そらにはりつく ひしゃく星
すくっておくれよ
ちっちゃな、ちっちゃな、うちの祈り
争って潜り込もうとしたものか
互いに庇いあった末にか
何気なく陽向に出した水槽に
重なって死ぬ鈴虫の山
ゆうちゃんは無口な転校生だった
四年生の春に
ぼくのクラスにやってきた
ゆうちゃんと、ぼくは
なぜか気があって放課後はいつも一緒にあそんだ
がっこうは友だちできへんからきらいや。
....
お盆の上に
ラーメン丼、ふちまでお汁をこれでもかと
お汁の上に炒めた肉を積み上げて
肉の上にレッドペッパーこれでもかと
横にはまっかな林檎一個
しずしずと持ち運ぶ
長い廊下を
食べた ....
哀愁のコートを纏い
感傷の中を走り抜けて
憂鬱の煙を吸い
恍惚のため息を吐き
嘲りのヒールを鳴らすと
マゾヒックな水溜りが弾けた
煩わし ....
敷き詰めた地雷
踏まないように爪先立ちで歩く君
だけども小指が当たってしまって
凄まじい音と共に
私の心に闇が迫る
“ごめん、ごめん”と焦る声
熱くなる目頭
笑いたいのに、笑 ....
奇を衒う、という作風は
技才ある方がやるもんです
私のようなあんぽんたんには
到底真似できやしないのです
弁えております
それに及ぶ才がないことも
学に費やす気がないことも
努力 ....
空
抜けるような
青いうしろめたさを
雲
ぽっかり浮かんだ
白い嘘でなぞって
花
可憐な
ピンクのあてどなさを
葉
みずみずしい
緑のお節介が抱き ....
血が足りない
血が漲ってない
興奮に体が耐えてない
どことなく
全身が乾燥している
三ヶ月よく頑張ったよ
おまえもおれも
飲み干したカップを
静かに ....
いま、立方体の中で手足を折り曲げている
きっちり蓋を閉めて 一分の隙もないように
それでもはみ出しまう「私」が漏れ出て
側面を綴りながら、ゆっくり滴っていく
シジン、と名乗っているうち ....
育てる
花を育てる
愛しい我が子を抱くように
育てる
花を育てる
我が子の明日を夢見るように
※
よく見かけるひと
花電車の通う線路脇で季節の花を育てるひと ....
奥琵琶湖周遊ドライブ
若き日々たちまちに過ぎ妻ととも湖畔を走る老年の日々
薄き陽の雲広ごりて平年の23℃の秋のドライブ
稲はみな刈入れは済み黄葉となり一年過ぎてまた歌を詠みいる
....
ひとりより ふたりのあさが あったのに ふたりのほうが こどくだなんて
秋晴れが 心の隅まで 照らし出す なにもない部屋 太陽のにおい
降り止まぬ 秋の長雨 涙との 果てないときは いつ尽 ....
血液という海に守られている
骨という外壁に守られている
わかっていながら、
あたしはその中で平気で紛争を起こします
それを片や、狂気沙汰に批判します
....
{画像=111016151903.jpg}
迷ってばかりではないんだよ
ゆっくり歩いて来たんだ
途中に声を掛けてくる者もいたけど
脇目も振らず歩いて来たよ
....
ひとりぼっちの女の子
机に前髪が落ちそうだ
あともう少し
針先ほどで届かないあなたの言葉のように
寂しさが髪の先に
しずくをつくっている
秋の薄日が 山の稜線にも
乗り捨てられた車の ....
あなたは、それじゃ駄目
少しばかり良いことが起こっても
それを怖れる
また悪いことが起こるのではないかと
怖れて
良いことの芽を摘んで
しまおうとする
もう十分に
....
朝起きて お天気がいいと
布団を干そうと 張り切ってしまう
ワイドショーに 好きなタレントが出ていたら
めっちゃ嬉しくて 一日中ハイな気分
クッキーと紅茶で 午後のティータイム
仕事と ....
A
枯れ葉が 裏も表も見せながら落ちて
そのうち葉脈だけになり
葉脈の下では 貴族のようなおももちで
うずくまっている それは わたし
B
独りきりの夜 ちいさく もりの ....
透き通ったグラスに
白く砕けた貝殻を入れる
カラカラと乾いた音が
私の耳を潤す
グラスに耳を当てれば
澄んだ音色が
脳天から足の爪先まで
私の体を支配する
あなたは恥ず ....
カーテンの陰に隠れたゴブリンを一度見たと云ふのんきな妹
口の中飴転がしては運命の出会ひを望むチェルシーの男
藍影に
月顔の城
黄か
枯れたヒヤシンス
重力に揺られ
片目で通す
針と糸は
鼻唄の彼方
指折り数える
次元の先に
とまる虫
4.51光年の旅を終え
安らかに
生きは途絶える ....
雨がよろいをとかす
ぴしり 心がひび割れる
雨の中歩いているのは
まるで自分ひとりみたいに
傘は
シェルターのように隠す
それぞれの顔を
背景を
雨はどこからきたんだろう
....
あへあへとあへ声あげてアレを出しアレもう終わりあれれあへなし
ふつつかに二日続けて二日酔ひふらつき歩き普通でない日
アリンコがアリガトウなる挨拶しオレはアリかと在りし日思ひ
寝たけれ ....
夢の中で誰かの手が伸びてきて
グルグルグルグル
ねじまわしの音
目が覚めて
鞄を持ちながら
あっちの会社こっちの会社
くるくるくるくる
回って回ってときたま鞄を叩いてチャ ....
111010
花電車がやってくる日に
チョー簡潔な祝いのお品
チョコレートのパイを焼く
暖かいうちに運ぶんだ
横断歩道の先にある
プラットフォームには人 ....
無数行列ファクシミリ白紙吐く四月
滔々と糖度計りの白亜紀子
林檎飛語次女長女化石化姉妹
跳ね車三女を斬首生まれながら老婆
カンカンと鐘打ち鳴らしゴルゴンの首
満月のせいで
胸元に口づけしたい
それから背中に手をまわして
背筋をなぞりたい
たくさん言いたい
たくさん抱きしめられたい
その数年分の星の数だけ
だいだい色の満月
あたたかさ ....
1997年東京都港区
写真の題名はただそれだけだった
あの頃東京に住んでいた
写真に切り取られた街
あの頃の自分の
横顔や肩を幻視していた
清純だったけれど
....
十五夜は陳腐な満月だった
十三夜のいびつさのほうが
なん倍も美しいフォルムだった
ひとはひとに
求め過ぎる生き物だ
それもたぶん
何かの物まねだろう
....
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