雷鳴に犬が怯える空で
やさしい言葉のように冷たく凍ったものが
老人ばかりの街を無数の宝石で覆い
 (あるいは灼石灰のような骨の粉)
まぶしく結晶に閉じこめる

今だけはうつくしいだろう ....
今日が終わった。
果して収拾がつくか
はなはだ疑問だった
10ダースの艱難辛苦のうち
7ダース半を片付け
2ダース半を明日に残し
おつかれさま
のあいさつのもと
くそったれと表現すべき ....
ぼくはなかない
かわりにぎゅっとだきついた
ねえママ ぼくのおときこえる?
ねえママ ママのどきどきつたわるよ

ママもなきたいんだね
いっぱい いっぱい
がまんしたんだね

こんど ....
しとしと雨が降る日には
なんだか耳が遠のいて
クツノウラの世界へ行けそうだ。

狭くなった世界の
はずれにあったベンチに腰掛け
雨が降らないこの場所で
夢のカケラをひとりつまみ食い。
 ....
夢のなかで草原を走りまわってきた
飛び乗った駐輪場の屋根が思ったより熱かった

スーパーの裏口で搬入のおっさんとの
ちょっとしたバトルに勝利を収めてきた
玄関のペットボトルのむこうに
 ....
木魅 (こだま)


「好きだ」
溢れ出した想いを返せないまま
あなたは土に還り
わたしは朽ちることもできずに
「好きよ」
抱えすぎた言の葉をざわめかせながら
夜毎 すすり泣 ....
誰もいない校舎、
美術室のベランダに干されていた絵筆が
夜風に揺れている。そうして塗り重ねられた闇は
やがて夜となり、題名のないキャンバスの中で今夜、
風花が降るばかり。
ほんとうかどうか
知らないけれど
詩の勉強会
みたいなところで
こんなふうに言われるらしいね

悲しいだとか 
せつないとかの
感情を指すことばを使わず

あなたの気持ちを伝えてご ....
月が
30Wの白熱電球の輝きを持って
フラリと空にある

都会の冬の夜空では
どんなに空気が澄んでも
瞬ける星は数少ないから

月は遠慮なしに
夜空を支配できるというのに

少し ....
やっさん
やっさんは九州から中卒でやってきた人だった。
工場に勤めて、結婚しそこなったまんまで55になった。 なんかの副職長という肩書きがついていたけど、給料は安いまんまで、九州から出てきたとき入 ....
 
もう長いこと
あなたと暮らしてきたけれど
もし今日が
はじまりの一日だったなら
僕はあなたに何を言えばいいだろう
と考えた

暮らしてきた日々とひきかえに
これからも暮らすための ....
{引用=

寒さよりもしみとおる孤独に
大地は沈黙している

屹立する枯れた木は
信じる力を失い
他人の顔をした
春の訪れを恐れている

蟻の巣は崩壊し
{ルビ ....
わたしは助走する
ふり返る季節にはきっと
落し物などない

雪で描いた夢は
春を待って溶けゆくけれど
消えはしないよと
誰かが言う

春になればまた
花びらが夢を咲かせる
たとえ ....
遥か昔、人々がまだ目に見えぬものを信じていた頃、タマトギは島に一人はいたものだという伝承が南方の島々にだけ残っている。


涼しい夜を 選んで歩く
月夜が照らす 道を明るく 
男は行くあてな ....
悲しいけど涙が出ない
そうだ涙を作ろう

 目の奥の真っ黒
 ぎゅぅっと搾って
 布でこして

まさに雀の涙です
そっと飲んでみて
私の 痛み 少し 分 か る?

 でもね作っ ....
種乳母の、
鱈日根野、
斜交いの、
青髭の、
いとし稚児の、
泣きしの、
見えるの、
頸もとの、
掴み手の、
荒くれた、がさがさとした、その感触の、
痛みに叉声荒げたのが伊丹まで聞 ....
愛子は着物を脱ぎ捨てて、潔く乳を出しました
円い
まあるい
柔らかさよりも芯のある
硬さを主張した
愛子の精神がそこには在ったのでした

愛子の眉は太く
角があり
男眉は仕合わせ ....
大寒の深夜
暗い庭で蝉が鳴く
薄い羽根は夜空を映して
灯りがあればきらめくことだろう
放置されたバケツの
冷たい水のうえで
蝉は羽根を広げる
真夜中に部屋の中で一人 
耳を澄ますと聞こえる心の音 

沈黙の中で奏でられるピアノ 
同じテンポ・同じ音階で 
人の心に迫り来る音がある 

写真立ての中に映る懐かしき人々が 
時を ....
そしておなかがすいたのでビルの隙間を水平にいく鳥たちをながめていると

泥水を手のひらですくってのんでる子供の映像がコマーシャルで流れて

記憶という文字があちこちで文字化けし

円山町の ....
 
箱庭の蓋が
ぴったり閉まらない

出会った頃は
普通の箱と蓋だったのに
一緒に暮らしてると
角が立ってしまうこともあるから
そのせいかもしれないわねと
妻はまるで
人ごとのよう ....
看板のでっかい豚こっからも見えてつい笑ったよここだよここだよ

ばかでかい笑った豚の看板が見えたらそこですブッチャータケウチ

タケウチの店内放送曲豚のリアル鳴き声から始まるブヒ

語 ....
ケータイ電話をぎゅっと握って

世界中のお金の流れのことについて考えてうつむいてばかりいる

自分が毛穴から出した空気について考えたりしないのはアホだからなのか

鳥がどうろをよこぎってフ ....
 
ふれると
消えてしまうものばかり
見てきました

ふれる
ということは
案外
傷つけることかもしれないと
知ってしまってから

ただ
見ていることしか
できなくなっていま ....
ぬらりひょん


つかみどころなんてあってたまるか
若い頃の苦労はすぐに質入れしたし
長い物は巻かれるふりして帯にした
真っ正面から当たるなんてドジは踏まない
折れない柳は風を知り尽 ....
雑踏ならば天使みたいな昼間のキミのキス
は磁石みたいでこわい
最悪感でひろがるのに
何度もやめたくなくてくりかえす

後ろの座席で友達がねてるのに
寝てないフリをしている
たぶん
たぶ ....
俺のドラゴンボールが火を噴くぜと
若い男は股間を指差して叫ぶ
彼はセーラームーンを求めていたのかもしれない
三日月ではなく満月の戦士

いつかはクレヨンのような子どもを産んでほしい
短くな ....
階段を振り返ると
目が合った
幼い頃からの呪いを秘めた寂しそうな瞳
だからその娘と友達になったんだ
快活さの嘘と
淡白を装う情熱で
それでも最後には彼女の選んだ通りになるよ
その娘のにだ ....
薄暗い街灯を避けるように
Davidが
深夜の公園で立っている
ように見える
満面の笑みを浮かべて
いや
満面の笑みを浮かべている
ように見えて



 Davidは ....
空を溶かしたような

この海が

わたしの心の奥の奥を

綺麗に洗ってくれた気がしました

空と海が重なる此処なら

泣いても

全て飲み込んでくれそうで

心の雨もどしゃ降りに

降らせてみれば

 ....
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