花はどこへ行った

なんて問い続けるよりも大切なものが私たちにはあった
それが今の生活であることは否定できないし
ひとの望むものなんて目に見えるものに他ならないのだから

ありふれた結婚生 ....
{引用=



雨ざらしの、皮膚の、角質層に浸透しない乳液と、老廃物で崩れ
た二重と、汗ばんだ呼吸で、余計に湿度を寄せて、抜け落ちた獣
の毛が、二人の表面に貼り付いてとうとう一対の獣になっ ....
あした と あたし は

よく似ている

あしたのあたし
あたしのあした

疲れきって
予定をぼうにふった
あたし

さて あしたはどうしよう

とろけそうな太陽に身をかくし ....
鹿沼公園 梶ヶ谷第一公園 あさやら公園 じゅん菜池緑地
こうえんらはその下で ゆるく手をにぎってつながっているという

きょうも
ひとりの女(ひと)がだまってベンチに座ったままだ
こうえんは ....
 
 
他愛ないことで
妻とけんかして
外に出て
煙草に火をつけると
おそらく風なのだろう
秋の涼しい風が
背中を
とん、と叩いた

わかっている
誰なのか
わかっていた
 ....
浜にあげておいた
古い舟は
帰ってくると沖に流されてしまっていた

海を眺めると
海面を文字が跳ねていた
潜ったかと思うと
再び跳ね上がる
いつまでも跳ね続ける
不完全な単語の
文 ....
文=まどろむ海月   絵=彩也香・M

{引用=

   二人の人間が死ぬと、一匹の猫が生まれる。だから
       猫の目は 時々 左右 色が違う。


 ....
紙をたたんで、小舟を浮かべて、
わたしは出発した。
人のかたちをするものになろうとして。
その指を切り落とすと、指に指の、
その目をえぐり出すと、目に目の人格が、
一つ、与えられる。
そし ....
空の青と
花の赤を
重ね合わせた
君の可憐のマゼンダを
追いかけ過ぎて
森の緑を彷徨った

森の緑と
空の青を
擦り合わせた
僕の弱虫のシアンを
飼い馴らせなかったから
花 ....
大袈裟な 君のこと
僕の行方など
分からないのだろう

考えることが 嫌いな 君
考えることしか 出来ない 僕

それでも 考えても 考えても
「答えは出ない」 君は 言う

君の ....
 
 
一団の土地から分筆された遊休地に
エンジンのない建設機械が放置されたまま
数十年が経ち
その間にもわたしの弟は
産まれてこなかった
だからまだ名前もないし
椅子に座ったこともな ....
めずらしく
たったビール2本で
酔いが足をからませる

まっすぐ歩いているつもりが
どんどん道の
真ん中に寄っていく

ボワンとした視界に
でんとトラックが
踏み切り待ちしている
 ....
スーパーマーケットの
タイムサービスで
父が売られていた
お惣菜売場の隅に
さみしそうに立っていた
私が買った
うれしそうな顔をする父に
何か食べたいものはないか尋ねると
 ....
久しぶりに酔いつぶれた

たった瓶ビール2本で

その日はなにか その人に
無意識にメールをしてしまった

新宿で待ち合わせて
1時間だけ飲む

何年ぶりだろう
いっしょに飲むな ....
線路というやつはなんだって
この直線的な箱を
ねじ曲げることなく
流していけるのだろう
緩やかに曲がってくクセして


ぼくは客車のぱさぱさとした手触りの赤い
キルトのようなベッドの上 ....
何かを 君に 伝えるために
言葉ばかりで 足りなかったから

僕は 大好きな 大好きな
この音を

君に 届けたいと
そう 思ったんだ

★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:* ....
今、学校の課外とか、夏期講習とかで大変なんですけど、
親戚が家に遊びに来た時、
半年振りに会った従妹の女の子が、
俺の疲れを吹っ飛ばしてくれたよ…

少女の素晴らしさ、
ろりっ娘って本当に ....
出来れば 完成された 写真が 
本当に 綺麗で有ることを 望むけれども

本当は そうじゃ無いんだって 
心が 言ってる

今 写真に 残したい
今の 私が 耀いて 生るから  ....
 
 
欲望にはかなわずに
まあその辺は
勘弁していただいて
いくつかの
間違いもございましたが
おかげさまで
今こうして
なんにもない、に
なりました
とで ....
高速道路からみえる
一番目立つ集合住宅
おそらく
ここは
八王子あたり
名前を
つける

マツリハイツ

窓のひとつ
ひとつに
すき 
きらい 

はりつける
頭だけ ....
俺たちはもうそんなに遠くへは行くことができない
俺たちにはもうそんなに力が残ってはいないし
それにもうじゅうぶん遠くまで来てしまったから

石段を降りた水面の高さから
今度は二段昇った水の上 ....
トイレの白い個室のドアには蛾の羽根についていた模様の一部がついている。トイレットペーパーで蛾をおさえつけ両手でつぶす。蛾はトイレットペーパーで見えないがきっとつぶれている。その跡だろうこの灰色の汚れは .... 恋の終わりは
キリバナ
キリバナ
死んでいるのか
いないのか

ガラスコップの
一輪挿しが
あっけらかんと
咲くように

私は
あなたを失って
冷たい夏を咲いている

も ....
 ゆするくんが席をゆずった
 ゆずる君が席をゆすった
 ゆするくんが席をゆすられた
 ゆずる君が席をゆすり受けた


 ゆするくんがゆずる君を揺する
 その順番をゆずる君 ....
 
 
汽笛が鳴って観覧車が発車する
ゆっくりとした速度で空を進む
向かいの席に座った初老の女性が
リンゴを剥いている
いかがですか、と勧められ
親戚でも無いのに半分をいただいた
リン ....
じわり、じわり
おぞましい何かが
昼寝のあとの
とろけたわたしに
迫ってくる

自分を嫌いになることは、
悲しいことだよ
きっと
きっと
とても悲しいことさ

冷房が最高に効い ....
起きぬけに 聞こえ驚く 蝉の声

*

蝉の声が 珍しい 訳じゃあ 無かった
地元でも 聞いていた 筈だった

だけど 起こされる迄の 大音量は
初だったので

思わず 録音スイッ ....
ティペットが
アイに通らなくなってきた
おそらく
それは右眼のせいであった
自分が思っている以上に
自分自身の
メンテナンスが必要だった

フライロッドにも
リールにも
ラインにも ....
家族愛はすべてこれを禁ずる。
愛は諍いの源であり、
家族を無謀にも守ろうとするときの愛こそは、
もっとも危険な諍いを生むからである。

落ちてゆく者は、
落ちるがままにとどめる。
かれを ....
遺影の視線は遠い
叔母は この荒れた庭の様相を
予想していただろうか。

二十年近く、庭の入口に置かれたままの
雨曝しの軽トラックの窓から
自生した花が突き出ていた。

自宅菜園の畑は ....
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