二〇一八年八月一日 「どくろ杯」


 いま日知庵から帰った。帰りに、セブイレで、きんつばと、玄米茶を買った。寝るまえの読書は、なんにしようかな。きょうのお昼には、金子光晴の『どくろ杯』のつ ....
世間、世間、世間世間世間、あんたら世間好きだねぇ、世間っていったい何だい、そいつは実体のあるものかい?そんなにムキになるくらい、素晴らしいもんなのかい?まったくどいつもこいつも二言目には世間ってそ .... 暮れ、底に 打ついて聞こえる淋しい声は
違う違うといっている

朝焼けや紅葉の美しいのに 体ははたらかず
心ばかり出掛ける
そうしてそのいっさいが失われようというときにはじめて
この指 ....
{引用=施錠された雨へたどりつくまでの足取り

輝ける虚空の大理石に屈服してしまうわたしの

 一歩を待つ夜を繋いだ

白熱灯が光る死角を擦れ
吸った湿気る一悶着に

手を打ち鳴 ....
穂渡りの君が
口笛を吹く

錦糸町にお蚕さんの面影を重ねてみる
ほら
そんなふうに季節を忘れた町に
探している何かを求めている
探している


穂渡りの君が
嘘をつく

 ....
ふるえる液体のように言葉をこぼす

その重なりの中のささやかな日常

計測地点からの風景

穏やかに心を柔らかくする

秋の夕暮れ、日差しの降った跡

乾いた血液はさらさらと夜 ....
素晴らしい朝は
岬の鴎たちが啼き交わす言葉までわかる

遠い希望は持たないほうがいい
ただ一瞬の充実が幸福論のすべてならば

そこに集力してそれが結果になる方がいい
それからが始まりだと ....
歩きながら感じた空の匂いが

秋の終わりを白息に伝える

また山の麓に立ち止まって

見上げた景色を瞼に遺す


階段を昇るあの頃に聞いた

唄は今は奏でられないけども

今 ....
   

分厚い雨雲の真ん中が綻び
底なしの穴の遥か遠く
水色の空が薄氷越しに透かし見えると
遠い夕焼けが破れ目の縁を
なぞるように湿らせる

逝く人の
輪郭を切り取るだけの硝子窓
 ....
二〇一八年六月一日 「断章」


断片はそれぞれに、そうしたものの性質に従って形を求めた。
(ウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライヴ』36、黒丸 尚訳)


二〇一八年六月 ....
「あなた自身、自分では気づいていない暴力性を持っている」

ある占い師に言われたその言葉が、
私を救っている。

「自分が他人にどう思われているかについて不安になり、
他人との交流や人前で ....
 まだ里に雪は降りていないが、初冬である。晩秋にかけて、割と寒くはなく、むしろ暖かいと感じた。
 あたりはすっかり寂れた風景となっていて、収穫の予定のない近所の畑の渋柿だけが鮮やかな色を呈している。 ....
たぶん、若いころは善意の人が多いから、
寄付に絡む悪には気が付かない。

たぶん、年取るほど悪意に苦しめられるだろうから、
寄付など無視し都合のいい福祉を要求するのである。


 ....
カーガリンデの魔法使い、エインスベルには、
常に黒い噂がつきまとっていた。
いわく、彼女は黒魔術を扱い、死者たちを操っていると。
いわく、彼女は墓を漁って死体を集め、その身体を切り刻んでいると。 ....
おお、アイソニアの騎士よ、
誰がお前の勇猛果敢さを歌にすることが出来るだろう。
ああ、アイソニアの騎士よ、
お前はその死をもって死をも凌駕した存在となったのだ。

どんなに秀でた吟遊詩人であ ....
たった1。Cの寒暖差で
きみと僕のこころの隙間が
埋まらない

君と僕は似ていても
1。Cの差をゆずらない

修辞学を駆使しても水溶性の会話は
多様性の海に拡散してゆく

ノルウェ ....
落ち葉を見ると涙ぐむ。
自然な時間を呪わずにいられない。
夜の間に文字を探す。
どうせ使い果たせやしない…
朝、くまんばちが息絶えようとしていた。
olvido!olvido!
そうだ ....
二〇一八年五月一日 「迷惑メール」


 迷惑メールが何通もくるのだけれど、いま見たら、「ワンナイトラブでかまいません。」と書いて、女の名前で書き込んであるの。笑っちゃった。こんなメールに返 ....
白砂が敷き詰められた海底に

密かに流るる唄の声主は誰か

岩壁で覆われた筈の闇の

僅かな隙間から漏れ出している


世界が海と空に分けられたのは

命がいずれにしか住めぬため ....


背中を掻くための
指を
探している野良猫。

部屋で
キーボードを打つよりは
ぬくんでる
私の手。



天国にも
地獄にも
振れている指先。

どちらにも転 ....
同じ海をみてぃる、

誄に、

詩贔屓は、節穴ゕら同じ海をみてぃる、ゕ゛、

同じ海を見てぃた、と、なることはなぃ

過去は極在ゕ゛醸し出す破片の、

つかのまの光臨に過ぎ ....
 政権交代を夢見ていたけど、現実化はしなかった。与党の消極的、支持層の意識や無党派層の意識を変える為に何が必要なのだろう。この地獄化した世の中が継続した方が良いのか、本当に分からない。変わることがそん .... 人あまたゐてそのうちのただ一人のみ我なりと知りし日のこと ものなべてこの涯無きを負ふゆゑに傾ぎて見ゆる青空の下 もう僕はよそへは行かないから帰っておいでと
ただそのひとことが聞きたかった

彼岸へすこし渡る その前にひるめしを食べよう
あなたはそう云ったので
わたしはピアスをして電車に乗りフォークをと ....
そとではなにが
凍っている音がする

わたしにはそれ以外
なにも聴こえなくて
それにしてもこの部屋は暗いんだ
そしてそのことを
喋れる人ひとりいない夜

あらためて時刻を ....
{引用=   我が友、田中修子に}



時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる

砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
ときどき本の下から食べ物が出てくるのが怖いのだが
それでも生きて行けることがもっとこわいのかもしれない

知らぬ間に親がいて勝手に子と呼ばれて地球人になりました

先週までのシフト表 ....
スズメに
なんでお前は人間じゃないんだ
そう怒り狂ってるような

うどんに
はやくスパゲティにならんか
そう指導するような

そんな人間に
俺なりたかったっけ



11月の ....
スーパーで売られている無花果はスーパーなイチジクではない
ミルクが切り口から出ていない
それでも ためつすがめつ見る
皮の色合い ふくらみ 同じものは ひとつもない
紅をさしたかのような口が美 ....
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