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地下鉄の
甘ったるい渇望を乗り継いでる
どんな嘘も許されるし
どんな事実も みのがされる
そういう街で わたしは
スピードに乗るのをおぼえたのだ
もう来ない誰かの代わりに花を折り 空洞がまた広がっていく
はじめからないものばかりを失って 立ち上がるたびに笑う三月
君がいた夜は
物語のように遠くなってしまって
いくつものビルが建て替わった
なつかしい詩を読み、
ぬるい水を飲み
二足しかない靴を交互に履く
平和な日記を過すうちに
こんなところ ....
雨が降り
雪が降り
涙が降った
あした
みんな帰ってくる
粉々になった生活を
雨が固め
雪が固め
涙が固め
それを踏み固める
さわると
するどくて、
ときど ....
長い眠りのあとで
あれは祈りだった
あれは、
ふるく、弱く、新しく、ふるえて、断固として、長く、みじかく、とおく、ごく近く、ギターのようで、空のようで、波打ち際で、空洞で、退屈で、さわが ....
浅瀬で溺れるわたしたちが
いつか 深く
息をできるように
重いぬかるみを這ってさ
乾いて 乾いて
流した涙が
日々を伝い 夢を伝い
川になったとき
この体がいるのは
優しい ....
輪のカードを読む
望んだことのない種類のやさしさをまえに
わたしは この ふるえが、
なぜなのかわからない
ふるえ、読む
輪のカードに
望んだことのない
種類の
やさしさに
....
額に、頬に、指先、肩に、下腹に、クリームをすり込みながら、世界が嘘になった時のことを考えている。もしくは一時本当だった世界のこと。いま飾ってあるのは、八重咲きの小さいオレンジ色のすかし百合、白に赤 ....
引き潮に見惚れているうちに暗くなり
帰り路を失います
前後どころか
上下の区別も無くなって
次第に夢も壊れます
どんなに愛してもだめです
もう少し もう少し
と
思っている ....
朝
僕たちの半分は 燃え残り
がらくたを 集めはじめた
不完全なまま 笑ったり
食べたり 愛した
頂点の すこしだけ手前で
自我をもった がらくたが
誰かのかわりに 泣きはじめた ....
詩のとき 心は旅をする
命からとおくはなれて
あるものの全てにこまかくなってよりそう
愛などは 手に負えなくて
途方にくれた
炎はもう あかるすぎて
いられなかった
はじめて ....
いつまでも思い出す
自分だけちがう靴を履いてきたような所在なさ
裏庭のベンチがささくれ立っていたこと
ひみつね、と打ち明けられるいくつもの公然
嘘ですらない告白
知らない人間ばかり笑 ....
幸福でいることを、なにかに当てはめようとしてしまう。渇いている理由を知るのとおなじに、幸福である理由を、幸福でいてもいい理由を。階段を降りていく夢を見て、涙の乾いてまぶたが開けられないで朝。ま ....
ごはんのにおいがするから帰るよ
造花だらけの無菌部屋
ねえでも
ここがわたしたちの家だけど?
去年とおととしのカレンダー
うーんだけどかえらなきゃ
裏返しのくつ下を
拾わなくちゃ ....
せまい壁と壁のあいだを行き来するボール、失速しながら遠のいていく。
そのようにして日々が行く、茂った葉も黄色く力尽きる。
もう二度と会わないと決めた人には簡単に遭遇してしまうのに、続けようとも ....
花の匂い まちの匂い 文の匂い
というものに
あこがれて 今でも
色色なものに なってみますが
わたしには今でも
秋の夕暮の忘れもの、
雨ざらしの古い花瓶、
それとも何も書かれて ....
語られた言葉のあとで浮きあがる 静寂 目線 寂しい体
ふれられてふれてなお泳ぐ肌 これより遠くに行けはしないね
ため息の重さで溢れる夜を抱き
わたしよ明日こそ私であれ
なにか言うときに
だれも傷つけないっていうのは
(ご存知でしょうが)結構難しいもんです
から、これからあなたは傷つきます。あなたもです
あなたも、あなたも、あなたも。いいですね?
( ....
長い長い光のすじを
たどる気持であるいていた
だれかが声をあげる
これはただの線だ
白く書かれた 一本の ただの
もう少しいけばわかる
別のだれかが言う
のろのろと足はうごいてい ....
いずれも夢のような日々を生活した
よい夢も、わるい夢も、正夢も
芳しい花も、熱い風も、つめたい雨も
さまざまな深さの傷も
重たくなり軽くなりする身体も
やって来ては去っていく
....
雨の日、唐突に、思い出すように、
ありもしないことを、
考えている、
そのとき、過去と未来は同義
水たまりを、世界だと思って
生きた
愛のなかを、海のように思って
干上がっていく ....
時間はもう
どこをさがしても全然なかった
暗やみと光を混ぜた夜、
テープで仕切られた自由
韻を踏むためだけにつくられた詩
の、
どこにも、なにもなかった
なにもなかった
そ ....
わたしたちの花がまだ眠っている早い早い午前、空が朝を始めようとしているところへ、ふいに思い出がやってくる。あの時わたしたち泳げないいるかだったよね、とか、くじいた足をおそろいのバンダナで包んだよね ....
冷やした部屋で
濡れた画面を見ている
夏の前日
みるつもりでいた夢
古い冷蔵庫、凍りかけたビール
物事の手前で
君が微笑んでいます
夏の前日
それは
訪れるはずのない ....
このまっすぐな夜の向こうに
蝶の朝がある
こまかな傷の大小に値札をつける
この波を営みと受け入れられず
はねのないものは歩き、
足のないものは泳ぎ、
背びれのないものは飛び、
....
仕事の日数を減らし、眠る時間を増やして、過ごしている。
朝に夕にお湯を沸かして飲んで、家でも仕事場でも花瓶を洗う。
花瓶はいつも清潔に保たねばならない。交わした約束を守らねばならないの ....
境目が淘汰されて
すべてはグラデーションになる
曖昧さは受け入れられ
器は広く広く浅くなる
明るくなりすぎた夜のように
影はぼんやりと甘く
この輪郭を脱ぐ術を
探している
....
風や街、ビル、文字、感情はあり、
選ばれたものと、選ばれていないものが
ひと筋の線で隔てられる今日、
たしかに時間も空間も存在し、
ざらざらと触れることさえ出来る
空の自動販売機、乾 ....
かたまりを割ってほぐしてねばついて大事みたいに半分こした
愛とか愛じゃないとかで争った夜ひとつのかたまりで寝た
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