はじめて
こころのなかに
さいた
たんぽぽのはな
かぜにからだを
ばらまいて
ぶんしのように
げんしのように
そりゅうしのように
たびにでるたび
....
昨日もまた
日めくりの暦が一枚消え
昨日を生きた言葉たちが
静かに眠る
昨日一番生きた言葉は
空だった
そこには故郷がいた
忘れていた思い出が
空の中に浮かんでいた
みんな幸せそ ....
メッキで金色にぬられたボタンが
雪の中に落ちていた
ボタンの周囲には
動物の足跡が転がっていて
灰色に溶けた雪が
鉄を鳴らす音で雪自身を撹拌していた高音も重低音も抱きしめながら駆け抜けて ....
秘められて
冷ややかな 驟雨に
浄化の断片は 陽性を示す
振幅の激しさは
吉祥の香
雨の甘き 音
又 驟雨 来ぬ
ヒイラギの曲線 美に
閉じ込まれた 世界 雫
垂れて ....
嘘じゃなかった
嘘じゃなかった
嘘じゃなかったんだ
叶うことはなかったけれど
嘘じゃなかった
嘘じゃなかった
嘘じゃなかったんだ
僕はもうすぐなくなるけれど
....
ここだけの話って言うから
僕はここに置いておくつもりだった
あなたの大きな目を信じて
たいして大きくはないと思ってはいたけど
そう言うから
嵐が去って
野原を見渡せば
あそこに
....
道に数々の華が咲いて
水たまりに輪が広がってゆく
外に降る雨は
私の{ルビ心=なか}にも しとしと降る
そんな時は 心も身体も凍える
雨 雨 雨・・ ....
風が
砂の上に言葉を残していく
見えない指先が作り出す
美しい波
足跡を残すこと が
躊躇われる日に
その言葉の意味を知りえたなら
どんなに救われるだろう
....
朝、部屋の窓を開けると
鳥がさえずっている
実はあなた
この鳥ではないですか
朝、食卓につくと
あじの干物がでている
実はあなた
この、あらわに開きにされた
あじではないですか
....
「歪んだ世界」なんて言うけれど
この街は この国は この星は
一体いつから歪んでいるんだ
例えばこの「美しい国」ならば
戦後以降か 明治維新の頃からか
それとも織田信長の登場以来か
更 ....
実家に棲みついた座敷童子は
びっくりするくらいの大食らいで
おかげでうちの家計は
火の車だそうだ
何を思ったか
その座敷童子は
どこから汲んで来たか
大量の水をバケツか ....
子供の頃は空が低くて狭かった
僕が目が悪くてそう見えただけかもしれないが
僕の記憶の中ではいつも同じ空が広がっている
それは鉛色に曇っていて 今にも雨が降りそうで 胸とくっつきそうで圧迫 ....
君はそう太陽のようで
眩しすぎるその笑顔をぼくは直視できない
君はそう月のよう
ぼくが夜を歩きやすいよう
やわらかな優しさをくれる
君はそう地球のよう
あまりにも側 ....
口をつぐみ
問い掛ける
エゴに塗られた詩の序曲
床に灰の心臓
自由を亡くした鳥の眼球
合成され天然を離れた生物の剥製
緑色した血液の奇妙な哭き声
この世の終わりを殺した爪と毒性臓器
....
古びた大学ノート
色褪せたページに
静かに眠る
言葉たち
何年も前に
走り書いた
ほとばしる
想いの数々
作品と呼ぶのには
あまりにも
ふぞろいで
できそ ....
猫が
寝そべっている
にゃーん。
彼らはすごい
まるでかなわない
そのポテンシャルに
その存在価値に
それに比べて私はどうだ
大したこともできず
ぐしゃぐしゃとした ....
わたしの影は
わたしの涙で
水色になりました
わたしがそっと足をつけると
ぴちゃっという音をたてます
わたしはくつをぬいで
服をぬいで
影のなかへ
沈んでいきます
....
夜が季節の名前ならば
今夜は惜春
雷雨が迫る黒雲
まだらに明るい空を映して
海が水銀のように揺れる
指先の温度が融点の
あなたという液体
わたしという液体
いつまでも
満たさ ....
風吹きすさぶ
いちめんたんぼ
古代からつづく広い空
一匹の虫は泳いでいる
とつぜんに
ふしぜんに
屹立し現れる
高層ビルの群れ
一匹の生物すら寄せつけぬ
冷たい石でかためられ ....
夕焼け空の中だった
買い物から帰る途中の道で
少年は子猫に向かって
石を投げていた
少年はすでに泣いていた
ぼくの家では猫は飼えないんだ
小さな声だった
ぼくが悪いんだ
お腹を ....
1
ひかりは、不思議な佇まいをしている。
向かい合うと、わたしを拒絶して、
鮮血のにおいを焚いて、
茨のような白い闇にいざなう。
反対に、背を向ければ、向けるほど、
やわ ....
ぞうさんみたいにやさしい目でいたい
くまさんみたいにふかふかでいたい
かめさんみたいにゆっくりでもいい
きりんさんみたいにながくいたい
そらいそげって
ムチ打たれたら
....
部活に疲れた放課後。
少し重く感じる鞄を左肩にかける。
ペットボトルのお茶で、からからに渇いた喉を潤すと、
いつもと違う道を歩いてみた。
最初に感じたのは、放課後になると、夏の匂いがするよ ....
僕らの靴で踏み荒らされて
黒くなった雪のような ――の送別
歩き辛いほど 積もったものも もうなくて
――だって やっぱりいないんだ
この感情にピリオドを告げる
机の上の花瓶
―― ....
みあげると
君はまた
頂上にいて
ぴかぴか光りながら
もう
そこからおりることしか
考えていない
君は
太陽の冠を
いともあっさりと
ぬぎすてる
なにがいいの?
風 ....
冷えた石段に腰かけ
振り返ると
木々の茂みの向こうに
{ルビ巨=おお}きなH型の下を{ルビ潜=くぐ}り
無数の小さい車が行き交う
横浜ベイブリッジ
( H型の四隅
....
君に会ったら言おうと思ってた
言葉がたくさんあったのに
なんでかなぁ
こうやって目の前にすると
一言も出てこないや
汚い戯れ言や
愛の賛美歌や
気の利いた言い訳や
原稿用紙30枚分ぐら ....
橙の陽に染まる
館の奥の
床に横たえられたわたしの
からだを眺めていて
窓を開けていて
風に踊ろうとするわたしの
ドレスが乱れないように
見張っていて
そこから
流れ出る血が乾き
....
1.I
それは私。
汚くて綺麗で
不恰好で可愛くて…
矛盾した心を抱えているけれど
ある意味では愚かしく
個性的で平凡な人間。
2.哀
それは哀しみ。
心が痛んで
辛くてあえい ....
空の曇った暗い日に
ざわめく森の木々に潜む
五月の怪しい緑の精は
幹から{ルビ朧=おぼろ}な顔を現し
無数の葉を天にひらく
わたしを囲む森に{ルビ佇=たたず}み
ベンチに ....
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