すべてのおすすめ
  ぬるい肩ら、
  いまは{ルビ抱=いだ}きあう
  あたたかな那由多に


  {ルビ細雪=ささめゆき}、
  うす燈り
  耳のなかの馬にのり
  ぬるい肩、はなれていく ....
割れた瓶から
歌が こぼれた
はてしない青をうつし
暗闇をふたつに切り裂く
ひとつの歌が今こぼれた
まだ名前はついていない
言葉さえ、まだ追いつけない
 ....
  夢のかこいは
  {ルビ菖蒲=しょうぶ}のながい影に飾られ
  また、{ルビ蕩=とろ}けた夢のよう
  わたしたちは 遊ぶ
  いつまでもあそぶ
  るらる、るる
  りりる  ....
  辛抱づよく 壁を背にし
  紺いろの布巾をみつめている
  とじた唇のなかで くちづけの記憶が
  解かれた積荷のようにころがっているが
  やがて堰き止められる
  いずれ壊れ ....
  裸の男が
  岩をかかえ
  緑色になっていく


  渚は
  ほそく長く続く
  多くの声や
  魂にまみれては
  かなしむ
  把手こそついていたが
  その壁は 扉ではなかった
  今のわたしにはそれがわかる
  たわわな果実のように 美しい 直方体の
  寂寥だけが 向こう側の 壁際に置かれている

 ....
  玩具は既に壊れており
  木張りの床に見棄てられていた
  夕陽から親しげな香りが溢れ、
  窓辺に置いた花瓶に纏わりつく
  私たちは 壊れていた 跡形もなく
  {ルビ抑=そ ....
  山道の草木を横切る
  ギンヤンマの蒼い複眼に
  私たちの過去が沈んでおり
  どうやら今も放熱を続けている
  遠く 手放してしまったものも
  未だ近く 触れられるものも
 ....
  わたしは座る
  青空がゆれている
  かなしいという言葉がなぜか
  小さな虫みたいに空気をうめていく


  なつかしい歌を思いだして
  気持ちだけが静かになっていく
 ....
  天使は窓の縁に座り
  少しずつ透き通り 外の闇と
  見分けがつかなくなってしまった……
  バッハの遺した鮮やかなコラールが
  床の木目に 僅かな痕をのこした{ルビ後=のち} ....
  青い葉が何枚か
  あなたの肩に貼り付いている
  後れ毛に似た愛おしい季節
  小石たちが燻らすモノクロームの薫り


  雨が降りそうなことは 少し前から
  私にだって ....
  驚くに値しない
  あなたの指のなかに
  古い町がひとつ埋まっていようが


  青い部屋でわたしは 静かなチーズを齧る
  散らばっていた 丸い 悲しみの粒を
  一列に ....
  緋色の籠は いつも
  夜がくるまで あなたの
  六畳の寝室に置かれていた
  房をなした影をひとつひとつ掻き分け
  大なり小なりの
  扉がついたところでしか
  きくこ ....
  きみに
  話しかけることができない
  脈をうつこめかみに手をふれて
  ひとつめの言葉をさがしているのに
  どうしても話しかけることができない
  うまれて初めての夜がきた ....
  {ルビ雷=いかずち}が 遠くの空に
  かなしい光をふるわせた
  あなたの膝に置かれていた
  羊の彫刻は床に落ちた



  眠りに似た川の聲は
  月明かりとともに  ....
  夕立のなかを
  わたしたちはとおり過ぎる
  云うことがなくなって
  胸のなかをおよいでいた
  魚たちはさっきいなくなって
  あなたの透明な顔がかなしい
  あなたの息 ....
  柄杓の水は
  揺れていた 一つの言葉のように
  だが青い空の深みに俯き
  だが石たちの慎ましい薫りに愕き
  私たちは 黙っていた 私たちは
  長い雨でたわんだ箱に注がれ
  わたしたちの影は混合される
  飛沫は獰猛なひかりを二割ほどふくみ
  素っ気ない白衣などに 付着する 未練がましく
  そして だれもが わたした ....
  あおい瓶が 枯葉の水を噛んで
  斜めにさしていく光が さがしている
  あなたの瞳は 樅木の陰にいて
  微笑っている 葡萄のように
  ああ もっと遠くへいきたかった わたした ....
  うつくしさだけを愛するわけにいかず
  わたしたちは雪をみている
  さくらいろの子供たちがはしり、
  ほほえみと陽の光がまじりあうのを
  胸にふるえを覚えながら わたしたちは ....
  そらのいろはいつしか
  こわれやすいビー玉ににていた


  むらさきの焔をあげる焼却炉の
  そばにたって、あなたは体を温める
  それは遠いところへいくための
  慎ま ....
  明るい部屋に棲む薄暗い老女
  出来損ないの散文に似た服をきて
  皺のよったビニールじみた手には
  何が為拾ったか判らぬ小石を力なく握る
  愛してきた者たちの瞳にもう愛はなく ....
  金魚鉢の水が
  飴色によごれていく
  たくさんの人がおもてを横ぎる
  近所じゅうの家で年の瀬の支度がはじまる
  取り返しのつかないことや
  取り返しのつきそうなことで
 ....
  雨はいつ止むのだろう
  あなたの柔らかな胸のなかへ
  いっぴきの野犬をときはなちたいのに
  この雨はいつになれば止むのだろう
  決意にみちたやさしさよ僕を睨め
  凪より ....
  ひかりが鉄柵をすべりぬけ
  あなたの膝を白くよごした
  煤けた骸だけがあるく目抜通り、
  彼らのうたう寧ろふくよかな夜想曲に
  暫し立ち止まったのだろうか、あなたも
   ....
しろい舟に
あなたの息がかかる
草の影をそっとゆらして
一日がまえにすすんでいく


わたしたちもすすんでいくのだ
かなしいことがどれだけあっても
あなたにはかならずつたえるから

 ....
  半刻ほど前から
  組んでいた指をほどいて
  あなたが落とす銀箔に似た笑み
  ガソリンじみた水溜まりにひとつ、
  爛れたショパンがしゅんと跳ねた
  日もくれているのに
  女の子たちが鬼と遊んでいる
  鬼はわらっているようにみえるが
  ほんとうはぜんぜん笑ってはいない
  むらさきいろの心がわけもなく歯ぎしりをする
   ....
  秋の町は、
  くれないのさざなみ
  思い出はずっと乾いていた
  ポケットのなかの木の葉



  あのひとからはもらい損ねた
  微笑みの匂いがする
  きみと帰る ....
  ボンネットに
  縞模様の葉と夕日がはずむ
  萌えゆく色のストッキングに
  つつまれた腿をにらむ
  どんな味がするのか
  あなたとの愛は
殿上 童さんの草野春心さんおすすめリスト(370)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
nayuta- 草野春心自由詩316-4-10
bin- 草野春心自由詩316-2-28
ukiyo- 草野春心自由詩516-1-3
kitsune- 草野春心自由詩316-1-2
nagisa- 草野春心自由詩315-10-25
把手- 草野春心自由詩515-9-22
玩具- 草野春心自由詩615-9-6
過去- 草野春心自由詩415-7-26
青空- 草野春心自由詩615-7-12
Choral- 草野春心自由詩515-7-4
予感- 草野春心自由詩215-6-13
並べる- 草野春心自由詩16*15-5-23
緋色の籠- 草野春心自由詩315-5-4
話しかけることができない- 草野春心自由詩615-4-3
- 草野春心自由詩415-3-29
夕立のなかを- 草野春心自由詩415-3-28
柄杓- 草野春心自由詩515-3-21
憐憫- 草野春心自由詩515-3-1
葡萄- 草野春心自由詩515-2-12
窓辺- 草野春心自由詩515-1-18
そらのいろ- 草野春心自由詩4+*15-1-17
老女の歌- 草野春心自由詩715-1-9
金魚鉢- 草野春心自由詩314-12-28
雨の歌- 草野春心自由詩714-12-23
空耳- 草野春心自由詩314-12-20
しろい舟- 草野春心自由詩314-11-29
爛れたショパン- 草野春心自由詩914-10-29
鬼と遊ぶ- 草野春心自由詩514-10-23
さざなみ- 草野春心自由詩414-10-12
ボンネット- 草野春心自由詩314-10-4

Home 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する