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おとこが夜中にやってくる
そのおとこは生まれたことがないのである
いっしょにゆこう
どこへ
とおくへ
くちびるでかすかに笑っている
いそいそと身を起こして
服を着て出ていこうとすると
 ....
トラムは悪い病気を持っている。唇に薄紅色の肉の塊が垂れ下がり、ちょっと見には馬鹿みたいな花を口にくわえているようだ。だから大首女や酒飲みのガンに笑われるし、うだつが上がらなくていつまでも一人前に見られ .... 雀ほどの大きさの塊が手の中にある。線路に沿って歩くと片側がコンクリートで補強した斜面になり、さらに行くと竹藪の奥に家屋や井戸が打ち捨てられている。その先には登山道に続く道端に白い花の群生。あそこまで行 .... 思い違いをしているのではないか

君は寝床に身を横たえているのではなく
もういつの時代に作られたのかも
さだかではない古い古い風呂桶の中に
身ぐるみ剥がされたままの素裸で
(しかも生温い蒟 ....
木の高いところに骨がかかっていて
鳥が面白くなさそうについばんでいる
手にしたほうきでつついて落とすと
地面に落ちたそれは乾いて白い

夜中に夢から覚めて
台所で水を飲んで寝に戻る
さっ ....
幽霊になった幼なじみが働いているという
屋敷の廊下の先にしらじらと明るい一室があって
布団や卓が散らばる中で待っていると
いつのまにか差し向かいに座っているようだった

しばらく会わなかった ....
わたしは影だった、窓ガラスに映じた偽の青空に
殺された連雀の影だった。
わたしは灰色の羽毛の染みだった――しかもわたしは
反射した空を、生きて飛びつづけた。
また部屋の中からも、二重に映して見 ....
詩誌「雲雀料理」号外に掲載された細川航「ビバーク」について
{引用=
僕のふたつのねがい、それはきみがいまこの瞬間か
らだの奥底から死にたくなること、そしてそのまま
に永遠くらい生きてほしいこ ....
むかし 納屋の整理をした折
古箪笥の引き出しを開けると
中が炊きたての赤飯でいっぱいだったことがある
春の川でとれた蟹の甲羅を剥ぐと
どの蟹にも赤飯がぎっしり詰まっていたこともある
それから ....
眠りが足りなければ不思議なことが起きる
その言葉を証明するかのように
何日も眠れずに机に向かっていると
足裏の感触がどことなくおかしい
じゅうたんのあちこちからもやしが発芽して
生えに生えて ....
米びつから米をすくいあげていて
底になにか引っかかるものがあると思ったら
しなびた腕がいっぽん
計量カップのふちに指を引っかけていた
取り出してごろりと畳に投げ出した それ
黒ずんだ腕はいつ ....
夜中に窓枠がぴしりと鳴る
夢のなかから呼び戻されて
枕元をさぐった手に触れるものがあり
それは感触で人の耳だとわかる
よく見えないがそれはたしかに二切れの耳で
ゴムのおもちゃのようにも思える ....
化粧箱や封筒の
中には宝石があるものだと
女の子はそれくらい知っている
馬の形をした雲を追いかけて
知らない道を行くと
その細道の先には橋が続いて
途中、別れの言葉を思い出して
しゃくり ....
ふと箸を落としてしまい
屈みこむと、床に米粒が続いていて
点々と拾いながら進んでいく
客間へ、座敷へ、縁側へ
いつしか古い蔵の脇を通り
門から出て、人通りの少ない裏道のほうへ
白く輝く米粒 ....
まだ夕方だというのに眠くて
すこし横になっておこうかと考えているうちに
いつのまにか眠りがやってくる
目を覚ますととうに外は暗い
諦めてこのまま寝直してしまおう
と、その前に水を一口

 ....
映画が終わり
グラスの水滴が流れて
伝わっていく泉に
手を浸す
深夜のこと
頬にスタッフロールは
逆さに雨となり
取り返しのつかない
早回しにも似て
繁茂した
森の奥に隠されている ....
案山子になりたい
畑の真ん中に
片足で立ってみる
結構いい感じで
鳥たちと仲良くなる
農家の人は優しく
話を聞いてくれて
夜は立ったまま眠り
五年は帰らない
梅昆布茶さんの春日線香さんおすすめリスト(17)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
- 春日線香自由詩11*21-3-4
トラムの話- 春日線香自由詩320-11-1
南の信仰- 春日線香自由詩10*18-10-13
思い違い- 春日線香自由詩1217-12-28
水鳥の夢- 春日線香自由詩917-5-27
おんぶる- 春日線香自由詩216-8-22
ナボコフ『青白い炎』第一篇・試訳- 春日線香自由詩2*15-6-4
二人の遡行者—細川航「ビバーク」- 春日線香散文(批評 ...214-5-8
赤飯三題- 春日線香自由詩514-1-29
もやしヶ原- 春日線香自由詩7+14-1-25
うで- 春日線香自由詩11+14-1-23
お供え- 春日線香自由詩714-1-19
かなしい唄- 春日線香自由詩713-9-26
道しるべ- 春日線香自由詩313-9-21
洪水の夜- 春日線香自由詩313-8-16
眠りの淵で- 春日線香自由詩612-9-5
案山子- 春日線香自由詩511-8-11

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