たんぽぽのように ふわりふわりと あなたの所に行って

あなたのくったくのない微笑を見ていたい。

そこで 芽を出し ずっとあなたの傍にいたい。

・・・でも本当はありのままのわたしが あ ....
「わたし あかいろがすき」

悪い癖で、また盗った。

チョークが二本とチョコレート

それが何かも分らぬうちに
それが何かを誤魔化されて

歌うくちびる
るるらりら

しょく ....
あなたのうみにとびこんで

あたしをひろいにきたの

これはぶかぶか

あれはきつきつ
         
それはこそばゆい

どれならぴったりくるのやら

やわらかい ....
夜、自転車で街を疾走った
団地の上で月がいびつで
僕は口笛を吹いた


本当は聞こえて欲しい


夜風が冷たくなってきた
君の家の灯りが見える
君の部屋
指さき
ひ ....
にんげんを神の家畜だと思った人がいる
あるいはそうかもしれない

そんなのおかしいよと誰かはいうだろう
あるいはそうかもしれない

じゃあほんとの家畜はどうなるんだと
ニュースキ ....
誰かわたしを飼ってください
朝 かろうじて
そう わたしの耳がささやいたとき
ひとが姿を現しはじめた

かつて わたしがどんぞこで
まだ 形をとりもどしていない頃だった
 ....
 えんじ色の椅子が整然と備え付けられた区民会館の端の席に、太一はめったに袖を通さない濃紺のスーツを着けて座っている。成人式らしく客席にはあでやかな色の和服を着付けた同世代の娘たちも目につく。館内禁煙と .... ある日見た空に
飛行機雲が白くひかれていて
それが矢印のように思えました

きっとそんなところにもきっかけはあって
感じたままを力の向きに
見上げるその
角度にも
だから


  ....
虹の彫刻に
あこがれて 雲を
きざんでいるが
美はいつだって ぼくらを
さげすむ
並木道に陽が射して
黒と緑の横断歩道


緑ばかりを選んでいたら


まぶしくて
     ぽとり



地中深くまで
潜って行く


黒い粒



また逢える ....
手で、ずれた眼鏡をあげる、八月の、水をふくむ、曇り空。閉鎖された父の勤務先、N社の自動車工場の脇を通り、母の自動車で、霊園に向かう。いままで納めることのできなかった、父の灰が、眠っている。わたしは、新 .... ぞくぞくするものだから
風邪をひいたように思ったのだけれど
なんだ
背中に離婚届が貼り付いていたのか
ついでだから
その上から婚姻届も貼ってしまおう
少し温かくなるかもしれない

それ ....
わたしが毎晩家にいると
友達がみんなバカにする
約束も無いのに男を待っているなんて
負けてる証拠だとバカにする
お風呂の扉の前まで電話を持ち込んで
シャワーの間も電話がかかってくることを期待 ....
ぼくなあ、
甘い酸っぱい苦い臭い鼻のまがる液体を
朝昼晩夜朝昼晩夜三六五日毎日毎日飲み込んで
下痢をしておるのじゃよ
もう幾年も、じゃよ
未消化でどろどろとしたのを
垂れ流しておるんじゃよ ....
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
わたしたち砂にまみれた膝をいとおしむ
これは骨のかけら
それとも砂糖つぶ

はちみつのようにとろりと濃い夜が明け ....
わたしにゆるされることは手をかさねること
六月の墓地でしゃがみこんで草笛を吹くと
わたしの手はやわらかい土のように
生まれたてのなめらかな手を覆う



(ささやくのはありふれたうたのよ ....
一歩一歩沈む
沈む
さ迷う森のあなたに
黒く湿った土が香り
白日夢の欠けた月が
まあるく青ざめて眠る

白む指先で
鼓動にふれる声が
ふるえて腐蝕へ沈む

をんなは
なぜか黙り ....
朝が来ない
出せもしない手紙の 長い夜 
想うのは君のことばかりだった

 遠回りして 
 君の教室の前を通り過ぎてみようとしたとき
 階段のところでいきなり 出会ってしまっ ....
待ち合わせに遅れそうな時
メールひとつで済ませてしまう
嘘っぱちの言い訳も
おたがいの顔が見えないから
罪の意識を感じずに誤魔化せる


どこへ行ったか
寂しがり屋の待ちぼうけ

 ....
言葉しか信じない
言葉のほかに信じられるものなんて
キャラメルぐらいだ
パパはね うならい やってんの

うれしそうに 駆け寄ってきた ちいさな女の子

これはね パパの おみくじ

と さしだした小さな手には いちまいのカード

単勝 ディープインパクト ....
 まだ暗いうちにふと目を覚ますと枕元に少女がいた。眼を見開いて私の顔を粘っこく見ていた。しかし熱のこもった眼ではなく、私を通してはるか向こうを見ているような、澄んではいるが遠い眼だった。少女は16、7 .... 彼の眼は遠くの風景を見る
地平に沈む夕陽の色
冬に砕ける灰色の海
湿地を覆う冷たい霧


彼の耳は遠くの音を聞く
森に降る激しい雨
向こう岸の教会の鐘
鉄橋を越える貨車の響き

 ....
木の葉が水面に舞い
遠い街の音楽隊が通りを行く時
私の想いはそこはかとなく乱れ
思わずイギリスの賛美歌を口ずさむ

耳を凝らし密かに求める主の言葉
祈りの後に祈りを重ね
右であろうか 左 ....
泣くために悲しんだことがある


砂浜にかじりつくようにくいこんでいた白い貝は
まるで生きているみたいに艶やかな色をしていたから
指先で撫でたら深くもぐりこんで逃げてしまうような気がした
 ....
与えられた運命のがっちりつなぎあわせられた糸
ほどこうともがくぼくは

一匹の昆虫としてもぞもぞと眠るだけ

何かしなきゃってわかってる
信じようとしている運命を
それが正しい道 ....
これから先何年経っても忘れない
そう思ったことさえ忘れてしまう
あなたもきっと忘れてしまった
お互いに忘れてもう二度と会えなかったら
死んでしまったことと同じ
わたしはきっと忘れない
血を ....
僕の部屋の電球が切れた。

仕事から帰ってきて

丁度いい高さにあるスイッチを押すと

電球が切れていた。


なんだ?


何度かスイッチをカチカチと押したが

やは ....
夜闇の波に揺れて
わたしの海は広さをなくす


いったい何が不安なのかと
ひとつひとつ問いかけてくる波に
ひとつも答えることもなく


わたしはひとり揺れている


「あ」から ....
わたしのお腹
別の生き物

だって
鳴くから


わたしの意思を無視して
勝手に鳴く

泣きたいのは
こっちだ


静かな場所で鳴くな

情けない声で鳴くな

好き ....
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