序章
薄くけむる霧のほさきが、揺れている。
墨を散らかしながら、配列されて褐色の顔をした、
巨木の群を潜ると、
わたしは、使い古された貨幣のような森が、度々、空に向か ....
誰にも見られたくないから
急いで家に帰った
母さんが心配そうに声をかけた
でも
無視して階段を上がって行った
ドアノブをまわした
中には私だけの世界があった
そこにあるベットに滑 ....
二月のはじめに、
菜の花が咲いていた
異常気象と言ってしまえば
それまでだけど
咲く花を見てかなしむのではなく
共に生きる命と、尊ぼう
人間だけにふりかかるんじゃない
この星に生きるす ....
ペニーロイヤルティーに
ネガティブクリープを入れて
混ぜて混ぜて飲んでみれば
十代の魂の香り
ごめんね
色々と
全部ごめんね
ハート型の箱を置いていくから
遠くに行くから ....
オレンジ色に染まる公園で
僕はひとりかくれんぼうをする
ぞうさんのすべり台の上で
数を百までかぞえても
僕を探しに来る子はだあれもいない
風が気まぐれに揺らすぶらんこの
長くのびた ....
ポケットの中で粉々に砕け散ったビスケットを
乾燥した指で摘んで口に運んだ
解けたチョコチップが指に絡んで
煙草のフィルターまでベトベトになった
お前がくれたチョコチップビスケット
これで ....
君の街で喫茶店を開いてから八年が経つ
今年も染井吉野が色鮮やかに咲き乱れる
桜色に滲むトンネルを通って君に会いに行くよ
今までの経験を基にして書いた詩で賞を貰ったよ
今度詩集が出るん ....
抱きしめて
あたしがあたしでいられるように
ちいさな子どもみたいに
あやして
ぎゅうぎゅうでしんじゃいたいよ
息ができなくなる
圧迫じゃなくてせつなさで
考えただけでしあわせ
....
嘘を 全て偽りと決め付けてしまわないで
貴方のためにつかれた嘘が
貴方を 今も 守り続けている
ほら ごらん
その手から伸びる指が 人を守ることを望んでいる
望ませたのが何か 思い出 ....
君の街へ白のバスに乗って病院へ行く
君の街は僕の乗っているバスを最後に閉じられる
僕は病状が悪化し 入院することに決まった
喫茶店のバイトも辞めた 詩を書くこともやめたのだ
氷でコー ....
彼女は意識が戻らないままだった
季節は夏を通り越して秋になっていた
生き物達は冬に備えて食料を蓄え
永い眠りに就く準備をしていた
僕は情緒不安定になっていた
彼女のことを思う度
....
花の咲いた間だけ
とげに触れぬように
見張るように透明なコップに
移し変えたのは
空の下で枯れるすべての事から
逃げるためですか
守るためですか
とげよりもおそろしい指で
....
一瞬で恋に落ちたりこの歳までときめき知らず生きて来し吾が
青い月の下で
唇が切れると
錆びた味は生温く
舌先に現実とゆめとの
境目をおしえて
わたしが誰であったか
あなたが誰であったかを
思い出させる
青い月の下で
繰り返されるくち ....
たった一言の失言のせいで
創りあげたい美しい国の
議会はまた空転を続けている
かつての集団就職の金の卵たちが
機械化の波に押され
三高神話に駆逐され
猫もしゃくしも
大学と言 ....
心があるから人間
それを無くすと人形
ならば私は人形
心なんてとっくに無くしちゃったから
もう 戻れないの
それでいる事は楽だもの
人形は悲しまない
人形は傷つかない
....
君が死んでからもう二ヶ月が経つ
僕は病院に行くために若草色のバスに乗る
僕は19歳で喫茶店でバイトをしながら詩を書いている
最近調子がいいんだ
病院の帰りにメールが来て彼女から会わな ....
朝日の射す部屋に久々にお花を飾りました
真っ白な陶器の花瓶にたおやかな薄桃色と深紅
そっけない床にコトリと置くと
たちまち同化し花々は床に咲き乱れます
私は伝うものが涙だと
....
桜色のバスに乗って染井吉野のトンネルを抜けて君の街へ行く
トンネルを通る時花びらが風に乗ってガラスに付く
運転手はいつもワイパーをかけてそれを退ける
君には桜の花びらがよく似合う お ....
ほしいもの
それはお金でもなく
名誉なんかでもない
ほんの小さな手だけでいい
温かみのある誰かの手
ありがとうと
軽く振ってくれる手
がんばってと
応援してくれる手
大丈夫だよと ....
一つ一つの過去というピースは
あなたのジグソーパズルに
必要なかったのかもしれない
でも 少しでも穴が開いていたら
それはあなたではなかった
たとえそのピースの色が
....
鼻毛出てるよと言われた。
まあいずれにしろ出ていたので善しとした。
体調の悪そうな亀みたいと言われた。
まあいずれにしろ亀は好きなので善しとした。
あなたっていつも煙草吸ってるねと言わ ....
きっとだれよりも近くにいたって
見えないんだ
ほんとは君の考えを
手に取るようにわかりたい
ボクも透明になって
全部透けてしまえばいい
そうしたらきっと
恐いことなんてないだ ....
満たされた月が
静まる夜に息をかけ
澄みわたる気配は
、まるで水の中
地に影おく木々の枝先は
水草のように揺らめきたって
浮かびあがる山の稜線で
青さを図る
私は膝をかかえ
天を ....
ここからは見えぬところで太陽がノヴァでもしたのか月が明るい
地上のみならずはるかな高みから真空気圏貫き通して
月影とは月の光のことでした足元に種々ものの輪郭
真空の中には淡く太陽の側へと伸び ....
137億年前に生まれた宇宙=時空連続体のまとまりは137億云々歳の誕生日だ
宇宙の外から家族や親戚 友達らが宇宙を取り囲むようにしてお祝いにやって来た
宇宙の外側の世界がどんな色なのかはご想 ....
1. 春
春、あなたは出かけようとする
どこともしらない土地へ
夢見がちなあしどりで
窓辺から見送る人は
アップルティーを啜り
笑う
暗くなってきた
野原に霧が ....
ぼくの色は
何色だろう
鏡なんて
いつでも真実を
写して暮れはしないのだから
確かめられない
ぼくの色は
何色だろう
何色とも交わらない
黒だったらうれしいのだけれど
名古屋から来た君は
動物園通りを抜けて
髪の毛ぼさぼさで
連絡を待つ
ろくでなしの
連絡を待つ
ろくでなしは
その時ある一つのやさしさに抱かれていて
抱いていて ....
あぁ、
お前も なのか
カーテンに包まれるのが
そんなにも
愉快なのか
そんなにも
楽しいのか
娘よ
娘よ、
お前も なのか
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639