醜悪な鬼が追って来る
神社の境内の暗闇で
醜悪な鬼が眼前に居る
灰色石畳にその巨大な体躯を乗せ
そうして鬼は深まる闇に、
無言でギトギト輝きながら
思わず俯いた私に、
強烈な異臭を放 ....
たぶん森がいけない
いやいや森はいけなくない
林を示すような詩ならよいのかな
よもや木をみる曜日にかけばいいのかも
されば、
と
ぎりぎり
詩をかいて
みた
よ
....
気休めな水に放てば金魚らはひと夏きりの命を泳ぐ
六月に不似合いなほど晴れていて昨日の雨がわたしを映す
透明な花瓶の中で紫陽花の茎の模様が屈折してる
雨か汗滴り落ちて黒く染み黒いTシャ ....
あなたの小指に糸を巻きつけました
赤い色をした糸を
風にふるえて揺れている
その糸の先にわたしの小指
(ねえ きれいでしょう この世界は
心でしか見えないものがある)
ど ....
ふたりがまだ二ひきのりゅうだったとき
世界は平らで 雨がふっていた
眠るように飛びながら
からだはちょうど からだの重さだった
いまになって思いだすと
まぶたでは雨降りなのに
....
160624
禁止法
近視方
近司法
金糸宝
錦糸縫
菌糸法
筋刺法
斤四方
均師報
なかなか
漢字変換できないから
今年の住民税は ....
死を真近にして、
書き留める詩の言葉
魂の核、響きの聴取
自我の内なる霊性溢れる
普く人から 一滴また一滴。
力の限りに走っているのに
ふんわりとスローモーション
もうすぐこの世の中が
終わってしまうのだろうか
一滴の雨が頬を伝う
生える緑の匂いが鼻を突く
右足が地に着くと
ずしりと沈み
ボタ ....
終わらぬ夜に氷を浮かべ
ウイスキーを探る指先が
膜の上を滑るようになぞり
飲み干してしまう液体の色
薄暗い照明のせいで
味は苦かったとしか言えずに
転げ回る夏の大車輪が
....
今も昔も旅人は
長い橋を渡るだろう
――{ルビ何処=いずこ}から何処へ?
傘に弾ける豪雨に身を屈める日も
雪の坂をずぼり…ずぼり…上る日も
灼熱の{ルビ陽炎=かげろう}ゆらめく夏の日 ....
凍結した大地、
彷徨する雄の白熊
雌の匂いを頼りに、
年に一度の交尾を求め
蒼白い氷山の突端、
雌雄は獰猛に唸り
出逢い対峙する、
選択の余地はない
生き残って来た意志 ....
ハーネスを付けた老犬が
散歩している
ヨタヨタと…
仔犬の頃から
遊びあった犬
散歩中に私を見つけると
尻尾を回し飛びついてきたのだが
「マリリン」呼んでみる
近寄ってこない
....
無理だと思うよ
妖精が云う
あなたは人間だから
でもわたし
もうすっかりあきらめているから
それならなぜ
妖精が云う
あきらめているとできることが
それはなに
期待をしないこと
....
わたしの愛しいお月さま
借り物の光で身を装いながら
あなたは女王のように天を渡って往く
わたしの愛しいお月さま
ちょっと見わからないが肌は荒れ
あっちもこっちも傷だらけ
わ ....
その男
生まれたときは貧相で、猿にも似た面立ちで
決して可愛い泣き方もせず、
その男
幼児となって生意気に
おさがりは嫌だと駄々をこね
その男
友も作らず師も知らず
世話を ....
無風に花瓶、押し倒れ
転がる転がる、少女の手許
受け止める幼手、花瓶は砕け
甲高い笑い声、さも当然に
さも当然に、笑い声響くなか
花瓶は完璧に粉々に、亀裂走る円卓
少女は意識し ....
平熱の日々には
ひとの軸が熟していく
高熱のうめきも低熱の苦しみも
何もないので表面はなだらかであるが
ひとの上へと落ちてきたものは
どこまでも着実に収蔵され
ひとを通過する静かな ....
意識 開かれていく
音の響き自在な界に
眠りの底 オオゥオオゥ
覚醒の内 ォォイ ォォイ
子音は母音に溶解し
回遊するシの言葉ガ
音像の絶えざる変形に
至福の在る形態、歌い創る
( ....
きのう
知ったの
恋愛は
条件付きの愛なんだって
どうもおかしいと思っていたの
どんなことでもゆるして
なにをしても見捨てないで
そう、
なんで母親みたいになっちゃうんだろうって
....
新しい詩を詠む
生まれたてほやほやの
一日一生
何時も今日が最期だから
新しい詩を詠む
生まれたばかりの新鮮な
潤い輝く魂の詩を詠む
終着駅までのすべての往路が足し算の暦なのだと
信じきっていたころも確かにあったことを思い出す
アネモネの蕾をみて安堵したように降りはじめる雪がある
ことはまだ知らなかった
降りつつ、積もる雪で ....
幼い前髪を撫でると
私の内臓の匂いが仄かに香る
私の風貌によく似た少年の
幸せだけ、今日も願っています
今日もあなたが幸せでありますように
十年後も、二十年後も
私が触れることすら叶わ ....
その川は病院の屋上にあった
男はゆっくりと川に入った
早暁の屋上には看護師はいなかった
監視カメラも男をとがめなかった
男の中で長年…
そう 半世紀ものあいだ
渡りきれな ....
焼き豆腐は とても素直
邪悪な世界の空気を 自らが吸い取り
拡散もせず 大人しく
鍋の横で 蹲っている
ヒロインとして 崇められた湯葉のように
くるくると 蜷局を撒いた 蛇の如くに
時 ....
一日ぶんのねじを巻いてきたはずが
まだあかるいうちに切れてしまった
時間をみせて
とかりた
あなたの時計もなんだかへんだ
かつて
わたしがいて
あなたがいた
それが全てだった時 ....
160619
雨を排出して
街の個性を潰すアユ
雨を貯め込んで日照りに備える
イワナ
貧乏な車が田圃に転落して
運転者は打撲傷で済んだが
後部座席でシートベルトを無視し ....
防御の意識を溶解され
ビートの強度が脳髄貫き
自己循環のループ壁取っ払い
スッポンぽん ノ 真っ裸
偽って 成って 鳴ったなら
個体の内楽音 ハ 天体間楽音
あおあお宇宙 すっくと独り
....
渦を巻く心の中に
永遠の夢をみた
真夜中の空を観てみれば
それはあまりにも美しい
果てしないクロニクルは
金銀銅の煌めきを放ち
ぼくを魅了する
夢は永遠の嘘であったとしても
な ....
さっき、午後一時半過ぎから真っ黒になっちゃった
影法師になっちゃったのよ
伸びてく伸びてくわたし伸びてく頃
ガードレールにぶつかって痛くっても
そのままずるずるまるで道案内
みなれた扉をだれ ....
今夜は夜空に星を想えない
月がどこに行ったのかみつけられない
わたしだけの神さまとも会えずに
だから「おやすみ」はまだ云ってもらってない
近ごろはずいぶんなんだ、ふと思うそばから
それは ....
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