた
遅すぎたわけではなく
けれど早すぎたわけでもない
生まれてこないものも
生まれてくるものと同じくらいに
表札の所有者なのだから ....
私の前には先生が歩いていた
あの角まで あの角曲がるまでに
奴をどう調理してやろうか、
そんなことばかりが頭を滑走
肩越しに見え隠れするオレンジを睨む
舞い散るチョークの粉は美である
どう ....
赤ちゃんが乗っています
世間でステッカーがはやりはじめると
和泉町3丁目にある零細ステッカー会社の社長はへそまがりだから
赤ちゃんだけ特別扱いするのはおかしい と言い出し
次のような亜種をどん ....
(その1)
思い出すのは高階杞一さんの『早く家へ帰りたい』。
旅から帰ってきたら
こどもが死んでいた
で始まる詩だ。『キリンの洗濯』やら「タンスとダンスを」などの飄々とした詩で彼の ....
わたしの肌は
蜜柑のかおりが
少ないせいか
かさかさに
なってしまって
こんなんじゃ
新しい恋なんて
できやしないわ
燃えるような
熱い恋だなんて
わたしは
そう、言った ....
祝祭iii セルロイ℃ノ灯(Ze..唖): グラス徒+兎.ラ・pissの塔-リアス式銃弾、Sun
L-蜜蜂.o碧眼.0翁.pな落下no.賛歌、聖典プ-ルノ酸化した世界座の燃ゆ-ルル-土星売り
ソノ ....
幸せは一杯の紅茶
飲み込めなかった昨日の苦さに
{ルビ一=ひと}さじの砂糖を溶かす
幸せは真昼の入浴
日常の{ルビ垢=あか}に汚れた{ルビ心身=こころみ}を
泡立つタオルで浄い ....
少女は高い{ルビ椅子=いす}に上ろうとしている
小さいお尻をどっかり下ろすと
食卓には色とりどりのご馳走とデザートが並んでいる
食べ終えると飽きてしまう少女は
物足りず他の何かをき ....
どおおんと山を越えてくる
それは鯨 たぶん
そのとき大きな波の下で ひとは
ディープブルーに染まる
背中から背中へ流れる
かなしみの深さを ひとは
知ることができない
だれも ....
浴衣を着たこどもなのでした
まだ菜種梅雨も過ぎぬというのに
二本の鉛筆のように突き出た裸足は
春泥にまみれているのでした
これあげる
こどもはあかるい声で言いました
小さな手に握られて ....
いつだって空は俺の庭だったよ
無法なソ連の女パイロットが飛び交うときも
嫌味な米軍野郎が進んでくるときも
空はきっと俺たちに逃げ場を提供してくれた
あるとき攻撃をすりぬけて雲の上に出て
....
ねえ、ブランシュ、
あのとき
あなたが越えようとしていたものがなんだったか
今のわたしにはもう
それを知る手だてもないけれど
あなたはいつも わたしの
理解の範疇をこえて
日常のただしさ ....
唐突だけど。
死ぬ真際に何を言おうかっていうのは、だいたい考えてるんだ。この人には、これって感じで。
死はとても唐突で、残酷なものだ。美化する勇気を、自分は持たない。
* * ....
びっくりするほど似ている流れと色があって驚いた。
くりかえしくりかえし
「無理だ」
「もうやめよう」
が寄せては消える気持ちの流れと、
そこから逃れられない縛りのようなものがとても似てい ....
寂しい川面をゆく鳥たちが泣いている。
呼吸する都会の爛れた果実の奥で、生きる者の哀しい涙が漂っている。
世界の涙の尖塔が、青い空を突き刺している。
時間の感覚すらない。呼吸している感覚すらな ....
団地の掲示板に
吊り下げられたままの
忘れ物の手袋
歩道に
転がったままの
棄てられた長靴
{ルビ棚=たな}に放りこまれたまま
ガラスケースの中に座っている
うす汚れた ....
ばあちゃんは、今年七十五歳だ。十人ばかしの小さな老人ホームに住んでいる。亭主の残したラーメン屋を売って、ここに移ってきた。ばあちゃんは、天涯孤独だ。亭主は、十数年前に、息子は、それよりももっと前に ....
声がする
そこに
手をささげる
声がする
うつくしい声
うつくしい瞳
うつくしい日
「ルイーズの空」
ルイーズはいつも空っぽだ
ルイーズはいつもとんがっている、山高帽の
だらしない紳士の椎骨あたり
途方も ....
大きな口を開けたワニが
天気の真似をして
すっかり晴れわたってる
魚の数匹は遠ざかり続け
それでもまだ
誰の指にも泳ぎつかない
沢山の羊を乱雑に並べて
さて、どれが正解で ....
しろいけいこうとうのしたで
あなたのはだはとてもすきとおってきれいにみえた
あなたのはだのふくらみやくびれをがいねんでなぞりながら
わたしはしずかにしゃせいをした
....
とてもすきなものが多すぎる。
しかも、そのすきなもののひとつひとつが、あまりに強すぎる。
わたしは身体に支配されたかと思うと次の瞬間には音に支配されていて、
その次の瞬間には色に支配されてい ....
このじきにだけ あらわれるから
春の妖精ともよばれます
すぐにおわるけど ちゃんと悩んで
泣いたりしないと 花ひらきません
ゆっくり急げ きみたち
あなたのしあわせを願うその端で
あなたのしあわせを
憎んでいる
あなたが誰かに
かきよせられるその事実を
感じないように努めている
あなたが傷つけばいいとどこかで思ってる
地球が ....
耳たぶを
どうか
噛みちぎってほしい
此処から出られなくていい
私が誰で何処から来たのか
なんのために生きているのか
なんども問いかけて
なんども見うしなう
歌なんか
....
油染みだらけの記憶のわら半紙提出期限をとうに過ぎ去り
透明なグラスの底を目にあててきみの星座を見る白昼夢
あの夏にきみが投じた問いかけのこたえをさがす 波のまにまに ....
喫煙所に近づき
しゃがんで声をかける
「 調子はどう? 」
{ルビ煙草=たばこ}をふかす R {ルビ婆=ばあ}ちゃんは眉をしかめ
「 調子悪いねぇ〜・・・
明日は歯医者
....
歩く すきまだらけのからだに
すぐさま
圧倒的に
言葉の貝がらが入ってきて
それは ひとのにおいがして
たいそう悲しい春先の光となる
光だけだと寒いから
あなたは空と ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512