「エインスベルやアイソニアの騎士はともかく、エイソスまでもですか?」
フランキスの憂慮は、当を得たものであっただろう。
しかし、祭祀クーラスは動じなかった。
世界と人間との合一、そんなことをクー ....
「それは重い課題ですな。わたしにその任が務まりますでしょうか?
何よりも、エイソスは今この国で誰よりも支持されております。
アイソニアの騎士がこの国を見捨てた、そのことは良いのです。
しか ....
フランキス・ユーランディアは、クールラントの為政者たるクーラスが、
自分に対する率直な言動によって対してくれる、ということが、
何よりも嬉しかった。「自分は信用されている」のだと。
だからフラン ....
「混沌か。世界は常に混沌としているものなのだ、フランキス」
……祭祀クーラスは、この物語では敵役として記されてはいるものの、
実は善なる存在だったのである。それは『今』の歴史を見れば分かる。
し ....
「その言葉を聞いて、安心した。わたしは孤独だからな……」
祭祀クーラスのその言葉は、いつにもなく自信なさげに思えた。
というのも、フランキスには、クーラスの言葉がいつも以上に重々しく感じられ、
....
「誘拐? それはまた厄介な事をお考えになられましたね……」
「いや、厄介でもあるまい。事が終われば、世界には再び平穏が訪れる」
「あなた様が真摯であることは、誰よりもわたしが存じております。
....
「そうだ。わたしには敵が多い。だから、エイソスだけは味方につけておきたい」
「エイソス・ギザ・ノールデン。奴は、貴族の家系でしたね?」
「ああ。だからこそ信頼がおける。いや、そうではないな。
....
「お前は、クロノゴロスという言葉を知っているか?」
「クロノゴロス? それは、何を意味しているのでしょうか?」
「人間は人間の力だけで生きていける、という主張だ。
このクールラントでも、最近に ....
「では、あなたの手でそれを確実なものとすれば良いのです」と、フランキス。
「いや。すでに遅すぎる。お前はこの国、クールラントの未来をどう思っている?」
「それは、ライランテの覇者となることです。こ ....
場面は変わって、ここはクールラント行政府の、執務室である。
祭祀クーラスは、執務机に座っていた。その向かいには、フランキスが立っている。
「昨夜、……いや、今日の未明だな。ある者から一つの提案があ ....
「そのイリアスとは何者だ? よもや、ただの下賤の者はあるまいな?」
「イリアスは……アースランテ第三王室の娘です。
いえ、『だった』と言ったほうがよろしいでしょうか。
今では廃嫡され、庶民と ....
「エイソスはたしか、結婚していたはずだな?」クーラスは尋ねる。
「はい。彼の妻の名は、クシュリー・クリスティナと言います。
彼女のことを、奴隷という身分をなくした聖女として、
崇める者も多い ....
何かを思いついたように、クーラスは叫んだ。
エイソスと言えば、クーラスが妖精ファロンを使って、
アイソニアの騎士に対して反発するように、仕組んでいた者である。
その試みは必ずしも成功したとは言え ....
心細くなっていくのは
日が暮れるからだ
寒いからだ
暗いからだ
人生と重ね秋
子も生まれ
君のお家は
上る春
ライジング・サン
じゃないか
春売って
酒浴びてなお
恋に ....
「ただの女が、いつから政治に口を出すようになった?
お前は、フランキス・ユーランディアと話でもしたのか?」
「フランキス様がこの頃、このお屋敷にしばしばいらっしゃっていることは、
存じており ....
「ああ、フフリナ。まだ起きていたのか? 明日も朝が早い。
お前もしっかりと休息をとっておくことだ。何しろ……
わたしも、いつこの首を切り落とされるかも知れないからな」
「恐ろしいことをおっし ....
こつこつ……
祭祀クーラスは、自室の机の天板を叩く。彼は今、一人きりである。
問題は山積みだった。このクールラントを導いていくということは、
ライランテ大陸の未来を見すえる、ということに他ならな ....
二〇二一年八月一日 「断章」
かれがおれの体内に横たわっているうちに、そのアイデンティティは永久に消滅していった。かれを二度と解放するつもりのないことはわかっており、かれの真実の飛行は、今 ....
元々、ヨラン・フィデリコは、エインスベルの従卒のなかでは、
可とも不可とも言えないような、微妙な立ち位置に立っていた。
その集団の中の絶対王者は、アイソニアの騎士だったのである。
しかし、当のア ....
「この世界の真実、と言いましたか? ではやはり、このハーレスケイドは?」
ヨランは、一行の思いを置き去りにするかのように、性急に、矢継ぎ早に、
オーマルに尋ねていた。いつもの間抜けな調子は、
( ....
「人間の体?」と、ヨランは唸った。ヨラン自身も、人間ではない。
ドワーフである。ドワーフは、この世界に産み出された、最初の異種族だと言われている。
ヨースマルテには、元は人間しか住んではいなかった ....
忘却の果てのお墓には
さまざまな忘れた事が
眠っている
忘れた事が生まれ変わった
今と久しぶりに会う
死ぬまで生きる
生を味わいながら
この魂という命を燃やし
死を覚悟しつ ....
「愛とは、はかないものです、騎士様。あなたは見たところ、
騎士のようですね。違いますか? 勇猛果敢な人物だと見受けますが……」
「ああ、その通りだ。わたしは騎士だ。この身の名は……
いや、通 ....
「この世界の理? ここがそれほど異質な世界だと、あなたは言うのか?」
居ても立ってもいられないといった様子で、アイソニアの騎士が尋ねた。
アイソニアの騎士は戦いには慣れている。しかし、謎解きのごと ....
「あなたがたはどこへ行くのですか?」と、その女は言った。
それは、女であったろう。少なくとも、三人の旅人はそう思った。
「これはこれは、ご丁寧に。あなた様がこの世界の案内役ですか?」
盗賊ヨラン ....
「どうやら、本当にお前に任せるしかないようだな、ヨラン。
見ろ、あの雲を。あそこからは、何らかの建物が突き出している。
このような世界、わたしは初めて目にしたぞ!」
感嘆の思いを隠せないとい ....
「協力者だと? それは、旅の伴を得るということか?」と、エイミノア。
「そうとも言えます。ですが、そうとは言い切れない面もございます。
その協力者とは、わたしたちの味方とは限らないからです。
....
「さて、アイソニアの騎士様。わたしたちはこれから、とある場所へと、
向かわなければなりません」勿体ぶったように、ヨランが言う。
アイソニアの騎士は、じとりとした目で、ヨランを睨む。
「うむ、そ ....
宙へ手紙を
したためる
魂という命のペン
下手な字でも
読んでくれる宙
今の自分に
出来ることをしてから
天を静かに信じる
そして
天に任せる
自分に都合の ....
けっこう本気で想うのだが
夜も3時なんかに
ふと目が覚めて
気づくと
スマホを手にしている私は
きっと
スマホ依存症なんだ
あれだけ頑張って
....
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