ハルノコサメ(とよよんさんとの連詩有り)
こひもともひこ

コサメが降ってきた。波板の上で踊りだしたようで、だんだんうるさくなっていく。
開けていた窓を閉めようとすると踊りがやんだ。どうやら、見られたくないようだ。
大きな風が吹きカーテンを揺らす。たぶんオオザメが通ったのだろう。
そのあと再びコサメたちが踊りだした。さっきより勢いをましたのは、オオザメに見守られているからだろうか。


夜にコサメが降っている
桜のハナを狙っている

ハナは逃げようとビラを散らす
コサメはそれを追いかける

地上につくと
逃げるのも追うのもやめ

コサメの群れの中を
ハナビラが泳ぐ


――そのあと、ハナビラとコサメたちはどうなるの?
いろんなところに流れていくんだ。下水を通り川に合流し海に出るものもいる。
でも、ハナビラはだんだんと小さくなっていき、コサメたちは自分がなくなっていくんだ。

――それは悲しいわね。
でも、春になればまたあえる。

――同じハナビラとコサメが?
同じではないだろうね。
でも、つながりはあるんだよ。

   //
  σ/


今朝はコサメの降る中を子供たちが血だらけになりながら遊んでいたわ。
「平気なのかい?」って訊いたら、「平気さ」だって。

コサメの群れに混じってタケノコめがけて鍬を振るったら、コサメとタケノコ数匹に返し刃が当たったようで紅い飛沫が上がった。
(とよよんさん作)

子供たちが大騒ぎで走ってくる。
「どうしたんだい?」と訊くと、「山に鬼が出たんだって。鍬を持って追いかけてくるって!」といって逃げていった。

コサメたちが慌てた様子でこちらにやってくる。
「どうしたんだい?」と訊くと、「山に鬼が出たんだって。鍬を持って追いかけてくるって!」といって通りすぎた。

もういいかい、まあだだよ。もういいかい、もういいよ。恐る恐る顔を出して、タケノコはあたりをうかがっている。

もういいかい、まあだだよ。もういいかい、もういいよ。代わる代わるツチノコが、辺り一面飛び回る。コサメ混じり。
(とよよんさん作)

「顔を出したら
ドレモコレモ
ミンナクツテヤル」
(参考:石垣りん『シジミ』)

ボク。トンダラ。
ヘビノ眼ヒカッタ。
ボクソレカラ。
忘レチャッタ。
(引用元「青イ花」草野心平 アイデアはとよよんさん)

  ///
 σ/σ


雨の降る中を自転車で進む。
――ねえ、どこにいくの? どこにいくの?
桜たちが追いかけてくる。

「仕事だよ」と邪魔くさそうに答える。
――ねえ、ぼくたちがちっちゃうよ ちっちゃうよ
「賑やかに散りやがれ!」
ペダルを踏み込み、俺は自転車で進む、進む。

――いっちゃったね ちっちゃったね
――ひともこなくなったね いなくなったね
――でも、もうすぐかれらがくるね うねうねくるね
――たくさんたべて はばたいてくね はばたいてくね


自由詩 ハルノコサメ(とよよんさんとの連詩有り) Copyright こひもともひこ 2015-04-10 00:32:36
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