硝子の抜けた窓を透け
川に浮かべた傘いっぱいに
夕ぐれの街が溢れる時間
暮れる光のにおいに
昨日と明日が
すれ違う今が翳りとなってひそみ
貨車が黙って
曳かれてゆく不安で
すぐに下 ....
○「わからないなあ!」
宮沢賢治の童話 わからないなあ!
童話なんだけど わからないなあ!
まあ何十年も一緒にいる女房の心も
わからないんだから
天才の心などわかるはずがないか!
○「 ....
友達が海辺だった。ぼんやりと暗い真昼の部屋で、どこから迷い込んできたのだろう、蟹が蠢いていた。冷たく静かなベッドの上で、蟹の群れが、友達の中へ滑り落ちていく。少しだけ話をすると、友達は用事を思い出して ....
公園の水面に睡蓮が咲いている
ウスバカゲロウがふわりふわりと飛んでいた
ときおり
魚がポチャリと水面を跳ねる
貴婦人が日傘をさして橋の上から
池の睡蓮を眺めていた
ぼくはベンチ ....
さくらの花びらのしわを読もうとしても
他のことばかり考えてしまう
死んだ人の顔とか間違えたこととか
風が強すぎて星が何を言っているのかわからない
唇の開閉に合わせてうなずくだけで眼がうるむ
....
夢の時間も砂嵐のなかに消えてしまうだろう
そんなテレビジョンの懐いでのなかで
光りになれなかったひとたちと
一緒の場所で出遭ったのは
真昼の淡い幻想だった
いまだほんものの喜びが ....
ネット間のむくつけき影が
まるい指きどり、きらりコイン・トス
お気にいりのいち枚を
載せた型をじいっと見つめ
着地するまでどれだけ回ったか
数えてるんだと笑った
投げあげられた淡黄色の ....
「きのうのよる、ミイちゃんがかえってきたみたい。ほら、からっぽになってる」
わたしは妹に話しかけた、からっぽのミイちゃん用の銀色のお皿を持って。
「ほんとだ、ミイちゃん、かえってきてごはんたべたん ....
天に舞い上がった
ひと粒の砂よ
雨の核となりて
陸に戻れ
*
アスリートは高らかに詩を歌え
アスリートは詩を歌う
アスリートは詩を歌わない
アスリートも詩を歌え
アスリー ....
○「5万円の矢」
買う気はまったくなかったのだが
4月から値上がりすると言われ
ちょっと安いのを見せてもらおう
と思い見たのがいけなかった
結局6本で52320円もする矢を買ってしまった
....
紙が細やかに振動している
撥水性はない
雫が落ちる
水滴は容易に染み込むが
少し弾き出される
風が吹く
枝垂れ柳よりも軽く碧い風
少しの水の重みと粘り気が
紙を飛ばさせない
まだ ....
すべてのくじらが歌うのなら
すべての露草が雨滴を抱きしめる
単純な対応関係ばかりの夢では
エンドルフィンに支持された
懊悩が硝子体を濁すばかりだ
雲のあわいから垂れる雷は
鉛直方向に空 ....
少年は命の秘密が知りたくて
東の岬にいる賢人を訪ねた
賢人は灯台のレンズを丁寧に磨いていた
あの… ぼくは命の秘密が知りたくて参りました
ほう 命の秘密とな…
この世のすべての現 ....
レタスがいのちをもっている。
わたしなんかより。
小さく千切られた彼のほうが
みずみずしく、麗しく、愛くるしく。
レタスにフォークを突き立てる。
ドレッシングの不純さが、
少しだけここ ....
長い通院生活も今日で終わる
とある春だった
通い慣れた道、河川工事はまだまだ続くらしい
詳しくは知らないけれど新しい駅が出来るという
パン屋、スーパー、マンションや公園、行き交う人々
駅を支 ....
鉛筆で書いている
五行歌は
私の
生(せい)で
宝だ
・
繰出し鉛筆の
クルトガアドバンスで
書いている
五行歌が
こころの海を行く
・
クルトガアドバンスシャ ....
働いた手のひらをそっと見る
森を彷徨いうずくまる
{ルビ闇路=やみじ}の{ルビ褥=しとね}{ルビ花埋=はなうず}み
丸い皿は丸く 四角い皿は四角く洗えと言われた
白い皿は白く
深緑の皿は深く深く果てしなく緑に洗えとも言われた
少しも汚れていない水盤のような皿たちに
水流をあてると
どの皿も垂直にしか洗 ....
生まれてしまった歓びと
生まれてしまった悲しみに
風に吹かれて
杖を探りながら
琵琶を抱え
漂泊の旅は果てしない
春には花を愛でて歌い
夏には蝉しぐれを歌い
秋には舞散る葉を歌 ....
たたかう
たたかう
何とたたかう
ほほえむ
ほほえむ
野薔薇に口づけをする
かる
かる
雑草を刈る
畑が肥えるように
雑草はね
その土地が ....
だれのものでもない両手で
だれかを傷つける
呼び鈴がおれの耳に
爆発している
やり過ごすことのできない咎に身をふるわせて
やはりだれも
おれを諒解しないというところで
....
ぼくの瞳が濡れているのは
遠い空を眺めていたから
涙なんか流しはしない
大丈夫と言い聞かせ
春の{ルビ詩=うた}を歌おう
車を買うことになってディーラーに行った
担当者は車じゃなくて部屋の間取りを説明し始めた。
3LDKで賃料は15万
我が家は荷物が多いので3LDKでは狭いので
4LDKは無いかと聞いた
担当者 ....
情熱はもう涸れてしまった。
一行目では誰もが世界一の詩人になれる。
二行目、三行目からは篩にかけられたように、
詩人だったものはただの凡人に成り下がる。
バレてはいけないよ、夕 ....
川を歩いた 海を思って
年老いた体ではあるが 動かせた
何度 でも この景色を 僕は
僕の見たい景色として訪れたというのか
今日も日はベンチに差していた
前に見たことのある 角度の記憶で
....
いっぴきの草鞋虫を片ほうだけ履いて、
春が土足で入ってきた、
ながらく寒かった和室の畳の上にも、
いっぴきの草鞋虫が入ってきた、
ワラジムシ、
おまえは、とてもちいさなちいさな、
春の外履 ....
どんなに遠く離れていても
心かよわせた日々は忘れない
きみだけを見ているから
大きな虹が蒼穹を渡り
ぼくを呼んでいる
あの虹の向こうへ行けば
きっときみに逢えるから
ぼくは走る! ....
時計の文字盤の進行と街の気配が奇妙な歪さをもって網膜に刻まれる午後、全身に浅黄色の布を巻きつけた梅毒持ちの浮浪者女が木の柵で囲われた売地の中でこと切れる、鴉たちは低いビルの立ち並ぶ様々な屋上からそ ....
みんな 考えることが
おっくうに なったので
頭を はずして
かわりに 肩の上に
鳥籠をのっけて 歩いてた
鞄を抱えた 背広姿の人も
バス停でバスを待つ 女の人も
みんな 肩から上は ....
○「有名人」
登山と同じで
登り詰めるには
時間がかかるが
落ちるのはあっという間である
一歩の判断ミスでも落下する
○「二刀流」
大谷選手
今年は
野球と家庭の二刀流なるか
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250