谷中ぎんざの通りには
石段に腰を下ろした
紫の髪のお婆さんが
せんべいを割り
群がる鳩に蒔いていた。
向かいの屋台は
木の玩具屋で、おじさんは
「ほれっ」とベーゴマを ....
雨が硝子を 舐めるので
時間すら 舐めまわすので
歩くことの意味や 進むことの意味も舐めるので
この世界には もう 紫陽花しかありません
飴細工のように 雨に舐められて
窓の向こう ....
手をつなごうか
心をつなごうか
ねっ
トウキビの葉がゆれている
昨夜の雨に濡れたまま
まだ膝くらいの高さだが
すぐに背丈ほどにもなるだろう
トウキビはうまい だが
そんなに食べたいとは思わない
年に一度も食べられれば十分だ ....
ひとは
自分では
はじめることも
おわることもできない
できることは
ただすすむだけ
うろうろと
ふらふらと
すすむだけ のろのろと
それをみただれかが
指をさしてわら ....
{引用=
さだめらしき願いを ひとつ知りました
六月の
嵐にひかえる空は
細心のあやうい平衡と ためらいに似た心地なさを {ルビ具=よろ}う
見あげれば
流れは岩にわかれ
....
余計な一言が面白いと思っていらっしゃる
思い出を一番から五十六番まで
USBメモリに移動して
一息
私のディスクは空(から)になる
空(から)になった空(そら)に
星が一粒
もう一粒
繋がって
絵を描く
尺取り虫が
一歩 ....
肌に艶のある小母さんが暖簾を掲げている
くいっと曲がり
小さな路地に入っていくと
木のこっぱや削り粉が雑然と置かれていて
いい匂いがする銭湯のうらっかわ
すぐ右手には
古びた人気のない ....
黄身は賢い
同化しないように
いつだって
気を付けてる
白身は綺麗
いつだって
光を発しているから
注目の的
それでも きみは かしこい
★,。・::・°☆。・:*:・° ....
うすずみ色の
やわらかな蓋を
かぶせられた街で
こまやかな水に
しっとりと懐かれて
わたしの内側は
ほんのり熱を帯びる
うすずみ色の
やわらかな蓋の裏に
みっしり結露した水玉 ....
翠星石が死んでしまった
ついに姉妹に殺されてしまった
翠星石は動いてはいるが死んでいる
人形のあるべき姿に戻っただけかもしれない
綺麗なオッドアイだった
片方の眼は潰れてしまい
口 ....
気がつけば雨は雪。
創造の世界では初夏でも雪は降る。
なんて自由な空間。ぽーんと抜ける空間。
木曜日の午後の喫茶店。
一年中飾られているクリスマスツリーに暖色が宿る。
....
進め、進め、力強く。
進め、進め、誰が何と言おうとも。
進んで進み尽くして疲れたら休めばいい。
そしてまた、どこまでも突っ走れ!
偉大な先人達の後に続け。
先人達が創り上げた光の道を ....
名曲喫茶ライオンの店内は
五十年前のコンサートが流れ
ブラームスの魂が
地鳴りを立てた、後の{ルビ静寂=しじま}に――
(ごほ…ごほ…)
無名の人の、{ルビ堪=こら}え切 ....
コーヒーショップに夏が来て
向かいの席の女子高生が
ブルーソーダを飲み始めた
青い液体をストローでチュー
コップの中身が減っていくにつれ
女子高生は足先から海になっていく
水位は下腿から太 ....
1
ぬくもりを知ってしまったぶんだけ
喪失は獲得よりもいつも大きい
穴を塞いだところで
爛れたままの周辺が孤独を告発する
2
大木の幹の裂け目に光るどんぐりに
ひ ....
夢の扉の向こう側に
絹の衣装を纏ったあの時の
嬉しそうに君
幻になった
君の
優しかった歌
ユリの花束も抱え切れないほど
飾って置いた無傷な部屋
/海底に沈んでいった記憶の ....
れんちゃんは犬なのに
お手もできない
ある日
このぼくにできることを数えてみた
あれと、
これと、
それに、
三日数えても尽きなかった
それで
ふと、気づいて
そうだ
ぼくに ....
朝 陽光と爽やかな風に気づいて
眼を醒ます
ふらりと入った喫茶店の
偏屈そうなマスターの淹れる珈琲がすこぶる美味い
擦れ違った女性の残り香は
懐かしい女性のディオリッシモ
他人 ....
連れてってというものたちは
刺をもつ
過ぎ行く時間のすそに
そっと
刺をさす
──エクサンチウム ストルマリウム
野山で遊んだ私たちは
君をくっつき虫と呼んで投げ合った
いつか ....
自分の意思で出ていくのだから
淋しさなんて
感じない
懐かしさなんて
かみしめている余裕はない
感傷に浸るかわりに
明日の夢を必死に数える
幸せになるため
一歩前へ進むため ....
お洒落な 満月なんて要らない
雨が降りそうだし ブルームーンなんて お洒落な言葉は要らない
青い満月をみたら 幸せになれるなんていう 言葉は要らない
要らない言葉は 小鳥にしか読めないほ ....
不幸の扉。
扉自体が不幸なのか 扉を開く者が不幸なのか
それは、 どっちでもいいんじゃない。
だって 入れ替わり立ち代わり
扉が人間になったり 人間が扉になっ ....
わたしのなかに
雨がふる
あなたのなかに
雨がふる
さらさらと
しとしとと
....
子供たちが
元気に
穴を掘っていたら
砂の中から
じいさんが出てきた
ベンチに座って
エロトピアを読んでいる
俺に子供たちが知らせにきた
面倒くさかったが
大人は俺一人だったので
....
短夜のアバンチュールやマーメイド
海の真ん中で言葉を捨てる
また死んだ人のせいにしてしまった
ねぇ?
なあに?
ゆめ を みたの
どんな?
とても キラキラした
ねぇ
なぁに?
ゆめ を みたいね
キラキラした
七色の風 吹く夜は
永く ....
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