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*灯台
かすかにまだ
光っている
間違えたままの、
やさしい思い出
わたしの幸福な思い違いを
あなたは
そのままにしてしまったから
....
やさしいのか
やさしくないのか
雨の日のあなた
約束の時間に
遅れたわたしに
何も言わないので
カフェオレを頼んだきり
わたしも黙って俯いてい ....
夕暮れ色の飛行船、
たくさん空に浮かんでいたけれど
空と一緒の色だったので
誰にも気付かれないままでした。
*
毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
....
わたしの中に森が生まれたとき
その枝は音もなく広げられた
指先から胸へと続く水脈に
細く流れてゆく愛と
時おり流れを乱す悲しみ
わたしを立ち止まら ....
{引用=八月の月で海鳴り
それでも僕らは響く波音を知っていた}
僕は今、紺碧の{ルビ海=マーレ}を閉じ込めた窓辺から
君に宛ててこの手紙を書いている
{ルビ ....
だけど君は駆けていったんだ
思い出の丘を、雲の影が滑る
丘の緑はかわることなく風に揺れ、
遥か彼方に、夏の海を臨んでいる
ごらん、あの細い坂道に
僕ら ....
*黒猫と少年
黒猫のいなくなった部屋で、少年は揺り椅子に腰かけてぼんやりしていた。
がたん、と二番目の窓が音を立てて、
黒猫が顔を出した。
「どこに行っていたの ....
*手紙
古びた手紙の束を、抽斗の片隅に見つけた。
色褪せた切手の上の消印から、
少年は手紙を受け取った日のことをぼんやりと思い出す。
その日は朝から雨が降っ ....
*バレリーナ
古びたオルゴールの蓋を開けると、バレリーナがくるくると踊りだす。
それから、名前を思い出せない曲がゆっくりと流れ出した。
黒猫は、もう随分前からくも ....
*鉱石ラジオ
暇をもてあました少年が、ふと思いついて鉱石ラジオを作った。
黒猫はそのかたわらで目を細めてその様子を見守っていたが、
いくらたっても何も聴こえてこな ....
幸福を抱きとめて静止するあなたは、蕾のすがた
胸に手をあててわずかにうつむくその、
長い祈りにも似た、沈黙
春を知る朝の、淡い喜び
風が冷たくても、
....