マーマレードの空瓶に挿した
残り物のクレソンに
小さな蕾がついたと
わざわざ見せにくる君
これから何年経っても
君の世界に吹く風は
遊歩道のささやかな花を香らせ
名も知らぬ草を撫 ....
脊髄に刺し染みるような
氷雨の降る土曜日
灰色のレインコートを着た老婆が
僕の口に腕を突っ込み
ずるずるずるずると
一頭の小熊を引き摺り出した
....
転がり
笑いにおよぐ手は
あなたの汀(みぎわ)に触れただろうか
いつしか愛は 大きく迂回する
あなたの的は
わたしたちの的であり
なのに欲しがるわたしの瞳はもろく
瑞々しい
....
世界は角を曲がり
電波塔をつなぐ縁
押し寄せる流氷の高さを海豹は気にもしない
待ちきれず買い物に奔走するひと
目配りは喪主の名を通り過ぎて
気圧の変化に注意は保たれる
....
何度でも生き返るのが救世主のことばなら
きみは何度でも死ななければならない
干上がった砂漠の水脈をひきつれて
再生を誓うつぶやきを毒と飲み干す
血液の
、その苦しみは刻一刻と脊 ....
1月 {ルビ梵天=ブラフマー}は金剛乗に還る
すると涸れ沢の畔に半裸を露わし
年若の尼が五弦の琵琶に弦を張る
きつうきつうに張るのだから
絹の撚が奏でるほどに
押えの指の血に染まる
2月 ....
「大食いな赤ん坊へのお仕置き」
─成長過程で必要な、あなたの分裂と
判断不能な、わたしの分裂事項。
「ゆりかごの質量、ワタシの室量」
横棒を棒に振ってしまったのですから
もうい ....
あながち
間違いでもなさそうな
傾斜みち
おおきく
眼を閉じたまま
ひとつ、ひとつ、を
よく噛み砕いたら
背中に負うのは
真っ赤な約束
瓜二つ、
みたい
....
飽和状態の頭の中から
言葉を紡いでいく
言葉と言葉が出会う時
私の心が表れだす
ワクワクする瞬間
自分のことをちっとも
わかっていない私が
わかろうとすること
それがその言 ....
春は
おめかしした
君たちと一緒に
記念写真
夏は
ビニールプール
膨らませて
水遊び
秋は
枯れ葉掃きした後
焚き火前で
焼き芋頬張り
冬は
白い足跡つけて
....
この街には電波塔
巨大電波塔が聳える
この街の灰色の空に
何百年も前からある
天に向かって聳える塔
国芳の巨大な塔に
また、塔が現れる
その塔を見るため
無粋な見物人のために押上が ....
あなたはわたしに間に合わないよ
ずっと
たぶん
それじゃ間にあわないよ
ほら靴ひもが
ほどけてるよ
笑ったり
泣いたり
してごらん
怒ったり
妬んだりしてごらん
....
ベランダに並んだ鉢植 ベッドにはただしく冷えた子どもがふたり
両手のひらから 掬った砂糖をこぼすように
太陽を背中にしょって 始発を待つように
便りが届く
穏やかな風が吹き
背骨がふるえる
思わせぶりを横にやること
厚みを保つ ....
さみしいわけじゃないけれど、
なんとなく、
だれかに、会いたい、
だれか、知らない人と、
知り合いたい気分になった。
でも、じつは、
ただの性欲なのかもしれない。
何軒か、
デリに電話 ....
この街の雪はべったり重く
ささやきが凍るほど冷酷だ
あなたは出てゆき
わたしはここにいる
あなたのことを愛していたらよかったね
あなたがわたしを愛してたみたいに
しらない人びと ....
今日
おおぜいの人とすれ違った
夕暮れ
みんなみんな
ベクトルがある
私とは無関係の
距離
方角
自らの影踏みで
月を踏んだ
地球が
褐色の月
息苦しさの
赤 ....
ねむっているとき
ふとんとかさなりあっている
わたしはふとんになっている
あたたかくてきもちいい
わたしとふとんはあたためあう
もうここからはでたくない
わたしのまるまったからだ
ひ ....
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からっぽな心 / 一日の始まりに駅のホームで
からっぽな心は何で量ればいいのか
朝日 ....
とどくきみ電話の声にねころんで
正しく蒔いたわたしの母音
はじまりの予感にまみれ匂い立つ
いとおしい小さな過ちよ
今日もやっぱり晴れたよねわたしたち
多摩一番の ....
赤い砂漠をトボトボと
白いドレスの女は行くよ
背中に担いだ木の十字架は
太陽に焼かれ{ルビ暗の暗=くらのくら}
既に神は干からびたもうた
軽い軽い炭のクロス
....
ガムは
包んで
屑篭へ
煙草は
消して
灰皿へ
服は
畳んで
押入れへ
さて
この感傷
何処へやろ
飲み込んで
腹の中に?
揉み消して
道の端 ....
夜明けに向かい
風は吹いているか
夜の
深淵に向かい
風は吹いてはいまいか
晴天に向かい
蒼穹に向かい
風は吹いているか
雨雲に向かい
霹靂に向かい
風は吹いて ....
このままでは
薄黄緑色の祭典までに間に合わない。
「複眼の君主は、儀式的な世迷言」
果汁は、少しばかり粘り気があるほうが
蠅の眼を欺けるのです。
「悪意のある草と、惑わしの甘美な ....
もう
ゆっくり
静かに
時を
過ごそうと
いたの
何故
何故
風が吹き
木々が揺れ
水面が
波打つの
何故
何故
一滴の ....
つぼみの色が明るくなるとき
もうすぐだよって
私が言う
みどり色がうすくなるとき
もうすぐだよって
季節の風が話している
明るい色が
はなびらから生まれるとき
私が咲く
....
1
性細胞が減数分裂するとき
一対の染色体はランダムに遺伝子を混ぜる
個人を規定していた遺伝子の組み合わせが
千差万別となる
劣性遺伝が突然発現するチャンスだ
隔世遺伝と呼ばれたりして ....
透明なせせらぎが遥か遠くで
岩の間をくぐり抜けてゆくのが
聴こえてきそうな三月の朝
いたずらな顔をして君が
せがむみたいに背伸びをしたから
僕たちは口づけをか ....
わたしだって一生懸命走っているのに
なんか自分だけ後ろへひっぱられてる感覚に囚われてしまって
一緒に走ろうねって誓った友達の背中が
だんだんと小さく小さくなってゆく
※
はじ ....
12月ともなれば街はいやいやに浄化されて、今年楽しかったひとや哀しみに嗚咽したひと、苦しさからいまだに便秘気味なひとたち
」想定内に収まりますから と、わけのわからない押し売りの陰謀が一気に ....
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