若い女性のみずみずしい肢体が
老人の眼を焦がすんだ
見てはいけないのか
いやらしく見ていたら
汚ならしいのか
同じ位の年頃の娘が俺にはいるんだから
恥ずかしくないのかと
自分に言 ....
母が懐かしそうに
思い出話をするとき
私はいつも
「忘れた」って言う
お母さん私
今その話を思い出したくない
なんでだろう
幸せの記憶なのに
なんでだろう
鼻の奥が熱 ....
思い出は
ぼんやりした
景色の中にあるよ
夏の夕暮れの
田舎の電車とか
色あせた自動販売機とか
誰かの白いシャツとか
それはどんな記念日よりも
心に残って消えない
....
風船をふくらましてよ ひとりでに地中海までとんでいくなら
はなれたの それともわたしがはなしたの 派生していくはだかのきおく
さみしさが寄せ集まって血縁の観葉植物(手をつないでて) ....
芝生はいい
寝転がって
僕たちは笑う
とくになにがあったわけでもないのに
ただ笑って
じゃれ合って
空を眺める
雲が何にでも見えた
アイスクリーム
蛇の目
ありえない獣
五本 ....
ここにくると誰かが詩を書いていて嬉しい
音のない部屋の窓からしっとり濡れた庭が見える。
泣き濡れた空に向かって紫陽花が優しく微笑む。
ゆっくりと窓を開けると夏の匂いがした。
季節が移り変わろうとしている。
やがて誰 ....
静寂が平和の象徴にならない
何か焦らされているようだ
一日ただ祈って懺悔して感謝して
動かずにいる私には
することがありそうなのに
何にも見えないのだ
人間でいたい
今日もそう呟 ....
人の世界では
何者かであらねばならない
そして僕は
何者でもない
先生
僕は
患者ではない
信者ではない
生徒ではない
担当ではない
愚民ではない
先に生 ....
「死にたい」
が
唇から零れ落ちる夜は
時間の粘度も高くなり
生きたまま
全身の血が失われていきます
苛立ちすら
霧散する無力感
【本当は】
【死にたくないけど】
【もう】 ....
今日と言う日が
昨日の続編で明日の予告編だとし
ても
脚本は先が読めないし
台本は先が読めてしまう
その表紙は綺麗じゃなくなってるし
捲ってきた頁は
汗と涙
鼻水さえも垂れてい ....
母さん??
と
私が呼ぶと
文節のない文字を
あなたはつぶやく
失ってしまったね
と
私は
悲しいことだけど
自然なことかもしれないね
あなたの
あと何年かで
そこ ....
小雨つづく六月、小さな
悲しみが路傍に立っている
嘘をつかれて、嘘を信じたのは
あなたの涙があまりに寂しげで
それが一番うそっぽいから
しずかに自死しようと歌った
私は私の ....
あじさい柄の、
日傘が咲いています。
梅雨の間の、
晴れの日の、
左目が痛みます。
婉曲な月が浮かんでいる
高橋留美子とつげよしはるが好きで
藤原新也と東京漂流する夢をみる
彼女の方程式は誰も試さないほうがよい
ゆれうごく等記号の
ちっちゃな解決なんてほっとけばよいのだ ....
世界の端っこで
瓦礫にくるまれた
十代の残滓を
山道に捨てられた
切り裂かれたタイヤの
あちこちに散乱した破片を
白紙のノートを
汚すことはもう出来ない
指先のみで
脳味 ....
蜘蛛を決して殺さないこと、幼き夏の夕に僕は僕と約束をした。
左右の小指で指切りをし、指が切れ、僕は8本指の少年となった。
なんでもない 大切な日々ほど
こぼれ落ちた時に自分を彩る色になる
そのことに気づかないで 歩く日々ほど
虚しいものはない
わたしたちは
言語を音以外で発することはできても
心に留め ....
木々の間
木漏れ日のスポットライト
侘びしく佇む牡鹿一頭
ニマリと笑ったような顔の『シシガミ』ではないけれど
彼もまた山の奥深く
帰路に着き
役目を果たすだろう
静寂から微動
....
あなむにしす αναμνήσεις
すべて無くしてしまった
その記憶だけが積もって
ふたりはひとつになって
ひとつはみんなになって
そんな頃のあなむにしす
....
剃刀よりも切れるかみそりあれば
この腐った縁も切り裂けるかな
人間よりも人間らしい人間
それは人間じゃないかもしれないけれどさ
家のそばの立ち木に落ちた雷
父親の怒りを買った拳骨
母親 ....
生家の庭の隅で鬼灯の袋が紅く色づいた
その袋を裂くと中の丸い実も紅く熟れていた
季節になると三人の姉妹は競うように
きように丸い実から中身を抜き取ると空になったそれを口に含んで鳴らした
....
少しも
優しくないんだよ
私は
優しくなれないって
優しく出来ないって
何なの
優しさって努力なの?
違う
優しい人は
何も考えずに優しいんだよ
どうしようもなく優しいんだよ
腹 ....
お母さん
お腹減った
って
言えなかった子供たち
疲れた母親を見て
お腹減った
って
言わなかった子供たち
大人になっても
その優しさで
心が飢えている
....
水色の浴槽に桜の薫りを浮かべて、
、出かけなければならないがべつに焦ることもない
漏だからコロナだからと理由ならいくらでもつくる
磨り硝子の扉には白い染みが瀧に流れ、
、ま ....
世間ではまだまだだというのに、
給付金がぶじ口座に入った。
暑いので冷房入れたら、エアコンが壊れた。
青ざめた紙面の上に文字にできない言葉は蹲って
悲惨に陰った時のこの胸の奥には言葉に出来ない思いがひしめきあったりした
似てるようで寡黙と無口は違うから
普段は陽気で雄弁な人も
時には無言を ....
空を横切る黒い線
手を繋いで風に揺られる
交差点では
信号無視の歩行者が
一人、渡ればまた一人
ヘッドライトの流れに飲み込まれていく
濃紺に反転する手前の空の鱗 ....
疲れたら彼方から来る波に乗れ
ぜんぶ零れ落ちた後に残る零
熱冷めて夢から醒める朝の雨
死ぬ気のない自分は、
死ぬ気で、物事を考えたことがない。
殺す気で白人警官は、黒人男の首を、
殺す気で踏んづけた。
眠らせる気で夢魔は、女の胸を、
眠らせる気で踏んづけた。
....
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