みえるひと
伊織

みえるひとって
苦しくはないのかな

あらゆる人の悲しみ
あらゆる人の痛み
すべて 引き受けてしまうのに


みえるひとの痛みは
どこへ行くのだろう

月のない夜に紛れて
そっと
飛ばしてしまうのかもね


みえるひとの覚悟は
どれほどのものなんだろうか

わからないよ
どうしたらひとりきりで
そんなにも多くの闇と向き合う


  今日
   みえるひとは
   魂が崖から飛び降りようとするまさにその瞬間
   私の腕をつかんで
  この世に引き戻してくれたのです
   私はただ
   「大丈夫です。」
   そう言って下手な微笑みを浮かべていました


ほんとうは
みえるひとにだって
幸せになってもらいたいんだ
たまには休んでいいんだよって
声をかけてみたいんだ

どうしたら
みえるひとのやるせなさが見えるのかな
どうしたら
みえるひとになれるのかな
すべての人の感情は引き受けられないけど
せめて
たったひとりの人のぐるぐるとした闇を
消し去ってあげたいのです


自由詩 みえるひと Copyright 伊織 2011-06-08 23:04:26
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