蠍座の夜明け ☆
atsuchan69

沙漠。人たる飛沫の色と喘ぐ口
そして些少の水、忽ち陽も声なき砂に埋もれ
凛として立ちつづけた女の淡い影
匂い燻る、榴弾の転がる塹壕を後に

夜の静寂が痩せた躯(むくろ)を晒して
番いの命、その片割れが音もなく地に伏し
手負いの兵士が今また一人、息絶えて
死へと、別れも告げぬまま急ぎゆく

 握りしめた手に残した、認識票の記号。

  在れ等は、やがて朽ちたる骨と肉
  我ぞ、さも逝くべき烏合のひとり
  列の最前に銃をかまえては、
  静やかに、報復を叶える引金へと

 憎むべき標的を狙い、刹那に撃つ――

唯、煌くウェヌスの星へ
笑みし、彼方を望む暁に崩れて



自由詩 蠍座の夜明け ☆ Copyright atsuchan69 2009-01-17 18:20:27
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