小学校から帰ったぼくに
「今夜はお母さんの店で夕食だぞ」
と微笑みながら次兄がいう
長兄が帰ってきたところで
兄弟三人で冬の夕方の千住の町を
母の店に向かった
今夜は母と一緒の夕食だ
....
改090603
宇宙を旅する
きみの悲しみを
微惑星が消し
抑えがたい憂いは
彗星の尾が運ぶ
激情は、爆発誘発溶融
火球を吹き飛ばす勢いの
遊 ....
美しい赤紫色の旋律弾けて
夕日が沈んでいく
幕が下り
紅潮した顔も
明日になれば澄んだ瞳で朝を迎えるのだろう
*
終わりなき道程も
休息を交えながら進むように
....
描きかけた まるい絵を
仕上げた事はなかった
曖昧な空に 風船を放つ
重さなどは いらない
この世界のたくさんの声が漏れて
帰り道、溶けそうな歌声に酔う
わたしはわずかに軽い
....
砂浜を撫でる乾いた風が
肺から循環する
感傷の毒を洗い流し
ただ瞬間だけを咲かせる
吐く息はいつも
黄痰に鎖を繋がれ
夢の欠片も存在しない
一本の座標軸に
流され惑わされながら ....
スライドする
月が笑う
夜の窓辺
憂鬱を孕んだ
胸が冷える鼻先
わたしはわたしの行方を
ポケットに押し込んだまま
吸い込まれる
終電の渦
たった1mgの錠剤で
繋ぎ ....
/
/かなしい/おしらせ/です/
/あなた/を/この/あたま/から/しょうきょ/し/ます/
/さようなら/おげんき/で/
青いにおいが鼻につく
遠くに見える海が白い光を生みだしている
....
青空
もういいかい
まあだだよ
雲さん かくれんぼ
鬼さん こちら
とう かぞえるよ
お日さま ひとりぼっち
あか鬼さん
夕がた 来たら
たき火もするよ
....
寂しむザリガニが一匹、紅一点鮒達の中で泳ぐ金魚に見蕩れていた。今まで見た事の無かった金魚の美しさに唾を呑みながら、ザリガニは近寄る事のできない自分にもどかしさを感じていた。
そこに金魚が、鮒達の ....
雨音に紛れ、扉が僅かに軋んだように思えた。
母親がこまめに掃除しているのだろう。
微かな埃と日向の匂いがする。
雨粒。雲を縫うこどもたちの声。坂道を駆ける軽い足音が風に乗り、ガラス戸を揺らす。
....
風のにおいが愛の記憶を
ふいにくすぐる
手探りみたいにひろい夜を
小さなサーチライトひとつで
それぞれ欠けた月
甘く噛み砕いて
帰れない二人を残し
だんだん溶け出していく
星と街のと ....
どこから
ともなく
流れてくる
なつかしい調べ
さえずる小鳥も
枝の上で目を閉じ
一匹のシマリスは
頬を膨らまして
....
切ない夜を波濤の数だけこえて
やおら滅びゆく貌(かたち)のように虚しく、
何処までも果てのない君とともに
歌うべき僕たちの言葉が見つからない
伏せた漆黒の虚しさは朝日を浴びて
いつしか濡 ....
ボディの色が気に入ったので
エレキギターが欲しくなった
メーカーの最上位機種
カラー名はアバロンとある
「AVALON」は
イギリスの何処かにある伝説の島
アーサー王の遺体の眠ると ....
青空は何処でも青くて
桜は何処のでも薄いピンク色
分かってるよ
頭でも心でも
簡単に逢えないんだから
言葉で繋がってることくらい
ちゃんと理解してる
でも
ワガママかもしれないけど
この青空 ....
あなたが残して行ったもの
俳句を連ねた小さなノート
表紙がぼろぼろになった聖書
漱石の「虞美人草」と
若山牧水の歌集
壇の上の 薄い写真の中の
やわらかな微笑み
かつてあなた ....
はじめまして
初めてこの枝で花を咲かせました
これからもこの気持ちを忘れずに
毎年、花を咲かせたいと思います
冷んやりした部屋の
窓際に椅子を置いて座る
裸電球に照らされた
オレンジ色の壁に
魚の形の滲みが付いている
じっと見つめていると
風が梢を揺らす音に混じって
足音が聴こえてき ....
そう遠くない未来に
目に見える灯火は全て緑になる
輪郭の曖昧な緑の灯が
平板な空の下に溢れるはず
だらだらと続くゆるい坂道を
駆け上って溜息を
ひとつ
つくと
緑の霞がかかった町が ....
たたかって
たたかって
かなしみをえらんで
かなしみにえらばれて
たたかった意味さえなくして
月がゆらぐ
夢がとおくに消えてゆく
それでもおまえ ....
―朝
ビルの階段を降りて行くと
何かの軋む音がする
たくさんの
時間の積み木が
押し合い
こすれ合って
順番を決めている
―歩道を歩く
山桃の並木が
慌てて生え ....
写真機博物館とわたし
1
ひとりぼっちなわたしがひとりぼっちだというと
みんながぼくもひとりぼっちですという
じゃあ、わたしひとりじゃないんだ、みんななんだ、というと
みんながすうっ ....
三日月がいっそう薄目がちにほろほろ涙を零しておりましたので、私まで悲しくなってしまい、ほろほろと泣いてしまっていたのです。
私が泣いたからといって、月がゆっくり安寧のなかに眠れるわけでもなく ....
控えめに訪れる
波の繰り返し
耳鳴りは怒りを洗い流して
眩い光りの群れが
手のひらで踊り出す
地平線で別れた
青と蒼が
波打ち際で
何億年ものの歴史を
そっと置いて行って
未来 ....
父の命日がある季節
春
お墓参りもあまり行けず
貴方がどんな人だったか
よく知りません
私が私として生きている中で
一番イヤだったのは
貴方の世界に引きずり込まれ
貴方の ....
街のあらゆる隙間から
浸み出てくる泥に追われて
JR駅構内の暗がりの
打ちっ放しのコンクリート壁に
ひっそりと身を寄せる
壁に走るひびはハイウェイ
ところどころ露出した
砂利 ....
「サザエさん」視ずに二人で出掛けよう
(迫る明日から駆け落ちしよう)
指先に載るほどの大きさの過去を
テーブルの上に置いて目を
閉じたら 重い
液体の粒が眼窩と眼球の隙間に
散乱した
そのとき夢で見た雪深い森の中を
毛の長い野良犬が歩いているのではないかと
....
赤い紅した微風吹いて
柔らかい肌した土の香りが
スギの種と一緒に
舞い踊る
君の鼻のてっぺんだけは
赤ら顔だけど
目尻はすっかり
春うらら
コートを脱ぎ棄て
日和に飛び込 ....
あの現場の写真を見た
瓦礫はすべて撤去され
金網や柵に囲まれたそこは
グラウンド・ゼロと呼ばれていた
そして現在 私が住む街の駅前に
デパートを取り壊した後
再開発計画が頓挫して
....
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