{引用=


竹上泉論、頼まれもしないのに、読まれもしないのに}




      西へ           竹上泉(2001年)
           




    ....
酒を飲みながらの絵も
失業生活も削っていた 終わり 鳴く
ぼんやりと捨てたコオロギの鈴虫で 見えない裏窓も
声を聞いていた いるようだ

音楽業界はすり抜け 駄目だろうからと
当たり 畜産 ....
{引用=



一、整合


ふぞろいな
ひとりひとりの
でこぼこを
いちいち罵倒するのは
たいへんな
労力だから


どうせ疲れることなら
お互いのでこぼこを
い ....
僕は 海のそばに住むことにした

十月の浜は ひとけがない
足跡もなくて 夏よりきれい

海の家は ほったらかしで
風鈴がやたら 鳴っている

冷たい風に ゆれる
ガラスの音で 空気 ....
「つよいかぜのうしろでうまれたちいさなあわがいます。
 あのこはけさそらへとのぼっていくゆめをみたそうです。」


 きえていくあわをとおくにみながらのぼってゆくのです


 生 ....
金曜ロードショーや
日曜洋画劇場で
「教育にいい」ような映画を
放映する日は
子どもはコーヒー牛乳を飲んで
映画が終るまで
観てもいいことになっていた
たとえば「ローマの休日」や
 ....
「林檎ってちょっと女に似てるから歯を立てるときぞくっとするね。」

夕暮れに秋刀魚さばいてみるのですふと血が見たくなりましたので

夜遅い夫の帰りを待ちながら深く深く爪を切るわたし

 ....
 
 
お正月
母の実家から見える
山脈の麓にスキー場があった
数キロ続く田の先にある
駅前の街のそのさらに数キロ続く
田の果てに
スキー場が見えていた

とても遠いところなのに
 ....
手にあまる
廃屋の残照
すぼまり 壁のない木の間で
林檎の古木は やせて
皺寄せた彩雲にのばされた からまる腕

実生の木 は、
今 ほろほろと 終わりを迎える
小さな青い果実を せい ....
愛がやるせないときは
夢を見ればいい
夢がやりきれないときは
音楽を聴けばいい
音楽に疲れてしまったら
女の子に
カワイイ女の子に電話してみようか
愛がやるせないときは
 ....
 沼は待っていてくれた。ホテイアオイは相変わらず所狭しと繁殖し、岸際を覆っていたが昨日ほどではなく、私は胸をなでおろした。この分ならば、釣りになるだろう。キャスティングするのに邪魔になる風もない。まだ .... 見失った起点をとりもどすための儀式。なぜそれが必要なのかはわからないけれど。ホームから(赤い)傘を放って、虹を呼ぶ。虹は来る。(生き物のように)。雨は去る。対になろうとする、ことば ....  演台に
 原稿用紙を広げ
 子どもたちは声の限りに叫ぶ


「笑顔の
あふれる町にしませんか」


「あなたの近くに
寂しがっている人や
弱っている人はいませんか」
 ....
ガラスの向こうで雨は
規則的に降り続いていた

ベランダの花を
静かにたたいていたのは
儚さに惹かれた空の
答えのない 問いかけだったのだろう

いくつも落ちてくる雨粒

空から僕 ....
私たちは
眩暈がするような速度で
転がり続けなければならない

変化すること
それが何よりも重要で
変わらなければ私たちは衰退する

そんな強迫観念に
いつの間に囚われてしまったのか ....
(終わる世界、)


(青い鳥が空へと流れた、)


ようすいに集まった子供は暗くなるまえに家に帰る
こころのかたち、人のかたち、
雪を知らないアマリリスを神さまと見間違えたと ....
昔から
隅に居るような子供だったので
かくれんぼでは
何時も鬼をやらされた
両腕で眼を覆って
だけど
じゅう数えるまでは
どうしても待てない

いち、に、もういいかい

すぐ振り返ってしまう
隠れ ....
揺れる花は荒野に一輪だけ

その上で流れた一線の流れ星

空間は穏やかに過ごしていた

まだまだ口にだしていない言葉は

たくさんあるけれど

それもこの花が枯れる時には言えるだろ ....
何も無い畳の部屋、僕は全裸で寝転んでいた。
赤ちゃんみたいに手足をぎゅっと身体に寄せて、じっと天井を眺めていた。
四日間飲まず喰わずの僕の頭の中にはオペラが大音量で流れていた。

部屋のふすま ....

職場で必ず着用するエプロンには
大きなポッケットが付いています
わたしはその中に
いろいろなものを放り込むのが癖です
ポッケットが膨らんでいないと
落ち着かないのです
膨らんでいて少 ....
唇に触れ
歯を撫で
咽を滑り
丁寧に体の線を通る水の清らかさより哀しく
わたしの隙間を見せつける夜の光に
世界中そこかしこ全てへと
わたしの居場所を散りばめたく(囁き教えたく)なる衝動ひと ....
ここに一脚の椅子があって

それは懐かしいにおいのする木製の小さな椅子
小学校の教室にあるような椅子
揺らすとかたかた音がした

そんな椅子にあなたは腰かけている
手には一冊の詩集
マ ....
君はみぞおちのなかに
あたたかな雨を隠しているのでしょう?

いつになれば海の向こうに渦巻くひかりを
私は集めることができるのでしょうね。

緑色だとか
青色だとか
太陽に照らされると ....
力のかぎり追いかけるのは、
自分の力をしんじているかのように
止まることをも知らず
一点に集中した想いのはてなのです

おしもどす秋の風に
それが、遠くにあることなど知らずに
駆け抜ける ....
たったさっき、帰り道で「軍隊って別に戦争をやりたいわけではない」ということに気づきました。
『戦争論』では戦争は政治のためにすると書かれているし、『孫子』にも百回勝つものは必ず滅び、一勝する人が天下 ....
すれちがう人の香水の匂いが

鼻にまだ残っている

僕が貴方を思っていることを

手渡しで渡してもいいですか?

今はまだ分からないけれど

いつかは答えが見つかると信じているよ
 ....
ひとりのおおかしぎが
海を渡ってきたのを
見ましたか?

それはどんなふうだったでしょうか
せなかを丸めて
いつものように
口もきかずに
それでいてたくさんのことを
瞳で語り
そん ....
誰も待ってくれないから
みんな子供であることを
あきらめるしかなかった
そうして前を見て進み汗をかいては
花の色でさえも忘れていった
たがいの溝を埋めあっても
ひとりずつは変らず小さく
 ....
それ以後、鉄塔に上ることは不可能
となった。首を吊ったコンビニ店長は、一晩中、
風に揺れていた。その姿を ビニールが
引っかかっているだけと、近所の人はやり過ごした。

壁を塗り直すだけでは ....
波紋がひろがっていた

天上からも貫ききれず
水底からも貫ききれず
貫き通せなかった
幾多の
もろもろが
波紋となって
分解され
吸収され
なにごともなかったかの様に
戻されてい ....
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