ジュースが飲みたい。
そう言って男の子は歩いていきます。

ジュースがいよいよ飲みたい。
そう言って男の子は少し汗ばむ五月晴れの中を歩いていきます。

ジュースが飲み干したい。
そう言っ ....
5人目のマリオは
川に落ちて死にました
4月の暖かい日曜日でした
私は庭の片隅に小さな穴を掘り
真っ白いノートに「やりなおし」と書いて
ビリビリ破って埋めました
あれから毎日、
 ....
もう
どこにも帰れない

そんな気がした夕暮れは
どんなことばも
風にした



 ながれる雲の
 行き先はしらない

 突きとめずにおくことが
 しあわせだとは
 ....
この太陽は 若く 
光が とっても 透明で
退廃や 停滞を 知らない

月と太陽が 見かけ上
同じ大きさに 見える 
神秘を 理解して

たおやかな 青空を 仰ぎ見る

光を 両の ....
階段の近くで生まれました
階段で話をして
それから歌い
お互いの名前を呼び合い
Tシャツ、セーター、靴下、下着の類
何度も着替えをしました
時々触れて
時々離れて
おしなべてそのどちら ....
ねぇ、あなた
もしも生まれ変わるなら

春先の冷たい雨にも負けず
夏のカンカン日照りにも負けず
秋の変わり身の早い葉っぱにもめげず
冬枯れの寒さにも負けない
一本の
名も知らない気 ....
青い空は私の目の前にあり
私と其れをさえぎる者はこの世界にないというのに
私はその中へと埋まることはできない

希望を抱いては砕かれ
夢を見ては叶わぬと知らされ
現実は私にとってとても悲し ....
庭の木にニンジンがなっていました
友だちは一本もぐと
器用にカッターを操って
舟の形にくり抜きました
池には用水路で捕まえてきた
小さな黒い棒状の魚が群れて泳いでいました
浮くことなくニン ....
今さらながら驚いてしまうのだけど
あなたはまだ生きているのだった
毎日とんでもない数の人が死んでゆくというのに
あなたより年若いバカが自殺するというのに
あなたが死んだという連絡はまだ入らない ....
交差点で迷子になっていたラマを
保護した警官の官舎には
ひまわりに似た花が
誰かのために一年中咲いている
庭の木々は良く育ち
晴れた日はアスファルトの道路にも
木漏れ日を落とした
通学路 ....
見ることで広がる景色

古びて黄色がかったキャンパスに
薄い紅を敷き
遠くで光るピンポン玉
遠くに広がる影達


聞くことで広がる景色

水たまりに落ちる雫の一滴
木々たちの話声 ....
本当のことはカチッと停止している、これが本当だとすぐに分かる。

本当っぽくても本当でないことは、たいてい良い条件が揃っている。しかし時計の長い針のように少しずつ輪郭がズレていく。
ズレに対 ....
うまく言葉がでてこなくて
一生懸命探すのだけど
やっぱりしっくりこなくて

あなたに伝えたいという思いだけが
あなたに届いて
何を届けたいかが伝わらない

きっともうそれは
言葉で表 ....
家出をしようと思った
理由なんて適当だ
ただやってみたかったんだ

とりあえず思い切り外へ飛び出した
母さんが追いかけてきて
財布だけ取り上げられた

仕方がないからひたすら歩く
と ....
 
耕す
土の中にも幾千もの命
ちぎれても生き抜くものもあれば
七年ののちの七夜の花で
ついのなりわいをとげるものもあり
それを耕す
おかに生きるものよりも
海に生きるものが多いとか
 ....
臆病者だけが
乾いている
磁石のにおいの
ひどい穴ぐら
窓の外では
アスファルトが
黒曜石に濡らされている

  仕切の向こうの笑い声が
  うるさくてちょうどいい
  そんな時刻 ....
「一人前」という人が
どんな人なのか
今でもわからないけれど
多分自分はそうではないだろう
世の中からすれば
自分はきっと
立派には生きていないだろう
お金になるようなことに
とても不 ....
つまんない
なんかもう
笑えない
一年中
どうすればいいかわかんない
明確な明日
その先の輝かしい未来
そんなもんフィクション
どうすればいいのかって
一年中
つまんない
ほんと ....
アベニューにみどりのかげが溢れだし
  タンポポも路肩で微笑みはじめた
            というのに
 精の分身に水晶の輝きが見られない
    神の化身に清流のせせらぎも
      ....
 夕べの机

つまらぬ世辞をいい
つまらぬジョークを飛ばし
人は生きてゆく
つまらぬほど人は笑い
つまらぬほど満足する

今日も日が暮れる
今宵も妻帰るを待つ
鰈を二匹 ....
本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向い ....
深夜の病棟の廊下を
患者を乗せたベッドが幾つも
音もなくしずかに漂流していく
あれらはみな
モルヒネを投与された患者なのだそうだ
おっこちたりしないように
きちんと縛り ....
夕べ目を開けたら
水溜まりが出来ていて
手で掬って
口に含んでみたけど
酸っぱくはなかった
 
広がる波紋は
限り無く優しい
広がる雲は
限り無く冷たい
 
 
今日は月が
 ....
途切れがちの遠い波音に
あるいは
いつかの風景の肌ざわりに
私は
何を求めていたのか

カンバスは
筆先の触れた瞬間から
額縁にきちきちと収まってしまう
握り込んだ青い爪が
手のひ ....
規則的にしずかに眠らないモーターが
半音階だけその声をあげて
いつの日か再び息づきはじめる時
スキャナーは熊のように鼻をひくつかせ
カウンターは目盛りをゆるやかに揺らし
サーモスタットが ....
豚はどうなるんだ、と怒号が飛んだ連休前の特別会議


ファックスのそばに置かれた空き缶は明日誰かが捨てるのだろう


二度目の稟議書が読まれることなく机の上に放置されてる


唾つけ ....
言葉には翼があるのです
人の心の中を翔け抜けてゆく
翼をもっているのです
言葉によって
その飛び方もまちまちで
小鳥のように
翼をせわしく羽ばたかせるもの
大きな鳥のように
空高く翼を ....
愛する者を守るため
愛さない者を傷つける

思い入れのある愛にのめり込むため
初対面の愛にはそっぽを向く

愛なんて知ったことかと眼を背けると
背後にも広がっている愛に眼を潰される

 ....
変わっていく

そこにあったはずのものがなくて

なかったはずのものがあって

そんな世界に 眩暈を覚える

日に照らされた静かな森

街の外れにぽつんと一軒だけあった喫茶店

 ....
骨のことなら知っています


奥深く平面的で
動物的な空が


罪深く走る夜
立てるよ、と勘違いをする男が
束になって走っていました


((はしたなく
    ((はしたな ....
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