無垢な聖域で飛び回る小鳥
そして口のきけない少女が笑っている
パンドラの最後の希望は
この地で淡い松明に囲まれて飛び立つ瞬間を待つ
百年の孤独から目覚めた太陽が泉から怱怱と昇る
....
夕焼け小焼けは ビルの先
から降りて来ない都会
谷間でうごめく人々は
電飾を着飾っていて
日暮れがない
○○山の△△寺(でら)はビルに飲み込まれ
夕暮れの梵鐘は口を閉じて
頭の中で鳴 ....
お蕎麦を食べながら
昔の話をしよう
学生時代
君のタイプを盗み聞きして
私に当てはまることがないと
ひどくがっかりしたんだよ
もっと可愛くなれるように
お姉ちゃんに化粧してもらっ ....
花吹雪舞う道を ひとりで歩いた
分かれ道で手を振って きみは去った
あたしのことは すぐに忘れる
夏が来れば 陽の光に夢中になって
花びらは風にのって どこへともなく
青い月夜の ....
わたしはターヘルアナトミア
あなたの皮をペロリと剥いで
思惑の筋や経絡がどれほど緻密にヒクついているか
白日の下に晒してご覧に入れます
わたしはターヘルアナトミア
飲み込 ....
心と身体が離れている
その隙間に不安が滑り込む
いちいち手足に呼びかけないと
動作しない人間型ロボットみたいで
いろんなものを詰め込んだ
底の抜けた南京袋
唇から直腸まで
排 ....
真新しいパンプスを
履きながら歩く
晴れわたる春の路地裏
靴づれはひりひりとして
ドラッグストアに立ち寄る
店員へ傷跡に貼る
ばんそうこうを下さいと云う
*
少し無愛想 ....
歌いはじめまして
花が咲いてますよ
野辺の生き物たちも忙しなく動き出しました
道端からはみ出る雑草は強いですね
そうか、 春なのか
、もう衣替えの季節がやって来たんだ
(え ....
朝靄の中
白い影が一歩また一歩
呟く声の方向は
白い視界の中の山脈
吹雪いている心の中の
一線の黒い帯赤い線
ほんの三ヶ月前には
仄かな暖かさのため
身を寄せ合って生きてきた
そ ....
四月の終りの西都の原は
空の青と雲の白
陽光に映えた一面の緑の間に間には
ミツバツツジの赤が美しい
ゆらゆらと若草の間を歩くと
目の前に左に右に草をまとった程々の墳丘が現れ ....
聞き捨てた
島へ渡る船なんて知らないから
僕らは港を探しに歩いていたんだ
見たこともない白い浜辺
ただひたすら国道のガードレールに沿いながら下る
海は眩しくてずっと近かったから
額から ....
心の芯に哀しみがある
それがどうしても声にならない
岐阜駅から長良川まで歩く
今日は少し増水している
空は曇り
私の心も曇ったまま
心がしんと冷えて
命の底を視てみると
どす黒 ....
生きたいと願う父が死んだとき死にたいと思う私が産声あげる
サヨウナラサヨウナラって粉になるでんぷんみたいに翔ばされる骨
肉体の元素記号を燃やしても軽くならない質量 タマシイ
立 ....
テーブルの上に、あした買ってきたりんごを置いてあると言う。
もちろん、そんなもの私には見えない。母だけが見ることのできるりんごだった。
今朝も雨が降っていた。桜の季節はいつも雨に邪魔され ....
あなたにうがいを教えたことはないけれど
あなたはうがいを体得していた
言葉で教えられるよりも
見て覚えることのほうが
きっと何倍も簡単なんだと思う
それでもあなたが
うがいってなんなの ....
中途半端に目覚めた
朝のような
深い霧に包まれて
たった一人
地球に存在する
気分を味わう
誰にも断ち切れない
深い絆で
結ばれていようと
いつかは
この手を
離す時 ....
夜の静寂に歌のような言葉
耳たぶに引っ掛かって時を揺らす
此処にはいないはずの
あなたが聴こえてくるのです
朝の雑踏に歌のような言葉
靴紐を解いて時を忘れさせる ....
しゃぼん玉のような瞳を漂う
異形のチューリップ
コクトーの詩がめらめらと
記憶から皮膚を炙る 匂い
生まれたての羞恥心に注ぐ
冷たい炎のバプティズム
春を纏ったものたちは戸惑う
羽化した ....
はぐらかしてる
1日数ミリずれて
いつかここではないどこかへ
そうやって進む
何かに押し出されるみたいにして
1日1歩にも満たない
でも、
生まれた場所と
死ぬ場所は少し違うか ....
今日は
風がお休みだから
空気がのんびりしている
日向ぼっこをしている庭を
転げまわる
子どもたちが
僕の人生の
すべてになる
老いるのも
成長するのも
同じ時の流れ
ただ頷いている風合いでいいのです
経年変化に経年風化なく
裏地にでも縫い付けてください
西のまちは
貴族により栄え
東のまちは
西洋により栄えた
その北みちのくは
辺境の地とし ....
四番目の息が聞こえる。
父の息。
母の息。
私の息。
そして、聞こえる。
他には居るはずがない誰かの息が。
まだ幼かった私は、父母に挟まれ、狭い二階の一室で、毎夜訪れる暗闇と遭遇してい ....
三日前のビニール袋に入ったままの新聞
チラシくらいは見たかった
日々 育児に追われている
はい 喜んで追われている
トイレにハイハイでついてくる
ドアを少し開けていないいないばあ ....
桜の季節がやって来たのに
泣く子はだあれ
桜の樹の下で一日中探している
薄桃色のかくれんぼ
向日葵の季節がやって来たのに
泣く子はだあれ
背丈より高い向日葵畑で探している
黄金色 ....
もう何度と
ぺんぎんたちは
繰り返したことだろう
やめると言っては
煙草を吸い続けてきた
昨日まで
もう二拾年間
ぐらいにもなるだろう
今朝ついに
ぺんぎんは決めた
禁煙をして ....
玩具売り場の前から幼児の泣き声が
人の溢れた地下街広場に響いて
若い夫婦の困惑が子供を叱る
幼児と親と対立する主張は
地下街の雑踏を立ち止まらせ
黙らせる
己の主張が通らない ....
うす紫の夜明けに 投げ出された一冊の
古い書物に うす紅の花びらが降り積もる
開いた頁の活字に 重なって見え隠れする
過ぎ去った日々の残景は 霞んで
手を伸ばしたら 届いたはずの風 ....
距離が捲れて
ゾウたち湧き返る
餌をやる手が喰いつかれ
餌になる
くらいなら
喰ワネバナルマイ!
何も売りはしない日
うららかうららか
うるおうか
鼻も耳も牙もなくした
ゾウ ....
生まれたての心臓が
黒い樹木の網を逃れ
薄曇りの頬を染めながら
眩さを増して往く
震える瞼の隙間
扇ひらいて
火の海
潜る魚のよう
夜女は身をひそめる
ちりぬるゆめごを
泥の小舟に ....
それはモノゴトとの距離の問題
モノゴトが遠くにあれば小さく感じて
モノゴトが近くにあれば大きく感じる
時間もひとつの距離だ
あるいは他のモノゴトとの比較の問題
モノゴトの傍にもっと大きな ....
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