きえねばならない思いをかかえて
心の溝を覗くとき
淵に足をすくわれそうな闇を前にして
問うてみる
闇は誰のため
誰の物でもない
とてつもなく広がる
だれそれのたそが ....
こどもをつくるためになんども
なんども裸で抱きあっているあいだ
ケーキをまえに三人で写真をとり
それを実家や友達にメールしているあいだ
ぼくはずっと
防衛省でコストダウン ....
軽く立ち歩く音 、迫り来る
響く裏廊下廻り 、ペタペタと
君が現れるいつもの時間、
濃密な沈黙にいつの間にか
白壁の前で膝を抱え
白いスリムのジーンズ
相変わらず
君は24歳のまま
....
午後の壁で
冷たい粉を拭う
わたしではなく、
あなただけが白い
子供になっていく海
無色透明な硬いさそりのようだ
一回きりの
嚏
手のひらに真珠をのせ
なめらかに海に流す
一連の動作は帰ることを意味する
君を待って
長らく浜辺で時を過ごした
捨てられたボトルや
流れ着いた流木と共に
私はもう待たない
....
ティーポットにそっと忍ばせる
その秘密が彼女には宝石すぎたから
一番上等なカップ&ソーサーでもてなしながら
待っている
誰かが口火を切るのを
「あらご存じなの?
頬は上気して
....
私たちの血に
記憶が
あるのならば
英霊はやがて
太陽の下に
くっきりとした
その輪郭を現す
私たちの血に
歴史があるのならば
一度の挫折が
終わりではない
繰り返される
....
音の滴、斑点となって飛び跳ね
郷愁、遠く奥から到来する
堪らない憧れ、未知から打刻され
遡行する時間、源頭の水流を浴びる
振動する大地 、脈打つ心臓
終わることのない命
....
きのうあたらしいところに行った
ひとりでは行けないところだった
猫の耳たぶがどこにあるか しってる?
わたしはきのうそれを見たんだ
きのうわたしたちは夏を齧っていた
いじらしく硬く、青臭い
ビルの高さを馬鹿にしながら
幸福はただの文字になり、遠くへ
かわいいものたちの国を走り抜け
もちろんはだしで 手を上にあげて ....
今朝、サボテンを
ちょんと切って食べてみた
泣き腫らした目の下の
やわらかい、にくのあじがした
乳白色の空を
アラーム音が貫いた
悪魔が穏やかな寝息を立てている
レースの影が頬を泳い ....
あめつちを貪り ふとっていくからだを
絞ってください。
きゅう、と絞ってください。
わたしこのまま みにくいからだをさらせません。
わたしから滴り落ちるしるは
林檎の厚い皮と 寂しい ....
わたしには方舟がある
1LDKの部屋
いっぱいの木造船
そこがわたしのベッド
そこがわたしの書斎
心配症なわたしの祖父が
一人暮らしのお祝いに
据え置いていったのだ
いつ来るとも知れぬ ....
こんだけ
毎日と言っていいほど
あっちこっちで
飛び込み自殺があんのに
何の対策も施さねえのは
飛び込む奴に問題があるとは言え
どう考えてもおかしいんじゃねえか?
人身事故だなんて
オ ....
青春の幻影として片付けた女と同じ匂い、いいわけ
風呂場には蛇口の摘みが、二つある。
「青」と「赤」の{ルビ捻=ひね}りを、調整セヨ。
ある日、老父は云いました。
「クールヘッドとウォームハートが、処世術」
(目に見えぬ人のこころの調 ....
人々の賑わう風呂屋の食堂で
ハイボールのジンジャー割りを
ぐぃと飲み、机上に置く。
ジョッキの内側に広がる
琥珀の海に
細かな気泡が…昇ってる。
この世には重力というものがあり
....
かばさんが本契約上の義務に違反して秘密情報を開示または使用した場合には、お花畑の幼虫さん(蝶々さんに変態する子どもたちをいうがこれに特定されない、以下同じ)に対して金銭的に算定困難で回復不能な、成虫不 ....
愛
一
二
の
三
愛
は
私
を
飛び
越え
て
君
の
所
で
着地
を
決め
た
透けたドレスの色素胞が 破れだすドレスの模様を引きずり
駆け降りた階段のうえの影の
柔らかな滞在
終わりの星座の再来が まだその長裾の延長にまどろめる夜を 担える優しい足跡の腹面 ....
牛が不思議に騒ぐ夜があるの。
台風の夜でもないし地震の前触れでもない。
乳に血が混じったりもしない。
虫が多いわけでもない。
まあ牛舎なんてのはいつも虫だらけだけど。
夜なのにもぐもぐ反 ....
夜空に花火が舞う
赤、青、黄、etc...
火花が尾を描く
窓の外から
響く炸裂音と滲む色合い
マンションの一室で
PCに向かいながら
残響を感じる
一通のメールが届く
「ど ....
満州は日本の領土ではないと
仲裁を申し立てた
中華珍民共和国に対し
裁判所は
「歴史のある断面を見れば
満州が日本の一部であることは明白だ」
との判決を言い渡した
それを受け中華珍民共和 ....
160714
花火の奴らを全員殲滅
腰巾着の火花もついでに殲滅
いつも威張っているのだから
夏休みの月の無い夜には気をつけろ
先輩から伝わっているの ....
たわんだ膚のなかで わたしは
蟹の夢をみている
甲羅を脱ぐ蟹が いま来た波に溺れかけて
まだ柔らかい腕がふるえるように動いている
水ぶくれみたいに 頼りない体
日焼けの背中に水ぶくれ ....
伸びやかな糸の向こう側に掛かる虹を
黙って見ていた
辛いのは嫌いだって言ったのに
辛子が大量投下されている
糖化処理する訳にも行かぬのだから
銀のスプーンで救い上げる
もし ....
{引用=カラカラと糸車を誰かがまわしている
その糸車の糸に多くの人の指が絡みつき
血塗られた憎しみの爪をのばしたり
いびつな恋敵の小指たちが
ピリピリと過去の妄念に反応して
親指は ....
白いシャツを着せられていた
脱ぐことも赦されなかった、そのシャツを
声を発するごとに
胸の真ん中についた、赤いしみ
どんどん大きくなっていく、赤いしみ
(人とすれ違う ....
大海原に浮かぶ月
足元の砂に
ちりちり打ち寄せる
光の欠片
溶液になった
クラゲの悲しみ
強いひとにも
朗らかなひとにも
悲しみはある
それは弱さでも
やま ....
夜が終わりかける頃に
突然迷子になったきがして
膝を抱えた幼子が
母の帰りを待つような
糸口のカギを持って出てきてくれる
森の中のリスを待ったようにして
だけど現実は
....
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