使者は訪れてくる
静かに深い瞳で訪れてくる
彼が何処から来たのか
何を告げに来たのか知らない
彼も何も語らない
だが何故か私は知っている
彼が使者であることを
彼が語らぬことのうちにこそ ....
犬を連れた二人の男が行き会った
血統書付きの犬を連れた方が自慢を始め もう一方に
「雑種なんか飼うのは時間の無駄だよ」
ああ 好きか嫌いか別として
そんな考え方があってもいいのだろう
もっと ....
会社の帰りに実家に寄り
母を乗せて 病院に行く
入院している父に会うため
一日中 林檎畑で働いた後
母は着替えて 私を待つ
七十歳を超えて 疲れただろうに
駐車場について 歩きながら
....
耳朶が
せかいに
かたりかける。
おまえは、
やさしいか、
やさしくないか
いいえ、
わたしは
やわらかく
固いいきものです
ひらききった
ふところに
....
ぼさぼさの髪で起き上がって
冷蔵庫からグレープフルーツを取り出す
今日は関節が痛い
カーペットは今クリーニングに出してる
蜂蜜色の床にそのまま寝そべって
果実の匂いを嗅ぎながら
窓から ....
夏影を
蛇の身がなぞる
あおじろくつめたく
すべての陽がきえていく
汗が鎖成す、おまえの鎖骨
手を付けないでおこう
自分という作品に
決めつけないでおけば
何にでもなれるだけの、柔らかさが
人の内側には、まだ残っている
手を付けないでおこう
描きかけた自画像に ....
季節をいいあらわそうと思っているうちに
それは過ぎてしまう
足跡と想いはいつのまにか
季節をすり替えて行く
君と金と銀の
スニーカーを交換して
なんか安っぽいねって笑った
僕 ....
華がなければ
覚えてもらえない
名前がなければ
呼んでもらえない
色がなければ
背景にもなれない
嫌ってもらわなければ
記憶にもなれない
でも
生きている
....
埃まみれの10年ものの扇風機は部屋の片隅でいつ発火してやろうかと考えているよ
毎日毎日遅刻ギリギリで飛び出すあの娘
今日だってきっと、足の指で止ボタンを押すんだ
どうしたって10 ....
それぞれの花火で
照らされる君の顔は
表情がコロコロ変わる
笑ったり少し哀しそうだったり
一生懸命写真撮ったり
一瞬を切り取ろうとしてるね
でも少し遅いよ
そんなものより ....
どうも先天性らしいのです
人の心に穴があるのは
入り口は巨大な洞穴のようであったり
縫い針がやっと通るほどのものであったり
それぞれ異なる 奥深さ
それゆえ根付く 闇のまた闇
....
砕かれたもの
傷つけるもの
時代の浪間に
弄ばれて
俄に湧き上る想い
だが全ては白い泡のよう
摩耗して往く
意思 手足
蒼淡く ひと欠片 ....
甘えんぼのシャツに着られている
子供が泣いている
蝙蝠はやっと 暗い棲家から出て
超音波にのって 藍色の虚空を回る
バネ仕掛けの翼で 熱を切って
抱き上げてあげないと
キッチンの窓から するりと
アメーバみたいに ....
ひぐれ ゆるやかなひかり
花火のか遠き子音
あおぐ空で煙りとかくれんぼする月に ああ
そこにおるんね と あいそ笑う
懐かしいね ともに見たあの日の火花は ほんの少しだけ本当だった
無くなった事に気が付いたのは、花火大会の日だった。
いつも財布に入れていた指輪。
付き合って初めて買ったペアリング。
金属アレルギーだから、特別な日以外しなかった ....
古いものは
新しいものと入れ替わる
自然の流れに逆らえない
気持ちも感じ方も変わり始まる
新しい年が始まって動き出す
何の邪魔もなく順調に動き出す
自分が創造すれば
いつでも ....
あれは炎だ
理由も道徳も求めない炎だ
まごうかたなき赤い炎だ
怖れを知らぬ
黒い鳥が炎を目指す
命とはそういうものだ
せめて美しい君を覚えていよう
たった一日でしぼんだ朝顔
....
八月。
私たちの街は。少し空気が、変わる。
街宣車が増える。黒塗りの車。
スピーカーから、流れるテープ。
ツーリストが増える。
大型バイクが空気を、揺らして。
外国人が、増える ....
床に寝そべって
抱きしめてたあなたは
朝になったらゆっくり消えるのね
世界に見つかっちゃいけないから
死んだつもりにしなきゃ
明るい中では生きられないから
夜明けまでの命
....
青い陶器瓦の下に埋もれた
記憶を掘り出してどうなるというのだ
焼け落ちた家の跡の
現実と幻想の交叉した風景の中に
私が立っていたあの日
陽光に照らし出された井戸の
湧き出る水に沈んでい ....
黄昏のような明け方、夜の今際
悲しみに暮れる夕焼けの如き早朝は
空の青と昇る陽の赤が
混ざり合い織り成す紫
また明日、と言って君に背を向けた
その明日が今日だ
染まる雲の柔らか ....
銀河のほとりには
ため息たちが花開いて
湖面は
ゆらめく
つかの間の風のなかに
つかの間の風のそとに
言葉の実る予感、が
色づいて
瞳の奥を波が走る
....
誰かに
あたえられた価値観で
装飾したわたしだった
真実を直視するのは
思っていた以上に
重くて
でも
おかげで
地に足が着いたような気がするよ
自分を知るたび
....
抑えて抑えて
気持ちを抑えて
高ぶったって何も良いこと無いんだから
得るのは終わった後の空虚感
今目の前にいる人も
いつ私にナイフを突き刺すかな
所詮他人だもの
気持ちな ....
雹かな?と思ったけど、シラウオだった
晴れマークの天気予報が
小魚が 朗らかに ピチピチはねて
アスファルトの下で壊死していた イノチも復活
死者だって降ってきて 必死に飛び跳ねて ....
繁みの間から語りかけてくる友だち
幼いころに拾い集めたら
食べるとどもりになるよ
あの子はきっと
食べたんだよ
という子がいた
友だちの中にひとり
どもる子がいた
きみはド ....
いま
ここ
この身に
起こっているコト
きて
ゆく
この世の
トキのほころび
きのうの脳内
傷に気付いて
痛みに至る
明したを超した
時間の軸の ....
いつも午後4時になると
岬に現れるセーラー服
いつも裸足で
そこの海に足だけつけて
泣いてるんだ
どうして 泣いてるか
理由はわからないけど
いつものように綺麗で ....
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