「オーマル。お前の役目は終わった。しばらく休むが良い」
「はい、エランドル様」そして、オーマルは別室へと退いていく。
彼──エランドルの周りには、様々な機械が置かれていた。もちろん、
機械などと ....
二〇二二年三月一日 「伊藤芳博さん」


 伊藤芳博さんから、散文集『考えたこと 1993~2022』を送っていただいた。お齢が近いせいか、共感するところがいくつもありました。 https:// ....
ヨランが驚いたことに、アイソニアの騎士は、
さしてためらうこともなく、その建物の中へと入っていった。
むしろヨランのほうが、(これは罠なのではないか?)と、
思い迷っていた。──ここは慎重を期す ....
「何をしていらっしゃるのです? エランドル様がお待ちです」
オーマルは、二人を手招きする。──そこには、ひとつの建物があった。
それは、アイソニアの騎士も、ヨランも、見たことのない様式のものだった ....
アイソニアの騎士は、その出誕の経歴とは裏腹に、世界を感じる者だったのである。
オーマルに言われるものでもなく、彼は、歴史と世界の乖離を把握していた。
すなわち、理想がこの世界を導くものではないと。 ....
「弦楽四重奏をついうっかり
公園のベンチの上に置き忘れてしまいました
どなたかに拾われてしまったのなら
諦めて下さいな」

銀杏の葉っぱの黄色い成分と
手編みの夕陽を丁寧に織り込んだ
ニ ....
「何をしているのです? わたしは、あなた方をエランドル様へと、
 引き合わせます……」オーマルは、一層低い声で、彼らへと通知した。
「お前の目論見は……分かるつもりだ。しかし……」
アイソニアの ....
「さて、あなた方をお導きいたしましょう。エランドル様の元へ……」
人間体に戻ったオーマルが言った。しかし、アイソニアの騎士とヨランとは無言である。
「あなた方の心は承知いたしました。ですが……、
 ....
コンサートの演目が残り少ないころにぼくは生まれた
終電の網棚にある週刊誌ほどには世間をしらずに
世の中にはどれだけの情報量が飛び交っているのだろう

量子コンピューターの時代に8ビットの
演 ....
「汝が拒絶するのであれば、それも良い。だが、
 それでは、虹の魔法石を与えることはできない。絶対にだ」
「それは、困ります。わたしどもはなんとしても、
 エインスベル様を救わねばならないのです… ....
「そして、エランドル様の目的とは?」と、ヨラン。
「すべての神々を抹殺することだ」ライディンゲルが答える。
「人一人を死に追いやっておいて、さらなる悪に身を染めよと?」
「そうだ。エインスベルに ....
「しかし、あなたはエイミノア様を殺しました」
ヨランも、少なからず怒りに駆られている。それまでヨランは、
ドラゴンたちが、これほどまでに高い知識を有しているとは、
考えていなかった。アイソニアの ....
天使になるための、Angel講座
その1.
「綺麗なものを食べて綺麗な言葉を喋る」
だからローズマリー、カモミール、ベルガモット、タイム、セージ、パ、セリ
わたし
そのうち花言葉しか喋れない ....
  

ゆううつを
日々のふつうの感情と
想うこころに突き刺され、月


空よりも
胸に開いたポケットに
清い雲など詰めこみたい、秋


白い嘘、
吐いて近寄る悲しみを
知 ....
記憶が真っ青に
枯れ果てた木々に降り積もり
目では見えない星くずの上で
だんだん夕暮れてく
抗うすべもないまま冬
空腹で消えていく記憶たちの
理由を探してシャッターを切る

ファミリー ....
「果たしてそうかな? 我らは、汝らの運命を変えることもできる。
 もし望むなら、アースレジェの全てを支配できるであろう。
 だが、我らとて非道な存在ではない。人はドラゴンを敵と見なすが、
 元々 ....
「そうだ。彼は賢者だった。そして、我らが意識共有体である
 ということも、すぐに受け入れた。彼は世界の平穏を望んでいた」
「そして、虹の魔法石をお与えになったのですか?」
「与えたのは我らではな ....
「はい。それは正しく戦いです。しかも、誤りでありました」
「謝罪をする必要はない。我々ドラゴンは、意識共有体である。
 ひとつの個体が、ひとつの意識を持っているわけではない。
 例え一頭が死んで ....
ひからびて
地面に寝そべっている
いまにも死にそうな
一本の草があった

昼は暑くて日影を欲し
夜は寒くて凍えそうな

笑えない、
希望がない、
生きることさえできな ....
「すべてはエランドル様が決めるであろう。
 お前たちが平和を求めるに適さない者たちであれば、
 エランドル様はお前たちを排除する。
 話してごらんなさい、我らが{ルビ長=おさ}ライディンゲルと」 ....
「そこで、汝らにひとつの問いをぶつけましょう」
「それは、何でございますか? オーマル様」
「汝らは、戦争というものを、どう思っている?」
「戦争ですか。それは、国と国との争いであり……利益の分 ....
アイソニアの騎士とエイミノアが剣を納めるとともに、
ドラゴンたちの攻撃は止んだ。──一瞬の静謐、と、それは思われた。
しかし、”オーマル”であった龍が口を開く。
「よく思い留まってくれた、旅人よ ....
スローロリスなに喰ってんるんかな

ちっこいクモ喰ううんかいな

喰われたらどこにいくんかいな

喰い残しの脚が残っとるがな

おれまだ残っとる

この世に
二〇二二年二月一日 「たくさんのぼく」


 ぼくはたくさんのぼくからなっていて、なにごとかを言ったりしたりするときには、そのたくさんのぼくの同意のもとで行われており、ときには少数のぼくの見解を ....
千のドラゴンは、まさにアイソニアの騎士たちに襲いかかろうとしていた。
この時、剣を捨てることとは、まさに己の死を意味する。
(こんなところで死んでたまるか)という思いが、
アイソニアの騎士にもエ ....
アイソニアの騎士は、一頭のドラゴンを斬って捨てた。
「ぎゃっ!」という悲鳴を、オーマルであったドラゴンが上げる。
しかし、「アイソニアの騎士様。騎士様。ここは対話すべきです。
 ここハーレスケイ ....
「人間が……ドラゴンに変わったのか?」アイソニアの騎士は、呆気にとられた。
エイミノアも同様である。剣の柄に手をかけけたま、その光景を呆然と見守る。
ただ一人、盗賊ヨランだけは、それがありうべきも ....
「さあ、ドラゴンたちが来ました」オーマルは上空を見つめて言った。
「龍どもか! 一匹残らず殲滅してくれる!」
アイソニアの騎士は旌旗堂堂と声音を上げた。だが、オーマルは意義を唱える。
「いけませ ....
「なりませぬ。エランドル様とは、対話すべきなのです」と、オーマル。
「話し合いだと? 俺には馴染みのない方法だな。剣以外に、
 何をもって勝敗を決する手段があると言うのだ。俺は力づくでもって、
 ....
ハーレスケイドにおける一都市、クーゲンドルの街中を、
ヨランたち一行はさまよっていた。一都市? ほんとうにそうか?
そこには見慣れない建物、科学時代の遺構とも呼ぶべきものが、立ち並んでいた。
「 ....
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クーゲンドルにて(一)- 朧月夜自由詩1*22-10-15

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