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くちびるから悲しみのエコーもう二度とさよならなんて言いたくないのに
金色の雨になって会いに来て閉じ込められた私はダナエ
ひとしずく君の涙がこぼれたら小瓶に入れて取って置きたい
聴こえ ....
さよなら さよなら
季節は足早に過ぎ去って行く
あの頃の思い出も見上げた空の色も
今では遙か黄昏の彼方に
黄昏よ
いつの日もおまえはそばにいてくれたね
どんな時もその光に包まれれば
....
風が変わったら彼に伝えて
セイレーンの歌を聴かせてあげるわ
一度聴いただけで夢中になるのよ
海が青く輝いたならそれが合図
やさしくしないであの頃の私は
恋に夢中になりすぎて何も見えなかっ ....
黄昏の街を駆けて行く影法師
眩暈にも似た既視感に
いつまでも立ち竦んでいた
きっと夜はまだ遠い
*
退屈な雨の午後
迷宮のような街を眺めていた
陰鬱な気持ちを弄ぶように
霧雨が ....
鮮やかな緑の波を揺るがして
強い風が吹き抜けて行く
その風にあおられるように
忘れていた何かが目覚めようとしている
あなたと出会ったのはこんな緑の季節でした
お互いに愛し合いながら傷 ....
光はあふれる
白亜の{ルビ建物=ビルディング}の上に
海鳥の白い翼に
青くうねる海原に
光はあふれる
光は波打つ
どこまでも続く青い穂波に
涼やかに流れる川面に
青い空と風の中に
....
友達と遊んで別れてひとりきり
空はとっぷりと日が暮れて
すっかり遅くなった帰り道
お家に帰りたくないよう
きっとお{ルビ継母=かあ}さんに叱られる
きっとお{ルビ継母=かあ}さんは怒って ....
{引用=走って
走って
狼に追いつかれないように
走って
走って
森の奥へ奥へと
走って
走って
走って!}
「森の奥へは決して行っちゃいけないよ
おまえのような若い ....
道を歩いていたら
言葉が落ちていたので
拾いながら歩く
拾った言葉を並べてみたら
詩のようなものができたので
額縁に入れて飾っておく
紅葉が一枚
はらりと落ちて
そこからまた言 ....
私がふたごだったとき
ずっと森で暮らしてた
ふたりおそろいの服を着て
毎晩同じベッドで夢を貪りあった
ふたり一緒にいること
それが当たり前の世界だった
私がふたごだったとき
世界はひ ....
夏休み前の教室で
ぼんやり先生の授業を聞いていた
教室の窓の外では
アブラゼミがうるさいくらいに鳴いていて
授業に集中できない僕の頭の中を
これでもかというほど占領していた
ジージ ....
薔薇をあなたに
五月の薔薇をあなたにあげたくて
私はひとり庭をさまよっている
ハーブの花畑を通って
クレマチスの花園へ
キングサリのアーチをくぐったら
そこはもう薔薇迷宮
色とりどり ....
夕暮れ
橙
さびしんぼう
だあれもいない公園で
影踏み
かけっこ
かくれんぼう
風といっしょに遊ぼうよ
いつも泣いてる
あの子とふたり
遊びにおいで
またおいで
....
風の中で震えていた瞳
あの日突然奪ったくちびるを
二度と忘れはしない
美しい少女よ
一生分の愛を君に捧げよう
自分勝手な愛で
君を愛し続けることを許して欲しい
例え永遠にこの ....
あなたがそばにいるだけで
まわりが海に変わる
ほんの少しだけ夜のような
ほんの少しだけミステリアスな海
このまま小さな魚になって
あなたのまわりを漂っていたい
あなたは私の梢を揺ら ....
世界中にあふれている
たくさんの言葉たち
きれいな言葉
やさしい言葉
愛にあふれた言葉
どれもみんな素敵だけれど
でもちがうのよ
私が探しているのは
胸にかちりとはまる
....
林の向こうに星が落ちた
遊びつかれたカラスが
西の方へ飛んで行った
あたりはワイン色になって
夕闇に沈んだ
遠くで一匹犬が鳴いた
町に人影がなくなった
青白い三日月がひとつ
水銀灯の上 ....
リューヌ 思い出して私との約束
おまえはどこに行ってしまったの
ある日突然いなくなった私の猫
リューヌ 何度もおまえの名を呼ぶけれど
私に答える声はもうないの
ただおまえに似た夜がそこに ....
静かな木漏れ日の向こうに
やさしい香りに包まれた人がたたずむ
朽ちた古城を背景にその人はいた
それは昔々の神話のような
何と感傷的な横顔
アポロンかエンディミオンを思わせる
木漏れ日は宝石 ....
黄昏色の空の果て
ひとりっきりの帰り道
誰を待っていたのだろう
誰を探していたのだろう
電信柱の長い影
淋しいようと風の吹く
黄昏色の空の果て
家路をいそぐ鳥の群れ
どこへ行くとい ....
むっとするような草の匂いをかぎながら
僕は雨を待っているんだ
こんなふうに湿った空気の朝は
何だか楽しくてしょうがない
もういいかい
まあだだよ
ほら向こうで呼んでる声がする
....
緑色の雨が降るとき
どこかで誰かが泣いている
そんな気がしてならないのは
あの日君と出会ってから
やさしい心の奥で
僕は君を求めている
このままやるせないままで
雨に打たれるのもいい ....
シギ シギ
森へ行こうよ
春の夜明けに
紅い三日月が出たよ
たくさんのアゲハ蝶が
群れをなして舞い踊る
あの草原へ行こうよ
森を抜けたらもうそこだ
あの貴婦人に会いに行くよ
....
虹を見ていた
空に放物線を描く光の帯を
虹を見ていた
あの日君と眺めた七色の輝きを
虹を見ていた
ただ黙って見ていた
思い出は今も胸に消えない懐かしい橋をかける
あの日僕らは雨上がり ....
蒼い影を映して続く冬の森には
透き通った何かが隠れている
凛と張りつめた空気の中で
何かが動き始めている
それは凍りついた木々の向こうに
広がるはるかな世界
白いやさしい{ルビ時間=とき} ....
赤い葉っぱ 黄色い葉っぱ
これは茶色
秋はいろんな色の葉っぱがあって
とっても楽しいね
枯葉を踏む音だって
サクサク ガサガサ
いろんな音がしておもしろい
歩くのがおそかったかいちゃ ....
「もしもしかいちゃんいますか?」
かいちゃんは今日も
おもちゃの受話器を耳に押し当て
どこかへ電話をする
「もしもし もしもし」
まだ言葉にならない言葉で
一生懸命お話をす ....
露草色の空を
のどかな雲が流れて行く
いつか見た雲が白い蝶をかたどって
私の頭の上を
風に吹かれて飛んで行く
どこへ行くのと手を振ると
今度は白い子馬となって
東の空へ駆けて行った
....
蒼穹はさらに深く
眩い雲はほのかに流れ行く
若木の緑をそよがす風は
初夏の薫りを匂わせながら
見晴るかす彼方へ消えて行く
雲のまにまにのぞく{ルビ天色=あまいろ}に
いつか見た白い炎が燃え ....
わたしのなかのうたが
青い蝶になって
空の彼方へ飛んで行った
鳴り止まないオルゴール
うたのないまま時は過ぎて
今頃おまえは
どこを飛んでいるのだろう
どこでうたを歌っているの
....
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