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酔い覚めの秋の夜道で、編集者のおじさんに
「義父のケアとダウン症児の息子を育み
 嫁さんの負担を減らす為仕事を辞めます」
と言うや否や「偉い!」と握る手の…暖かみ  
幼稚園の頃の先生の御主人の告別式で
献花の百合をそっと置き、一礼した後
頭を上げる――(剛君、ありがとう)
眼鏡越しに充血した瞳は、無音で叫ぶ  
昔の職場のボランティアのおじさんと初めて
焼き鳥屋で飲み、定年退職の日の花道を語り
僕も「来月退職します」と、打ち明けた
手渡された絵手紙の{ルビ松明=たいまつ}は…滲んで燃える  


 ....
おとといは仄かに薫ったキンモクセイ
昨夜の雨で濡れた路面に、花びらの星は散らばり
しゃがんだ僕は呟いた
――今日という日の、星を探そう  




  
二ヶ月前に保育園で講演すると
個性の強い息子に深く悩むママの揺れる瞳が
僕の心象に灼きついた――今日は運動会
手を繋ぎ走る母子の背中に、エールを贈る  




  
職場のデイサービスに来るお婆ちゃんは
僕の駄洒落にいつも笑ってくれる
入所施設が決まり、最終利用日に家まで送る
立ち去る僕に「またね」と語った、遠いまなざし  




 
今日
私は知った。
私は私であり
私ではない。

明け方の
山の彼方にゆらめき昇る
あの太陽により

産声をあげた日から
棺に入る日迄
我が心臓は、脈を打つ  




 ....
遠い山々の緑がくっきり浮かぶ
夜明け前
烏等は唄を交わし始める。

旅の宿の眼下に広がる風景
明るみゆく教会の隣に
洋風の家があり
朱色の屋根の下に
昔――亀井勝一郎という
文士がい ....
林の中を歩いていたら
3ヶ所を蚊に、刺され
むず痒さを耐えながら
ぎこちなくも、歩いた。

(もう会うこともなかろう、蚊の腹は
 僕が痒い分、充たされたのか?)

思い巡らせ歩いていた ....
「中野ぉ~中野ぉ~でございます」 
ぷしゅー…っ ドアが開いたホームには
なぜかお巡りさんが、目を配らせている。
今日は伊勢のサミット最終日 オバマさ
んは広島原爆ドームにて黙祷する――。
 ....
路面に、跳ねた
鳥の糞すら
書家の一筆の如き、あーとだ

――この世界は
  詩に充ちている
聖者などに、なれない僕は
凸凹だらけの人間です。

凸凹だらけの僕が、あの日
凸凹だらけの君と、出逢い
凸凹だらけの息子がおぎゃあっと生まれ
歩み始めた、日々の凸凹道。

青春の日、僕 ....
天にはひとつの
(視えない手)があり
私は、全ての恐れ・震え・野心を
不思議な手の上に、置く。

この胸に乱れた炎は
いつしか――闇に溶け去り
静かな青い火となる。

そうして私は、 ....
自分の中に、経験が{ルビ溜=たま}ってくると
いよいよあなたと私に、別々の顔が現れる。

背が高いとか、低いとか
体が太いとか、細いとか
頭が良いとか、悪いとか

線を引くという行為の、 ....
今迄の僕は
ゴミ箱行きの恋文を
山ほど書いた。
けれども全てが徒労だと
一体誰に言い切れようか?

どうせなら
純粋花火の一粒を
無心に念じ…封じ込め
世界にひとつの手紙を書こう。
 ....
浅草のそば屋の座敷で、酒を飲む。

年の瀬の店内は無数の会話で、飽和して
向かいの席に数分前、若いふたりが坐った。
隣の机で、三人家族は静かに語らい
幼い息子はパパの{ルビ腿=もも}に、じゃ ....
毎朝みる、幾人かの顔が
通り過ぎる朝の道の向こうから
杖をつき、背を丸め…近づいてくる
95歳のトメさんと、目が合う。

――あら、今週も会ったわねぇ

毎週火曜は、通院らしい。
毎週 ....
あの日、出逢いの風は吹き
互いの杯を交わしてから
ひとり…ふたり…銀河は渦巻いて
空白の{ルビ頁=ページ}に――僕等の明日はあらわれる
万国旗は青い風にはたはた…揺れ
園児等が駆け回り、賑わう
秋の運動会。

染色体が人より一本多く
まだ歩かない周と、並んで坐る
パパの胸中を{ルビ過=よ}ぎる、問い。

――僕等はあわ ....
修善寺の源泉で
足湯に浸した
両足は
鬼の如く真っ赤に染め上がり
旅人は心に決める。

――この足で、日々を切り裂こう

娑婆の世を生きるには
時に…鬼と化さねばならぬ
が、赤い仮 ....
修善寺の蕎麦屋の座敷にて
{ルビ熱燗=あつかん}を啜り

天せいろを食した後の
油が浮いた器のつゆに
喰い千切られた、桜海老の顔

白い光の小さく宿る
黒い目玉

{ルビ茹=ゆ}で ....
CDのジャケットから取り出した
ブックレットのモノクロ写真は
だだっ広い空の下を
何処までも伸びゆくハイウェイ

目的地へとひた走る、旅の車
ハンドルを握る、目線の先
一瞬
黄色い蝶が ....
北風の只中を防寒靴で歩いた、僕は
あの日の旅路を手にしたペンで、筆記する

   *

――記憶に蘇る、海の匂い
遠くに見える、断崖に近づくほど
潮の香りを鼻腔に…吸いこみ

断崖の ....
二十年前、富山に嫁いだ姉の結婚披露宴で
お約束通り、親父はウェディングドレスの
裾を踏んだ。十代だった僕は、ポケットに
手を突っこんで「贈る言葉」を歌った。

最後の挨拶で新郎のお兄さんは、 ....
真夏の{ルビ陽炎=かげろう}揺れる
アスファルトの、先に
琥珀に輝く円い岩が
ひとつ、置かれている。

額の汗を拭って、歩く
旅人の姿は段々…近づき
数歩前で、立ち止まる。  ....
「死」というものは、笑えぬもの。

五年前の冬
八十九年の生涯を、閉じた
婆ちゃんについては、笑えるもの。

在りし日の婆ちゃんの
面影が今も座る食卓の席に
遺影を置き
孫の僕は冗談 ....
人々の行き交う、東京駅の構内。

黒く髪を染めた
赤い靴の、ちっこいお婆ちゃんが
赤い傘を、杖にしながら
白い化粧の頬を、ゆるませ
何ごとかを唱和しながら
ゆるり…ゆるり…進んで行く
 ....
え~、今回ゲストでお呼びした町田さんが
中也さんのことを書いて、朗読して
僕等も5人で、中也さんの詩を、朗読して
会場のみなさんも!聞いて下さり
どうやらこの会場に訪れた
空気中に漂う中也さ ....
目線の先に、踏み台は置かれ
ゆっくりと腰を沈めて
砂に指先を、ふれる。

――僕は、何処まで翔べるだろう?

自らの心音に、少し震えながら
あの笛の鳴り響く時を、待つ。

前方に、顔 ....
僕は、今から四十年前
{ルビ勾玉=まがたま}のような白い種として
母の胎に宿りました。

それがこうしていつのまにやら
大人になって、独歩して
思考しては、言葉を発し
地上の日々を営んで ....
あおばさんの服部 剛さんおすすめリスト(541)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
十月二十七日(木)_夜- 服部 剛自由詩216-12-8
十月二十七日(木)_午前- 服部 剛自由詩216-12-8
十月二十三日(日)_夜- 服部 剛自由詩216-12-8
十月四日(火)朝- 服部 剛自由詩216-10-9
十月一日(土)午前- 服部 剛自由詩116-10-9
九月三十日(金)夕- 服部 剛自由詩116-10-9
いのちの音- 服部 剛自由詩216-8-26
函館山の麓にて- 服部 剛自由詩316-8-26
ある日の献血- 服部 剛自由詩416-6-17
中野~高円寺探訪記- 服部 剛自由詩216-5-28
路面の文字- 服部 剛自由詩216-5-28
妻への詫状- 服部 剛自由詩316-4-20
青い火- 服部 剛自由詩216-4-11
麺麭の顔___- 服部 剛自由詩316-1-15
恋文について- 服部 剛自由詩516-1-15
年の瀬のそば屋にて___- 服部 剛自由詩715-12-29
丸い背中___- 服部 剛自由詩215-11-22
空白の頁- 服部 剛自由詩215-11-22
秋の運動会- 服部 剛自由詩915-11-3
鬼ノ涙___- 服部 剛自由詩615-10-27
海老の目- 服部 剛自由詩315-10-27
旅の車_____- 服部 剛自由詩315-10-5
冬の釣人___- 服部 剛自由詩515-9-8
夏の夜風- 服部 剛自由詩415-8-28
夏の夢- 服部 剛自由詩815-7-16
椛の手- 服部 剛自由詩615-6-21
赤い靴のお婆ちゃん_____- 服部 剛自由詩415-6-8
日本の詩祭・朗読ステージ―町田康氏とのかけあいより―- 服部 剛自由詩415-6-8
笛の音- 服部 剛自由詩315-6-8
夕暮れの丘- 服部 剛自由詩715-5-19

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