やさしき雪にふるえて
たりぽん(大理 奔)


雷鳴に犬が怯える空で
やさしい言葉のように冷たく凍ったものが
老人ばかりの街を無数の宝石で覆い
 (あるいは灼石灰のような骨の粉)
まぶしく結晶に閉じこめる

今だけはうつくしいだろう
熱いものに融かされて
泥だらけになるまでは

  製紙工場の煙突の煙だって
  (あの方角はまちがいない、工場だよ)
  海にむかってなびいたまま
  おだやかにやさしく、冷たく凍えて

なのに
雷が雪を呼ぶのだ
激しく音速で雲を裂きながら
暗灰色の悪夢のような空で
青白く叫び
生きている奴は居ないかと
雷が雪を叫ぶのだ

美しいばかりで冷たく残酷な
無数のやさしい言葉
溶かされながら泥になっていく
砂のようなほんとう

  まどのそとは、うつくしい世界だ
  びょうどうでかくさのない
  まっしろな世界だ

怯える犬の心音を聞きながら
小さな温もりと逃げ込むベットの中
ふるえる、ふるえている
歯ぎしりのようにふるえている

  (あの方角はまちがいない、工場だよ)
  (あるいは灼石灰のような骨の粉)



自由詩 やさしき雪にふるえて Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-01-13 00:43:29
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