できれば月に還りたい
できれば土に還りたい
犬の鼻っつらに広い夜
人工衛星お尻を見せて
できれば月に還りたい
できれば土に還りたい
指さきには赤ちゃんの匂いが
....
きみとじゃんけんして
どっちが勝ったってかんけいない
だれかがやらなければならない
きみを愛した代償なんて欲しくはない
ぼくたちは証券なんてあてにしてはいないんだ
まっさらな後悔なん ....
爪の伸びた人差し指で
ぐりぐり
肉の孔を掘る
肉の孔に
滴る体液をこぼす
肉のあなから
何かが生えてくる
草のような、
毛のような何か。
何かは形になって ....
辺境とは文明のセンターではないところ
ひじょうに身勝手な定義とおもう
一律の価値観でかたられるが
離島にもひとは生きている
あるいはかれらには
シンプルで必要なもの以外もたない自由が ....
その虫は
どこからともなく現れて
花に潜り込んで喰っている
払い落そうとしても
逃げもせず
しがみついて
貪り喰っているので
憎らしい
しかもとても醜い虫で
気持ちが悪い
その虫の ....
ぽっかりお月さま
今夜は月明かり
暖かい風が吹いてきた
ブロック塀の上に猫がいる
ゴミ置き場に猫がいる
駐車している自動車の底にも
猫が潜んでいた
ニャア――
真夜中は猫 ....
かしましいねェ。
ひとが気持ち良くうつらうつらしてたッてのに。
あたしは、よっこらせッと起き上がり上の階を覗いてみた。
幼い姉弟が鬼ごっこをしていた。
椅子を借りて子供たちの甲高い笑い声を聞い ....
きれいな心は何処ですか
魚も河童も住みませんか
七色の嘘が必要ですか
薄めた毒で酔いますか
澄んだ瞳は悲しいですか
焼かれる人と笑う人
澄んだ空ほど悲しいですね
永久と泡沫が近すぎて ....
わたしの家では
年中花を咲かせています
旱天の続く夏の日も
雪に埋もれる冬の日も
花はたくさん咲いていて
やっと花です
光に満ちた庭で 花壇で
お互いにおしゃべりしているようで
風 ....
誰にも見られたくないものを
何故、あなたは見ようとするのか
誰にも言われたくないことを
何故、あなたは言おうとするのか
誰にも感じられないことを
何故、あなたは感じようとするのか ....
{引用=あの赤い大きなやつを昔は支那では{ルビ火=くゎ}と云ったんですよ。
──────宮沢賢治『土神と狐』}
{引用=寒蝉敗柳に鳴き大火西に向かひて流るる秋のはじめになりければ
....
斑入りの朝顔の葉
白い斑
子供の頃は病気の葉だと思っていた
今では朝顔の個性であると想っている
今では斑のアクセントに自然の美を感じる様になった
斑入りの朝顔の葉
不効率な自然の葉 ....
あなたは 年老いた家の姿を見たことがあるか
台所からは 骨と皮だけになった皮膚の隙間から
食器と血が 毎日滑り落ちて死ぬ音
骸骨のような運転手になった父が
赤信号のまま 車を通 ....
今日も同じ場所で立ち止まれば
聞こえて来る 母の明るい声
「あんたはヤクルトが大好きでね、
お風呂上がりに必ず一本飲まないと寝てくれなかった。
ある時買い置きがなくなっちゃった時があっ ....
きれいなものは とおくにあるから きれいと
ちかくになったら いやなところが みえてくると
ごちゅうこく してくれた ひとがいたけれど
あなたは ちかくになっても きれいでした
あなたはつ ....
鳴かぬなら 翼で示せ ホトトギス
空を睨んで 星を黙らせ
鳴かぬから 翼を広げた ホトトギス
温もり手放し 愛を求めた
鳴かぬけど 月夜に泣いた ホトトギス
かつての遠き 梅の実 想 ....
とにかく頑張る気だった
父を棺に入れる時も
親戚の人達と共に
ぐにゃりと 固定できない父に
白い旅装束を着せて
和尚様の教えに従い
とにかく 無事に弔いたかった
和尚様が 小学に入 ....
『鋏』
月が、
夜に噛まれる。
欠けていく姿は
溶けて海となった
残り少ない流氷
その上に、
この足は立つ
諸手は木の柱に括られて
身動きができない。
足 ....
私は私の中の強い欲望を自覚した
私は偽者になりたくない
黒いゴミ袋の偽のカラスがまるでカラスの様に動く
偽者には自分の意思はあるのか
真似には自分の意思はあるが
偽者は誰かに仕立て上げられ
本当 ....
夢の成分が星ひとかけらに相当するとしても
幸せな豊穣には私はもう生きていないかも知れない
と私は手の沈む先の海に密告しなくてはならない
ただ生きているってことは私が海であることだから
まだしも ....
夏にさよならを
今年は雨が連なりますね。雷師も人格が変わってきたようです。
と、お天気お姉さんが言っていました。
それはそれで構いません。
カレンダーを丸めたような手紙をバトンにして
....
髪の長い不思議と柔らかい表情を湛えた男は言った
殺したい
初めての感覚だった
スキンヘッドのいつも顔を歪めている男は言った
殺されたい
ある日何の前ぶれもなくそう思った
僕達に共通 ....
心細さを擽る風が
お腹の底を吹いたかと思うと
今朝からは
おびただしい数の赤い蜻蛉が
突然現れたにしては
脅威的な確率の高さで
ペアを組み
次々に風を横ぎっていく
二匹ずつきちんと ....
『腕』 あおい満月
しかくいまちの
しかくいまどから
しかくいそらをみている。
陽炎の向こう側を
車が走る
人々はアクセサリになって
街の腕を滑っていく ....
夏の陽射し
猫の影くっきり
耳をぴーんと立て
猫の影くっきり
二匹の影が重なり合う
世界中の地面や壁に
夏の陽射し
猫の影くっきり
尻尾をぴーんと立て
....
突然の夕立が
アスファルトに湯気を立てて
逃げ込んだ バス停の屋根
あたしはスカートを拭いていた
飛び込んできた
雷の音と いっしょに
きみの白いカッターシャツ
どきどき ....
星がない夜空で
遠く昔に君が歩いたはずの
もう見えない足跡でさえも
まだアスファルトには
小さな熱としてこもっていて
切ない夏の夜に
孤独な月が隠れながら
白夜について
君のとても ....
美・サイレントをききながら、口パクを真似てみる
「愛が欲しい」とか「すべてが好き」なんてちがうよなと思いつつ
こりもせず、もう一度、真似てみる
*YouTube 美・サ ....
虫かごがなかったので
捕まえた一匹の蜩を
膝の中でかいだしたのは二日前
膝の構造のなにがよかったのか
膝の中で蜩は、よくないたのだった
スタバでコ−ヒ ....
顔のない世界を
ゆっくりあるいてゆく君を
ぼくは呼び止めて
お茶に誘ったんだ
言葉が伝わらないままに恋をし
手をにぎらないままに
ベッドに誘ったんだ
きみは買い物袋をさげて
と ....
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