窓をあけて
夏にばいばいっていうのは、たぶん
さよならを置きっぱなしにした
子どもの僕がいるからだろう
海の見える丘に
錆びてうごかなくなった自転車がねむる
....
きょうそとは
キンモクセイの匂いしている
それだけが湿気のように
こすれあう肌が
お花屋さんの冷蔵室の匂いだ
植物みたいな悲しみに
ふたりはじゃれあい
た ....
寂しさの種をいつ蒔いたのだろうか
知らないうちに芽が出て
大きな葉っぱになってしまった
失敗したなと
悔やんだことはたくさんあったから
その実が心情という畑に
落ち零れたのだろう
....
週末だから酒を飲みにいく。週末でなくても飲みにいくが、週末はことさら大量の酒を
詰め込む。僕らはつまらない仕事に飽き飽きしていた。それを酒で昇華する日々にも、
いつもと変わらない顔ぶれにも。けれど ....
誰にも知られてはならない
耳をそばだてて
この地面の奥深くには
川のように赤い血が流れていて
少女だけがその流れる音を
聞くことができるのです
でも聞き続けていてはいけません
自 ....
手を伸ばせば
やさしく握り返してくれる
壊れそうなときは
そっと寄り添ってくれる
文句も言わずに
あなたはいつもわたしの傍にいる
折れそうな心
抱えているわたしだけど
太陽 ....
台風一過の翌朝の校庭の如く
塵ひとつなく整然としていた
生まれてきた理由は混沌から放たれていた
存在するもの全てが精緻なその回答だった
絶好調だったのは小三のときのような気 ....
指輪から産まれた棘が
傷になる前に
心根から小さな棘を数本抜いた
一つの形が崩れると
棘の姿が真新しい傷に変わるから
小さな秘密を隠すように
指輪を口元に持ってくる
集積された棘から ....
雨や雪やもしくは火山灰
降り積もるものに閉ざされるとき
あおぞらに解き放たれた高層雲が眩しいとき
それら、数え切れない
ゆえに無限に近いものを見上げるとき
からだは静かな楽器になるのです
....
ひからびた雨は ふたたび雲にとらわれるのをおそれている
底のない青い穴 弱りきった栄養はもう 吸いつくされた
顔をふせ 膝をかかえて 冷めた今日にうずくまる
部屋の片隅で
こぼれた風 ....
純で
真っ直ぐな
君を想う
だんだん
うちとけてきたね
お酒が好きなのも
一緒だった
今度飲もう
何時になるかな
君と一緒だと
楽しくて
飲みすぎてしまうかも ....
仕方がないことに疲れてしまうなら
いっそ悪意になってしまおうではないか
それがいちばんいいような気がした
大雨が町の明かりを隠していた
ほかの男に幸せにされているのが
....
あの灯りのなかに
いつかの僕たちがいる
迎えるでもなく
さよならでもなく
あの灯りのなかに
懐かしい日がある
見えないものに
この目を輝かせる僕は
いつかの日々の
星 ....
良い事もあれば
悪い事もある
頑張っても
結果が出ない事もある。
希望を失わずに
笑顔で明日を歩めば
伝わる事もある。
未来を変えてゆく。
愛を信じて
愛に生きて
愛に死ん ....
過去というものは記憶の積み重ねで
時間というベールを幾重にも重ねてゆけば
どんな経験もセピア色に染まり
綺麗なオブジェの出来上がり
過去を溜め込んだ洗面器に
右手を突っ込んでみる
つめ ....
夜中になれば静寂の火が灯る
何もかもが去っていき
あるものが忘れられる
時計の規則正しい針の音が響き
時折救急車のサイレン音が割り込んで
誰かを連れ去っていくのだが
私の背中を刺すものに出 ....
青灰色のひかり
彼女のマンション
まだ5時だ
九月のセミが鳴いている
秋が混じっている
手を繋いでいた
ぼくよりも孤独を決意した
若くて暖かい手だった
....
どうしてママは
「痛」みを「陣」獲ったりしたの
どうしてパパは
「痛」みに「苦」しんでいるの
年長組の坊やの素朴な問いは続く
「どうして・・ねぇ ....
午後の風がきみの髪をなぜる
ああ、とてもいいにおい
ぼくは小さな蜂になって
きみの、ひまわりの笑顔にとびこみたい
甘ったるく歌ったり
背伸びして空をかじったり
きみの気まぐれな野性に
....
猫みたい まどろむきみの横顔は
誇り高いのにやたら無防備
午後の風がきみの香りをはこぶから
ぼくは蜂になる ちいさな蜂に
きみのこと、理解できるっておもわない
だけど知りたい 手 ....
今日はまあなんとか
明日もやりたくはないけど など
贅沢言って日が落ちる
日が落ちてからの仕事だっても
終わったら明日は明るいから
楽しい
ああ ああ
今日はよかったっすか
....
台風の夜を歩く
俺の傘を貸してやる
孤独を決意した高潔なたましいが
大風をうけて傘にひきずられている
おまえは俺を裏切らない
なつかしい体温のそんなかで
俺の傷 ....
空回りする日々
孤独に怯える日々
現実と理想のギャップ
世界に入り込めずに
また殻に閉じこもって
駄目なやつだと自分責めて
悲劇のヒロイン気取って
自分を否定するのは
もうやめ ....
わたしのちいさなベランダに
一鉢のばら
その名は『ローズフォーエバー』
この花の
こころ和ませるちからに
わたしはおどろき よろこんだ
空が何度となく回って
風が落下してくる
円周率の中に取り残されているものは
僅かだ
失敗を恐れているからその一点は
滑りやすい
号令がかかって一斉に回るのだが
僕の回転軸は
歪んで ....
○
△
□
○と□は似ているようで
□と○は同じでない
□と△は似ているようで
△と□は同じでない
共に感じるということと
分かったような気がすることも
似ているよう ....
孤独のナイフを
ふところに隠し
獲物を狙っている
血に飢えた男
信頼関係がない
誰も信じられない
怖くて仕方ない
安心できない。
敵を見つけるのが好きで
味方には目を向けない ....
好きなひとに
ぶしつけな手紙を
送りつけた
喜劇のような悲劇的予感
一線を踏み超えた僕に
僕の女神は微笑んでくれるだろうか
このことで
あのひととの関係が
気まずくなっても
後悔はし ....
マイナスのこころは 似たような レベェルのマイナスの心を
呼ぶのかな
そんな はずはない
マイナスのこころは 似たような レベェルのプラスの心を
呼びたがるはず
あの晴 ....
「昨年の父の日には
おやじと蛍を見に行きました。
丁度、一年後の同じ日に、このように
いなくなった、おやじの偲ぶ会を開いている
なんてことは、夢にも思っていませんでした」
伯父さんと叔母 ....
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