そういえば僕は
綺麗な半円を描く虹を見たことが
ない
娘の絵本に描かれた
空に架かる橋なんて
どこにあるのだろう
あるいは
幼かった頃に
(例えば両親の故郷で)
見たこと ....
夕暮れ
赤い窓の外
見つめているわ
ほんとは待っているの
好きなの
とても
置いて来たのはわたしだわ
わかっているけど
ほんとは
もう忘れたかな
色が消えて行くね
日は沈 ....
ノートに書いた文字が
はしから消えてゆくのと
あなたは不思議そうに
ペンを見つめていました
言葉がかわいそうだから
もうこれ以上は言わないのと
あなたはすっかり黙って
消えた文字を追 ....
私には
雨の日にしか現れない庭がある
窓を開ければ
雨音がこちらまで反響する
そこにあるすべて
落ちている小石、葉の連なり
紫陽花の花のひとつひとつ
存在という音が聞こえる
天から ....
雨樋の裂け目から
私だけに降る雨がある
長方形の庭の隅
縁側から三歩進むと
雫の群れとの遊び場
傘に隠れてよく泣いた
いつも悲しいときは雨で
そのおかげで気が晴れた
傘を回して雫を ....
#response
地水火風って言うけどやっぱりむかしのひとって馬鹿なんじゃないかと思うだって火だけ仲間はずれ
つめたい地面
あたたかい水
つめたい風
あたた ....
きれぎれに
夕暮れに
夜夜に、きみは髪の毛を編んで
いる、指先で
ふれて
いる、暗闇に、きみは
きれぎれに
くちづけている、刻々と
空になるまで
静けさを測る術を探している。冷たさには限界があるのだけど、
静けさを測る術を探している。住宅街の、小さな公園の、真夜中、ブランコをこいで、こいで、鉄の鎖を軋ませて、泣いてしまいそうだ、どこかの家 ....
雨が歌ならば
それはどんな傘でしょう
歌のような気がするだけで
それはふるえる
息継ぎの音
近すぎた鼓動の足音
声を聞いた
傘の下で
たしかなこと
待ち合わせた雨の庭 ....
教室の窓から
くもりぞら見上げて
君はつぶやいた
「雨のにおいがする」
君の予言を受けて
ほどなく雨は降り始めた
放課後
よくわかったね、と言いたかった君の
姿はもう、教室になく
....
雨が抑えている
気持ちにふたをして
重くのしかかるのは
度の強すぎる眼鏡のよう
咳こんだところで
深く吸ったところで
するのはただ、土のにおい
しみてゆくしみてゆく
こころもぬれて ....
{画像=080627011741.jpg}
思いついたら
机に頭をぶつけてみることだ。
硝子板を敷いているので
本当に
ゴツン ゴツン
と音がする。
就職を前にした
五月の終わり ....
埃にまみれた卒業文集
将来の夢はパイロット
無邪気な瞳が描いた未来は
希望の光で満ち溢れていた
いくつもの挫折を経験し
いくつもの現実を目の当たりにし
妥協して生きるコツを ....
たった今大きな丘を越えてきた足を
くるぶしまで持ち上げてみせた
割れんばかりの音とともに地面はほんとうに割れてしまった
にょっきり生えるこころもち汗ばんで
スカートのすそをつまんでは離し
つ ....
きみと
きみときみを囲む白い壁と
きみの大層な毛皮がよく見える
首が痛くなるまで星を観測し
今はまだ冬至、これからこうなって
ああなって
こういう風に動いたらあたたかくなるのさ ....
顔のないつるっとした人たちがふいにに笑う声
風に巻き上がるコンビニ袋の不確かさで
枯れていく音があらゆる角度から無数にする
家と家のすきまでまぶたを閉じる
足元のアスファルトがめくれて ....
今、触れた、君の唇は
悲しい味がした (苦くてしょっぱくてすっぱいんだ)
今、触れた、君の唇から
だらりと舌が伸びる (嫌いならほえてよ)
お菓子をください
笑っちゃうようなお菓子
....
きみがいたところ、そこには
いまでは
言葉がある、
あるはずだった言葉に
ついて、話していた
夜をすぎて、きみはどんどん重くなっていった
この夜は
これまでのどの夜よりも
きみ ....
金魚になるのは
おとなになって初めてです
金魚の糞みたいに
いつもお母さんにくっついていたので
彼女は金魚ちゃんと言われていたのです
そんな話をしたら
さっそく金魚ちゃんと呼ばれてしまいま ....
夜の空が皮膚のようにめくれていくのをみている
地平線に
ゆれている骨たちのあかり
ふさふさの影
それぞれのドアの鍵が存在する
接触したいだけの数の
不安と安心が
便器の中の ....
{画像=080513015507.jpg}
鳴いている
鳴いている
あれは赤ん坊ではありません
あれは 初夏を迎えて
どうしようもなくなった
あれは 猫ですよ
家々の窓 ....
金属ブラシで懸命にこすって
庭の水道で洗い流すと
スコップも裁断ばさみも
見ちがえるようにきれいになった
せっかく用意したリュックには
けっきょく
詰めるものがなにも思いつかない
縁 ....
ひとりでに白熱する夜にまたがる
こんなときは
陽は昇らないものだと思い込んでいた
あらゆる許しを請う前に
あらゆる罪を犯したがる
あの人もわたしも
どうしても何故と思わない
夜は夜だ ....
だらしがないのは
知っていた
それを
やすやすとは
止められない理由など
どこにも無いことも
知っていた
首筋に
金属めいた
未熟な匂いを漂わせ
夢中に ....
穴を掘る
沈んでしまえるほど
掘りたいのに
ところで
もう覚えていない
あっちもこっちも忘れたという人が
川岸で待っている
らしい
どうか
思い出さないでね
そうしたら ....
俺はまだまだこんなもんじゃない
お前はまだ俺という人間の中身を開封していない
開けてビックリ玉手箱だぞ
いやお前は浦島太郎よりもビックリするだろう
お前はきっとガキの頃ビックリマンチョコを買っ ....
{引用=刻む秒針の 大時計の音が気になるので
夜中の階段を昇るのだ
光る猫や人形の目を避けるように
しずかに しずかに 足音たてず
針はとまる
真夜中に僕の亡霊は 音のないダ ....
空は青くなかった
よもぎをもいでおばあちゃんにあげると
緑色の団子をつくってくれた
おいしかった
風の音が邪魔をしていた
小野くんはズル剥けだった
佐川急便のふんどしを触る ....
神様を探しにいきませんか
願いごとはたったひとつ
この恋をかなえてくださいと
風のにおいが好きで
水のおんどが好きで
土にふわりからだをうずめ
空には目を細めて頬を染めて
青いこ ....
死んだわたしの
腐りかけた体に
たくさんの赤ちゃんが
やってくる
死んでぶよぶよに
腐りかけた体を
舐めて
舐めて
穴をあけて
ちゅうちゅう
ちゅうちゅうと
吸ってくれる赤ち ....
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