ひとつの夏に
藤原絵理子
小さな青い駅で
列車を待っていた
朝の図書館に出かけて
行き先を調べてきたのに
真鍮のカランに しがみついている
蝉の抜け殻を見つけた瞬間
どこが あたしの行き先なのか
分からなくなってしまった
入道雲を 斜めに見上げた
信じる力は 追憶に似た熾火に
夢見る力は 陽炎の向こうに退いた
もう今日の列車は 来ないのだろう
もう一度最初から 繰り返すルフラン
もう夕闇に 走馬灯が回り始めた
自由詩
ひとつの夏に
Copyright
藤原絵理子
2014-07-26 00:18:32