小川 葉

 
ふれると
消えてしまうものばかり
見てきました

ふれる
ということは
案外
傷つけることかもしれないと
知ってしまってから

ただ
見ていることしか
できなくなっていました

エレベーターで会った
老女の
今ではめずらしい
皸の手を見て

しもやけですか

とたずねた
あなたの当たり前の
人へのやさしさが
懐かしかった

あなたは
いつも
そんなふうに
わたしを見つけてくれる

あなたは
いつも
そんなふうに
わたしにふれてくれる

言葉よりあたたかい
心と心が
まっすぐ見つめあって

ふれても消えてしまわない
絆があると
信じることができた
 


自由詩Copyright 小川 葉 2009-01-07 23:12:41
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