雉子
イナエ


桜の花に誘われて散歩するわたしの行く手の
立ち枯れた葦の叢から飛びだした番い  
ギャッと鳴いて 慌てふためき 灌木の陰に潜る雉子
間違えはしない
登校した私を小学校の玄関で
毎朝迎えてくれた剥製と同じ姿羽色 

人里近くに巣を作り 子育てする雉子が
どうして人から隠れるのだろう

かつては 
桃太郎に自ら志願して鬼退治に出かけたではないか
あの折の仲間の
犬は 人間世界にどっぷり浸かり家族になりすましている
猿は 適度な距離で着いたり離れたり
時には人家の庭に柿や蜜柑を採りに訪れるではないか

人を頼って家禽になったお前の仲間がいるというのに
「焼け野の雉子」の献身的な愛は姿同様美しく
人に親しまれて日本の国鳥になっているというのに

「鳴いて撃たれた」長い歴史が
人を警戒する習性を植えてしまったのか

「出る杭は打たれる」という諺がまかり通った日本
消極性が美徳であったとしても それは過去のこと
さあ その美しさを隠さないで 
柔らかい光に包まれた春の野に出て一緒に遊ぼうよ


自由詩 雉子 Copyright イナエ 2015-04-07 18:40:06
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