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わたしの知っているかもしかは緑色だ。松脂がびっしりと体について光っている。つやつやした毛並み、つぶらな瞳、五メートルほど前に立っていたかもしかは「誰?」と小首をかしげてみせた。
一歩前に出れば向 ....
窓は小さなほうがいい
のかもしれない
見えすぎて困っちゃう
見られすぎて困っちゃう
市販のカーテンじゃ合わせにくいほど
大きな窓なんか
結局あとで困るだけ
窓の無い部屋は
時々すご ....
幼いころ
せっかく瘡蓋になると
はがして食べちゃう癖があって
これがどうにもこうにもやめられない
しちゃいけない、なんてことは
五歳でもわかるんだけど
知らず知らずのうちにやってしまう
....
じぶん
が揺らぐ
動と静の密林で
わたしは
音と
光と
緑と
土と
一緒になる
「そういう気がする」
のではなくて
本当に一緒になる
わたしはバラバラで
形はなくって
そん ....
わたしね
びっくりして
バスブーツのまま外に出ちゃったの
そう
カビとりしてたから
そうしたら外は
一面、お風呂
だから
バスブーツでおでかけ
バスブーツで
遠くまでおでかけ
....
さびれた屋上の遊園地では
もう二度と動かないパンダの乗り物が
片隅に追いやられていた
大きな看板が目の前に見える
さっきまで雨が降っていた
空がどんどん黒くなっていく
インクを塗り ....
鬱陶しいものが
わたしを柔らかく包んで
膜を作っていく
ほんとうは嫌だけど
鬱陶しい膜を
破ってしまって
鬱陶しい液体に
塗れるのも嫌だから
鬱陶しい膜
を我慢する
たまに
ぷち ....
京の都、土御門大路を、八つか九つかくらいの男の子が辺りを見回しながら歩いておりました。
そのうち男の子は、市の雑踏へと入り込みました。
烏帽子に水干姿の男やら、市女笠に垂布の若い女、上総か常 ....
信号待ち
目の前で
ビルが壊されていく
ここは日本だから
ゆっくり
ゆっくり
壊されていく
こんなこと
とっくにわかってた
このビルが建った頃から
滅びていくのを
待って ....
わたしの
これからはじまる
修羅場へようこそ
たくさんの首と
臓物が浮かんでる
沈んでる
今はまだ体内に
そんな修羅場へようこそ
何も欲しくない
だから奪わないで
すべて閉じている ....
「お花畑が見たいの」
と彼女がいったので
ぼくは一生懸命にお花畑を探した
やっと見つけたお花畑に
彼女を連れていくと
「こんなのはお花畑じゃない」
と彼女はいった
前にもこんなこ ....
車がたくさん通る
高速道路のトンネルに
住んでみたい
非常電話の扉の中
さらにその奥
誰にも開けられない
硬い硬いコンクリートの内側
誰にも見つからないように
こっそりと部屋を作っ ....
安全地帯で
おままごと
バラアーチの真下
鬱陶しいほどの香り
白い食器はママのお古
お庭の隅
小さな噴水から
流れる水の音
どこか遠くで
電車が走ってる
蔦の絡まる塀の内側
中空 ....
ある日の夕方
わたしはひとりになりました
花に水をやっていたら
いつのまにか
みんないなくなっていました
わたしは
声を出してみました
その声は音になりました
どこかで鳥が鳴きました
....
ダム
ダムダム
ダムの底
いろんなものが
死んでいました
ダム
ダムダム
ダムの底
おうちや
車や
おじいさん
ダムの底は
いつも真っ暗
何も見えない
聞こ ....
疲れてしまって
なんだかうんざりして
胸に空気が溜まって
ふうっと吐き出した
楽し過ぎても疲れるし
つまらなくても疲れるし
何も無くても疲れて
下り坂だけど
足がくたびれた
みたい
....
ずっと一緒にいられないことは
わかっていたから
いちどだけ一緒にいようと思った
あなたは青臭くて
わたしはそんなあなたが好きで
わたしの知らないところから来て
知らないところへ行く ....
花粉はつらいけど
それはそれで
明るいから
お出かけする
わたしの身体
今知らない場所にいる
知らない店がある
知らない昼間に
浮かんで行くよ
自由って
限定された息抜き
で ....
あなたとはもう何回も
っていう気がするから
しない
例えば三年前
あなた会社の後輩だったわ
あんまり可愛かったからつい
五年前のときは
友達の結婚式の二次会で
あなた新郎の友達だったで ....
施設に来た子供たちが、「鳥を捕るのがすごく上手なお兄ちゃんがいる」と目の前で騒ぐので、俺はなんとなくそっちの方を見た。
すると、見覚えのある男が雀を次々と捕まえているのが目に入った。何をどうして ....
あの頃
わたしたちは溶けていたね
瑪瑙みたいな空を見ながら
空気はあんなに乾いていたのにね
わたし
まだ忘れていないわ
檻の中に
一匹ずつ
入っていて
「お家に連れて帰ってね。値下げ、半額!」
っていう
カードがついてる
人懐っこいオマエ
大きくなりすぎたね
そういうことってあるんだ
運が良ければいい ....
夕暮れ
赤い窓の外
見つめているわ
ほんとは待っているの
好きなの
とても
置いて来たのはわたしだわ
わかっているけど
ほんとは
もう忘れたかな
色が消えて行くね
日は沈 ....
穴を掘る
沈んでしまえるほど
掘りたいのに
ところで
もう覚えていない
あっちもこっちも忘れたという人が
川岸で待っている
らしい
どうか
思い出さないでね
そうしたら ....
死んだわたしの
腐りかけた体に
たくさんの赤ちゃんが
やってくる
死んでぶよぶよに
腐りかけた体を
舐めて
舐めて
穴をあけて
ちゅうちゅう
ちゅうちゅうと
吸ってくれる赤ち ....
電車を降りたら
小雨が降っていた
セブンイレブンで傘を買った
駅前の商店街を抜けると
道は一気に暗くなる
細い道の両側から漏れる
家々の明かりがメインで
わたしは足早に家路を急ぐ
朝
....
別に何言われたっていいや
って思いながら
平気な顔して
行ってみる
負けず嫌いなんかじゃない
悔しくも
悲しくもない
理由とか必要とか
みんないろいろ言うけれど
考えるからダメなんだ ....
水面に、静かに輪が広がり、女が浮かび上がってきた。
そしてその女は、青緑色の沼の表面に浮かび、まるで肘をつくかのような格好でこちらを見た。
時刻は、薄ぼんやりとした昼間で、のんびりと釣り ....
わかるわけがないと思う
あの頃
みんな
もう何をしてもつまらないって知っていた
この先何も
いいことなんかないって知っていた
生き残るため
そう、大していいこともないのに
ただ生き残る ....
直径1メートルくらいの
真っ赤な苺があった
もちろん葉も茎もでかい
あらすてきお伽噺みたい
わたし小人になったのかしら
それとも妖精さんかしら
なんて思わなかった
当然
気味が ....
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