冬の日の山
真白な雪の その彼方に
孤り高く貴女がいる
あの山の
雪を被った樹々の間に立ちあらわれる
男の前に
肉を欲しがり
血を欲しがり
体温を欲しがって
....
亡びたもののあかるさが満ちる夏の庭
もう誰も時刻を読むことのない白い日時計
茂みに囲まれた小さな池
茂みをざわめかせていた風がやむと
あちこちの陰にひそんでいた気配たちが
(それが何の気 ....
夏の雨が降るとやってくるシロイルカ
冷蔵庫から勝手にサーモンなんか出して盗み食いしてる
(いいけど、いいんだけどね。そのために買っといたんだけどね。柿の種もあるよ)
腹が満ちたら、さてっと、やる ....
I
インインと{ルビ頻=しき}り啼く蝉の声、
夏の樹が蝉の声を啼かせている。
頁の端から覗く一枚の古い写真、
少年の頬笑みに指が触れる。
本は閉じられたまま読まれていった……
....
こわい箇所だけ集めた 試写会のような
夢
夢は ひろい鏡に浮かんだ
あおじろい入れ子
口の中はレトロ
ほの昏く暖色な
どことなく固定された感ただよう炭酸臭
安っぽいシ ....
田舎のビルでみた 踊り場 シネマ
月光 スクリーン 古びた壁に
主人公、現わる とある風
恋は またたく間に想いを伝え
うかれ気分を流れに運び去られても
次の季節に 誘われ飽きな ....
又 戻って来た
物憂い瞳で 上手く口説き
心をさらいに来る悪魔
親しげに抱きしめてくる腕
あたしがいつも
浮き草の様に揺れ動いているのを
充分に知っている男
取り ....
炎天厳しい8月
森の木々はまっすぐと
燃える円球のような日へと
ごつごつした両手を伸ばす
枝が大事そうに抱える緑葉は
ああ 体に新しい力を抱いた
小さいお前そのものだ
それは決し ....
水の
なか
に、
泳ぐ
鳥
記憶のなかを
明滅する光
濾過されて
蒸留する
西へ、
それから再び東へ
ゆく鳥は
籠を抜けて
飛び去った
八月の日 ....
それならばこれで、
というお別れの仕方が
あまりによかったもので
それがそのまま
別れの挨拶になったというわけなのだ
そこには指示語が含まれている
指し示すのは
それまでのかかわりす ....
暗いバーで
黒い服がよく似合った女が
しわがれた声で私の名をきいた
煙草とウイスキーの琥珀によどんだ目で
笑いもせず何故
私を 見つめるのか
フロアから這い上がっ ....
夜が釣り糸垂らして
月を釣っているよ
風の仕掛けは巧妙で
ぼくの前から消えちゃった
あの日あの娘のサヨナラみたいな
トゲトゲした疑似餌のようだよ
ちょうど煙草屋の屋根の上に
月が昇ったそ ....
月の夜だった。欠けるところのない、うつくしい月が、雲ひとつない空に、きらきらと輝いていた。また来てしまった。また、ぼくは、ここに来てしまった。もう、よそう、もう、よしてしまおう、と、何度も思ったのだ ....
臨終の時が迫ってきていた
母と娘で長年過ごした
平屋のあばらやで
床に臥せっていた母は娘に言った
今まで苦労を掛けてごめんね
一生貧乏な暮らしで終わった
自分の人生に付き合わせた娘に
....
草は
大地(ほし)からあふれるエネルギーの現れ
こんなにも草が育つ
私たちの国
水が豊富な
土が肥沃な
明るい
恵まれた土地なのだ
砂漠化が進む
この地球(ほし)の上で
特 ....
ちいきをまもる
ぐりりとぐらら
りんせんたいせい
すいかのもよう
ちゅうかんかんりの
ぐりりとぐらら
りそうのゆめは
すぐそこなのに
ゆめのような
うつつのような
....
新聞屋は忙しい
その日のうちに記事を書き上げて印刷する
日が明けてまだ暗い夜明け前、遅くとも2時までには配送される
各々集積所から各家庭に配らなければならないからだ
だからといって投稿欄の ....
ホントに海なんだって
あるつってんだよね車座のばあちゃん連が
あの丘をこえたらザザザ
と、むかし たぶん一度きり
お波とお供からあっとさらわれると云い
舟のり達なら躊躇うわず ....
野球の音が聴こえる
野球をする音が聴こえてくる
誰もがみんな
胸の中に野球を飼っている
整備の行き届いた市営グラウンドから
夏草の生い茂る河川敷まで
球足の早いゴロが一 二塁間を
抜け ....
仕事だから しんどい事もたくさんあったけど
仕事だから やらなければならない
その思いが 私の心と体の健康を 守ってくれた
空想的な理想主義者だった自分を
現場の人間へと 鍛え上げ ....
遠イ遠イ雪ノ山
降リル事ナゾ思ハズニ
タッタひとりデ ノボルノデス ト
誰モ ダーレモ
女ガひとりノボッテイルコトナゾ
知ラナイノデス ト
止ンデイタ雪ガマタ
サ ....
目も悪くはないのに、
しじみ汁をすすった。
みんなきれいに殻を開いていた。
身をすばぶっては、
殻を空の小皿に捨てる。
最後に残った貝は殻が閉じていた。
そうか、お前は先様だったの ....
運命の階段がある
駆け上がるの
転げ落ちるの
滑り台にしちゃえ
人生なんて
華麗なステップ踏んで
踊ってればいいじゃ無い
嫌なことがあったら
可愛い女の子見つけて
スカートの ....
私は最強の召喚士
DPSだって
史上最高値を叩き出し
バハムートを召喚し
大地を火の海にすれば
オーディンが
お前の首を刎ねる
エンジェルがウィンクして
フレイアが愛を語ると
....
自作詩「これでいい」
朝は暑くて出勤するのイヤだし
仕事始まったら始まったで酷暑でキツいし
若干気持ち悪くなるし
昼休みなんかもう早退しちゃおうかと思ってた
でも簡単に逃げちゃうのもシャ ....
死んだものたちの魂が集まって/ひとつの声となる/わたしは神を吐き出した/神は罅割れた指先で/日割れた地面を引っ掻いた/川原の石で頭を叩き潰された小魚たち/小魚たち/シジミも/ツブも/死んだものたちの魂 ....
人魚の名前が アリエルだとしたら
膿ばかり見てきた こんなアリエルも 有り得る
膿には 国境はない
膿には清濁も いっしょくたん
わけることのない暗い世界で
大波小波 ちぢにみだれ ....
詰まらない
タワ言を 一人並べて行くだけでも
やはり詩だと
思うようになった。
ノンフィクションの世界
硝子で仕切った空間に
一鉢のサ ....
エロチックな好奇心と
相性がいい音楽がある
それは時にバッハでも構わない
大切なのは
踊ることだから
何もかも棄て
くるくる回り
捩れ
戻れ
くり返すだけ
....
求めているのは本当は音楽ではなく、無軌道な音の集まりなのかもしれない、それは一般的には、ノイズと呼ばれるようなものかもしれない、でもそれには制約が無いし、衝動について語る手段としては、最適なものだ ....
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