父はお爺さんだ
戦中戦後の食糧難を思い
グルメだなんだと聞くと胸が悪くなると書いていた
食べるものが無ければ何だって、何だって……と
父の母のお婆ちゃんは
それをいい文章だとほめてい ....
激しすぎる 揺れ たちを
夜、夜明けまえ
だましながら捕まえて
昼間の街を見せにいく
揺れたちは
泣きながら
嘘を消化して
売り買いできるような
かたちにまとめて束ねる ....
「私春記」
「あたしの洗濯カゴ触らないで。
あたしのボディーソープ使わないでよ。」
俺は、いったい何なんや!
憤る 兄をなだめる母ありて
娘の真顔に含み ....
──献杯の酒を飲む夜に
* * *
高校三年生の頃、僕は恋をしていた
あんなにも好きだった娘(こ)に
教室で話しかけることもできず
震えながら・・・告白しようとした
夏 ....
お菓子なことになっちゃった ってお{ルビ顔=かお}
「かみついたりしないよね?」まあいいか
しっとり系を装うほどは 老けてないし
{ルビ花=はな}ふぶきみたいに恋ごころ吹雪かせては
....
花菖蒲綺麗に咲いた公園にシャッター音の嵐が続く
四月から主治医が変わり若い人小さな不安幾つか消えた
五月晴れ気温は初夏を飛び越える冷房六月からの病院
県民の浜は賑やか夏だけは他の季節 ....
庭にいるのはだれか。 (エステル記六・四)
妹よ、来て、わたしと寝なさい。 (サムエル記下一三・一一)
箪笥を開けると、
──雨が降つてゐた。
眼を落とすと、 ....
#ながすぎる夢
たくさんためて
あらためて
新たなうたを
うたいます
あなたのために
桐の葉に 雨が降れば
涙なく 声なく
唯一人
流るる窓の滴に心あてなく さまよい出でる
あなたが何処に居ようと
わたしが何処に居ようと
生命だけしか上げるものが ....
そんなものは信じていないからっぽの樽の影が
言葉のなかに黒々と鎮座して深淵をかかえこんでいる
わたしたちが腰痛を少しでも自由のほうに傾けると
いつのまにか言葉は樽に廃液をつめて腰かけている
....
それから
ごめんなさい
ありがとう
行方不明の
愛のともしびよ
・
味わう
という
生き方を
しないと
もったいないかな
・
冴えかえる
闇の
静かさに
....
「今日」
足許が 冷たい
濡れた路面に浸む夜の訪れ
こんな日も
あるのか
早く帰って お風呂にでも入ろう。
....
生きることを
生活を
一生を
大事にしていきたい
母に抱かれ
あやされた
その日の私は
何を思ったか・・・
父の背に
孤独が
見えた日
私は何を感じたか・・・
....
望んでも
望み切れない
欲望が
私の心の底で
マグマみたいに
ぐつぐつ
音をたてている
そのくらいで
いいじゃん
少しは
ガマンしなよ
そんな声が
あちこちから ....
世界は上手く出来ている
隅から隅まで上手く
何処に出逢いがあるか
わからないけれど
タイミングよく出逢う
自分だけの世界が作られる
それぞれに宇宙があるように
自由に作られていく ....
おはようを言わない朝もある
おやすみに似合わない夜もあれば
留めておきたくない風景もある
鉄塔を怖がる鳥もいる
拾われて来た子のまま育てられた
白と黒、光と闇、どちらの味方もしなかっ ....
あなたの中に
花が灯ると
迷いの森の
出口が見つかる
あなたの中に
花が灯ると
憂いの雲間から
光が射し込む
自分の中に
花が灯ることを
あなたは知らずに
健気に微笑 ....
あすは大事なひとに会う
あかりを落として伽羅を焚く
あすでくるりと生きざま変わる
あかりを落として伽羅を焚く
あすでくるりと生が変わるなら
いまのわたしは今宵かぎり
さいごのわ ....
物心ついた頃にはTVがウチに居座っていた。
自分の運命よりも他人の運命を察しては笑い、憂う…
そんな日々を疑うことなくたぶん、続けているのだと思う。
こんな環境を半世紀以上続けられていること ....
時には
仕方無いこともあるが
私は
選んだのだ
命を
すすきの穂が暮れ終わって
秋が もはや殆んどない
御寺の緑に
ふとこぼした涙は何処へ行ったのか
荒々しい血汐のざわめきが
遠い日のことであったと
気附いたのか
一 ....
横断歩道のラインの梯子
とおりゃんせ、がスピーカーからあふれる
さあ渡ろう
白だけを踏んで
くちさびしいからつぶやく
「アネモネ アネモネ アネモネ」
猫みたいにやわらかな足で
....
寂れた町の匂いのする
季節外れの席でビールを飲む
砂粒だらけの赤い足で、
板張りの床を踏んでいた
濡れた髪の女の子が
ハンバーガーとポテトを運んだ
台風が去った跡の景色が、
そのままこの ....
三連覇すれば充分なのかもとカープのファンは四連覇願う
湖の綺麗な水に触れてみた地球の愛として湧き出た水
湧き水のお薦めの場所教わったやや山奥の薄暗い場所
世羅町は空気美味しい花の町観 ....
苦悩というものについては、ぼくは、よく知っているつもりだった。しかし、じつはよく知らなかったことに気がついた。ささいなことが、すべてのはじまりであったり、すべてを終わらせるものであったりするのだ。た ....
リビングで 朝
外の光がもれこんでいる廊下の床に驚いた
玄関が 開いているのだ
シルエットの人影
何故だかすぐに 母だと分かった
どうして 敷居を跨がないの?
....
―あなたはどんな茶葉だったの?
へバりついっチャってたからアタシ
―どこに?
チャんとおぼえてないんだけどタシカ
―湯呑み?
シャンハイ
―チャンハイ?
はい
―どっち?
チャンハイ ....
膣は穴じゃない
日頃、閉じている扉の向こうにあるものは
それは穴じゃない
迷いこんだ樹林の枝を入れるべき穴はない
天空に唾するとき岩の戸は閉ざされ空が落ちる
雷鳴 豪雨の闇の中
あれは穴 ....
パリパリのラスク
粉がこぼれて
僕のスカート汚した
僕のお気に入りのスカート
この地球を産んだという
大層立派なスカート
夜空に翻る
白い足がちらりとのぞく
宇宙の一部も隠してしまう
....
ものうい口づけの時
真昼のカーテンが そっと身をよじらせ
触れ合った歯の小さな音をも
ききのがさない
ある時
生命を捜し求め
悲しい広さを見い出した
貞操を否定す ....
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