「本当の{ルビ悪党=ヴィラン}でも良い。俺には、なさなくてはいけないことがある」
「それはそれで良いのでしょう。しかし、エインスベル様も、
あなたとは違う『なすべきこと』を抱えていると存じます… ....
クールラントやアースランテといった国家の頸木を逃れること、
それが今アイソニアの騎士のなすべきことだった。
そう。戦争がどう転ぶか、といったことなど問題ではない。
今はイリアスの一身だけを案じて ....
「俺は、祭祀クーラスを葬る」アイソニアの騎士は言った。
イリアスはすでにバルケスの塔にはいない。
オーバ・ニーチェの戦士エイソスからの連絡では、
フランキスとイリアスはアースランテへと向かったと ....
ヤーコンの国家群は十三万の兵士たちを用意していた。
それが、軍国ラゴスへと遠征する。
エイエントスの首領コイノス・ヤー・ガレンは、
祭祀クーラスにクールラントの領土の横断を要請してきた。
....
「イリアス様をそんなにも信頼するのは、おすすめ出来ません」
ヨランは苦渋の言葉をは吐き出すように言った。
「なぜだ? 俺がクールラントの敵だからか?」
「そうではありません」
盗賊ヨランは ....
詰まらない
タワ言を 一人並べて行くだけでも
やはり詩だと
思うようになった。
ノンフィクションの世界
硝子で仕切った空間に
一鉢のサ ....
「今、フランキスとイリアスはアースランテに向かっております」
「アースランテだと? 何がそんな行いを引き寄せるのか?」
「祭祀クーラスは、アースランテとの和平を画策しています」
「まさか! クー ....
憤るアイソニアの騎士を、盗賊ヨランは窘めた。
「騎士様、もしやあなたは祭祀クーラスを殺すつもりですか?」
「奴は、剣の切っ先でいくら八つ裂きにしても足りぬ。
幼いイリアスを誘拐するなど、為政者 ....
アイソニアの騎士は、盗賊ヨランからの情報によって、
イリアスがフランキスの人質にあることを知った。
そして、今はアースランテの国内にいると。
「祭祀クーラスめ、奴は何を考えているのか。
....
エロチックな好奇心と
相性がいい音楽がある
それは時にバッハでも構わない
大切なのは
踊ることだから
何もかも棄て
くるくる回り
捩れ
戻れ
くり返すだけ
....
求めているのは本当は音楽ではなく、無軌道な音の集まりなのかもしれない、それは一般的には、ノイズと呼ばれるようなものかもしれない、でもそれには制約が無いし、衝動について語る手段としては、最適なものだ ....
よい父は、死んだ父だけだ。これが最初の言葉であった。父の死に顔に触れ、わたしの指が読んだ、死んだ父の最初の言葉であった。息を引き取ってしばらくすると、顔面に点字が浮かび上がる。それは、父方の一族に特 ....
夜の風
びゅうびゅうと吹いている
公園でお茶
遠い空に
花火
しばらくして
ドドーン
身体の力が抜けて
この感じ
少し眠たく
次の花火を待っている
遠い空に
花 ....
アスファルトにフライパン置いて
目玉焼き焼けちゃうんですって
た、試してみたい
世間の奇人の評判を?
まぁいいだろう
暑い
しかし人間には耐性がある
こうして暑さに身を慣らせば
ど ....
落ち葉をひろって
たったそれだけのことで
一日が眠りつく
つらい、けれど大切な別離があって
急にころがる
あなたの ひとつぶ
それを どうか嘆かないで
中心に感じて
....
飾る
花を一輪、もう
動かなくなる唇に
飾る
短い一生
不意の熱交換
飾る
フレームいっぱい
ただ ただ笑い
飾る
すべらかな不安
幾何形体
....
インスタント闇屋さん
カップのなかで
泣き虫が笑っている
探し続けなきゃいけないものを
かんたんに手に入れようとしたことは
はっきりと罪だったと思うよ
カードは言う、
失う、だが ....
チーズケーキなんかなかった
ほんとうはトーフ(チーズのせ)だった
ワインじゃないこぶ茶
テーブルの夜を醤油で食べたくなった
痩せた蝙蝠がいて
壁のすき間で乳離れをはじめた
....
キュウリの青さ、私のアホさ
イメージは鮮烈なのだが水分が多い
こぼしてしまった醤油に漬けて
星の明るさ、私の悪さ
かたじけなかった光線を
分裂する前に結んだ
どぶ川でスイミングする ....
人間何も言わなきゃ
かかしと同じで
どこ吹く風と知らんぷり
烏と一緒に笑っている
一生懸命生きて
人を守ったりしない人が
いることが理解できない
俺は
かかしに頼るしかない旧い農夫 ....
鏡に映る自分
ずっと眺めていると
どっちが本当の自分なのか
分からなくなる
誰もが感じる
そんな感覚
私は目を閉じた
残像だけが残る
闇の世界
その向こうの
鏡の中の私は
....
眠れない夜 眠れない夜。
窓の外には月明かりが照らしている。
その一方で、
西の国では大風が吹いている。
雨は来るのか?
雨は来るのか?
期待と不安の狭間で、
心は風鈴のような微 ....
秒針が力なく明日を告げる、残骸だらけの街を抜けていくと海があるはずだ
けれどもあなたは空気の抜けた風船、口づけても口づけてもすうすうと抜けていく
今日のために買った靴を捨て 鞄を捨て 指輪を捨 ....
あの……おれ、夢見るんですよね、海の。ときどき夢のなかに海がでてきて、おれはサーフィンやってるんです。でっかい波にのってると、そのままヒューッて空に飛んでっちゃったり……あと……パイプ・ラインのなか ....
部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教え ....
真夜中に点灯した冷蔵庫の奥であらゆる向きに齧られたチー
ズケーキが発見された\反射的にわたしもかじりつき\素早
く体温を加え咀嚼を開始\ねっとりうっとり\うまれるチー
ズケーキのかがやき ....
ある社会で爆発的に精神病者の数が増えたというなら
何か問われなければならない、どうか
わりといいかげんにできてるんですねぇ、診断というのは
ごめんなさいね、ごめんなさいね
魔女、マジョ ....
みじかい夜が始まったとき
どうすればいいかはわかっていた
どんな夢を見て
どこへ行けばいいかも
その先でかならず
あなたを失うことも
可愛らしい小さな花を
踏みつけそうになった
避けようとした瞬間
目の前に大きな木が現れる
よく見ると
あれ?さっきの花?
まさかと思うが
「それってさぁ!
花が大きくなったって ....
始まれば終わるしかない額の花
箱庭や不在ばかりが生って夕
切り落とす音朝顔の青に似て
行き先のないまま咲くの月下美人
ダチュラダチュラダチュラダチュラ寂しい日
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