どこまでも透き通ってゆく緑の世界に僕は立っていた。
遠く小さい窓辺から新緑に映える森が見える。
手を伸ばすとそれは限りなく広がってゆく。
足元には色鮮やかな花々が咲いていた。
憂 ....
君は笑っているのです
この世に何の跡形も無い
存在の事実さえ消え去ろうとしています
その君がここにいてくれる
きっと素晴らしいことに違いありません
君は笑っているのです
決して交わ ....
きみが
ふるさとを
いとしく呼ぶ
あいづ と
づ、にアクセントをおいて
うかうか
夜行バスで
きてしまった
きみが歩いた町を
見たくなってさ
雪の白と温泉の湯気
....
蒼い優しさに触れ
眩暈の空に包まれる
流星の矢に射抜かれて
陶酔の海に沈み行く
絡みつく潮風
生暖かい夏の夕べ
白いシャツに透ける躰
触れる指先に伝わる鼓動
羽化したば ....
耳元に
毛細血管の危うさで
流れゆくのは
私の心臓
体中を駆けめぐる
火照った愛撫が
暴れ出すのを
待っている
水の臭いは排水溝へ捨てた
吐息を微かに白くして
私の心臓は
....
豆腐くらいの冷たさの風
味噌汁ほどの温かさのこころ
まっすぐなこの気持ち
浮かんで浮かんで消えて浮かんで
肩のちから
抜く
飛び降りた
それでもぐちゃ ....
孤独に紐をつけ
手繰り寄せられる
冬の無燈の部屋には
たどり着けない夜
銀の鍵
月光に照らされ
それを不思議そうに
見つめる
雑踏に流され
ふらり ふらり
足跡を辿れば ....
淡々と進む
学校の授業中に
別の先生が入って来て
私を呼んだ
おじいちゃんが死んだと
小声で囁いた
今日の朝も
いつもと同じように
朝ご飯を食べると
洗面所に走り
制服に袖を通 ....
一滴の水を両手で受ける
半開きの瞼に
白々と夜が明け始めた頃
白い月が剥がれ落ちる
半覚醒の壁にもたれかかり
思いがけず振り向けば
通過した秒針が湾曲する
眩しい陽の光が差し込み
脳裏から羊は追い出され ....
今はもう
友達がほしいとは思わない
ひとりがいい
だれかにあわせたり
あわされたりしたくない
なにを想っているのだろう
考えるのは無駄だと知ったから
同じ理由でペットも飼わない
....
漆黒の海に救済の錨を深く沈めたまま
誰の叫びも届かない街と交信しあう星々を眺めている夜
詠み人知らずの歌が都市の残照を吸い込んで
無数に浮遊している昏い海面に海月となって漂う
東京湾を ....
剽窃したい人はそこに居て、夏のセロリをしっぽから齧っている。水は生温い
が金魚鉢の赤い魚たちは夢を追わずきょうも元気だ。猫は背を丸めしっぽりと
寝ている。
猫を抱き ....
むずむず
胸が
むずむず
傷ついているのか
もやもやしているのか
イライラしているのか
むずむず
胸が
むずむず
ただまあはっきりしていること ....
零した涙
ほころんだ笑みが
私をつくった
超えた
山や谷
全ての試練が
私をつくった
受けた愛
憐れみ
恵みが
私をつくった
今
私はどんな
形をしている?
....
つらいの?
私はワタシに聞いてみた
つらい
ワタシは答えた
そっか、ふて寝した?
私は続けた
あまり眠れない
ワタシが言った
眠ったときは、いないよね?
私は問うた
....
明けないはずの
夜が明けて
僕はまたしても
僕の一人を
夜の向こうへ
置き去りにしてきた
明けなかった夜は
もはや異次元
永久に交じわらない
平行線の世界
明けない ....
打ち上げられた六百頭のクジラにナイフを刺した
どうしようもなく大きなかたまり
どうしようもなく身を投げた人の命が溶け込んでいるから
潮の匂いは生の匂いがする
冷えた肉体をプランクトンが分解 ....
ぼくはあのときに逝く
過去のあのときに
あなたが轢かれるそこに
ぼくはあなたを護りに逝く
あなたがいなくなる世界と
いまもあなたがいる世界は
あの日生じたパラレ ....
ある日の地球にわたしは生まれ
ある日の神様は言う「ぷふい!」
ある日の朝はあざやかに咲き
ある日の夜はよろよろよろめく
ある日の空にわたしは笑い
ある日の風に不器用に泣く
ある日の本は知識 ....
すぐれないと思えば見上げれば満ちる月
お前か満月 お前なんか大嫌いだ
私の中に遮月光というベールがないから
たかが黄色い光に過剰に反応する
ハナクソを飛ばしても八つ当たりにもならねぇ
距 ....
人のいない真昼
都市は連帯に悶えていて
都市の配管の末に一滴の誓いが芽生える
真昼の誓いは沙漠へと向かい
死の永続性を砂に誓う
涸れ果てた湖を
野獣の群れが飛び交っていく
無限に ....
三十代の父親が
生まれたばかりの自分の息子を
社宅のマンションの一二階の窓から
投げ落とした
覚せい剤が欲しい実母は
再婚相手の男とつるんで
小学生の娘に
売春をさせていた
....
青の世界が
泡とともに
生れ落ちる八月
海亀の散歩が始まる
ぷかぷかと
海面を漂い
潮の流れに乗る
紺碧の空に
トビウオがダイブし
羅針盤を狂わせる
カモメは
ただ群 ....
悪口をいう人がいる
悪口をいっていたよと教える人がいる
そんなことがあったんだってと広める人がいる
なぜか目が光っている
私もそうなのだろうか
クラス委員はけむたくて
熱血先生はう ....
なにをしてもさむい
ペットボトルにお湯をいれて抱く
あなたの足がすぐそばにあるのを
ちらりと横目でみながら
私たちは今日
小さな境界をみつけた
空仰ぎそっと息吐く
ダイナミックな荒々しさや悲しみは
フランス喜劇に鑿ふるわれて
ひとや自然や建物は小景に繊細に描かれていく
口からこぼれる呻きや
木々が風に鳴る音や
建物がたてる静けさは
....
私達はきょうも鳥の首を絞めて
お釈迦様を雑巾でぬぐっている
星は一面凍りついてしまって
月の香りがしないと鼻をすする
ころっと犬の彫刻が転がって
心臓をノミで打たれた感じ
....
ひかりのつくり方は だれも教えてくれない
水の配合を間違えたことで 白く霞む朝に
きみの浅い微睡みは
錆びたダイヤモンドのように 美しくおちていく
レースをまとった瞳の透過は
いくつかの ....
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