息子が米寿を終えた母親に
あと一年したら帰ってきていっしょに住もうか
といったら
一人暮らしが自由で一番いい!
といって断った
淋しくても不安があっても自由が一番いいようだ
清く正しく生きようとするやつが気に入らねえ
欲ボケて腹の弛んだ肉玉も気に入らねえ
政治家のケツをブログで突っついてるやつが気に入らねえ
海外ボランティア活動に志願するやつが気に入らねえ
....
{引用=おーさまーのみみはろばーのみみー
あれじゃなんにもきこえない きこえやしない
らんらんらんらん らんらんらん らんらんらん らんらんらん
みんなでうたおうらんらんらん らんらららんらんら ....
がらんどう
でなけりゃ鳴らない
灯りはいらない
隙間から射し込む程度
《{ルビ外面=そとづら}はいつだって焼かれているさ
がらんどうで
鳴かねばなるまい
万華鏡を回す要領
青白 ....
雨が降っている
間断なく
なぜ 雨を物悲しく感じるのだろう
たとえば 勢い良く降る驟雨は 元気で精悍ささえ感じる
まっすぐで 常に潔い
でも 夜になり 家のなかで ひ ....
.
―――― よくわかる話です。私も、ごく身近に性暴力被害に遭った人を知っています。彼女たちがその後どうなるのかは、体感的にわかっているほうだと思います。 従軍慰安婦という性暴力の極限的な形態を経験 ....
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝 ....
北朝鮮を米国が
攻撃するかどうかが
連日テレビで取り上げられて
いろんな評論家がいろんなことを
言っているが
僕は二つの大事な視点が
抜けているような気がしてならない
北朝鮮攻撃をした場 ....
そらの匂いが
あじさいの花に
かぞえきれないかげを穿つとき、
虹の残り香が めをさます。
こどもじみた言いわけみたいに
するり、と
きえてしまった
あるはずだったものたち。
( ....
父は十代後半に大原に入植。昭和二十年前半だったと思われる。
三十三年に私が生まれ、開拓村で生まれたので隣人が拓也と名づけたと聞く。
妹は五年後、自宅で産婆のもと生まれたのを記憶している。
幼 ....
一日に一編の詩を作ろう
出来上がらなくてもいい
案だけで、発想だけでもいい
作ろうとする気持ちだけでいい
書けない日もあるだろう
其れが続く日々もあるだろう
それどころではない時期もあ ....
宇宙には壁があった
宇宙にも壁があったのだ
壁は油断していた
まさかぼくに触れられてしまうとは
思ってもみなかった
それでも壁は慌てるそぶりも見せず
慌てたところで ....
{引用=
(君、あの鞄は君に似合うが荷物になるかもしれない。
(なぜなら、荷物とわかるには一度持ってみなけりゃわからない。
(鞄がお荷物とわかったならばただのクズだ ....
剽窃したい人はそこに居て、夏のセロリをしっぽから齧っている。水は生温い
が金魚鉢の赤い魚たちは夢を追わずきょうも元気だ。猫は背を丸めしっぽりと
寝ている。
猫を抱き ....
富士は日本をしたがえて
フルスイングする屹立だ
ぼくは涙をしたがえて
外灯もゴッホの星月夜
富士は地球をしたがえて
フルスイングする精密だ
ぼくらは今夜宇宙の片 ....
生きたまま花の化石になりたい
という少女がいて
街は、霞のようにかすかに
かそけく 輝いているのだった
ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち
少女は母似の瞼をとじた ....
子供たちはそれぞれに武器を手にして、頭を押さえつけてきた街の中に飛び出していった、程なくいくつもの銃声がこだまする、男の声、女の声、年寄の…さまざまな悲鳴がビル街を跳躍して夜空の黒の中へ消えて ....
糸をつむぐ
それはかつて
繭だったものたち
それを産んだものは蚕という虫
それを育んだものは桑の葉
それを繁らせたものは桑の木
ふるさとを発つ時
小さなかばんに
宮沢賢治の詩集と
....
【悲しい酔っ払い】
呑んで呑みまくって酔っぱらう
ひどく酔っ払って空を飛ぶ
夜を食らってゆめうつつ
寂しいこと悲しいこと
寂しく悲しいけど全てを忘れて
明日はたぶんまっさらな気持ち
無垢 ....
酒臭いヨッパライ雌ともだちがいないのか俺にもたれて眠る
手放さず握りしめてるコーンスープ吐瀉物の香に似て覗き込む
ついさっき一緒に飲んでいたような雑なタメ口右から左
....
君は生まれた
冷たい稲妻がひらめいた
君は駆け巡った
硬い稲妻がひらめいた
君は強く吠えた
優しい稲妻がひらめいた
君はたくさんの風景を記憶した
温かい稲妻がひらめいた
君は人と戯れた ....
次の日の青あざもきっと可愛い
レンタルのスケート靴は湿っているけれど
夜景の中の白いアイスリンクで
恋人たちが不慣れに踊る
ろくに整備もされていない足元
にんげんの群れも氷像のよう
....
小テストカレーが匂う4時限目
給食でポール・モーリア刷り込まれ
犯人をみつけ吊るした学級会
男子女子第4次大戦勃発す
勉強の邪魔するあいつテスト前
....
マーガレット色の街灯が
午前三時の路上で
墜ちた月のように佇んでいる
ジンの酔いは
俺のこめかみを
左から右へ真っ直ぐに射貫いて
思考がそこから全部漏れていく
....
Ⅰ
私は人間ではない
生物でさえない
生きているのに
Ⅱ
私は一本の直線だった
貴方のことを知りたくて三角形となった
私のことを知りたくて四角形になった
いくら角が増えても角(つの ....
わたしはもう
石になってしまいました
かつてわたしにも
水だった時代があり
白濁した粘質の水となり
やがて泥となり
固まっていったのです
土として長年を過ごし
生き物をすまわせもし
....
「笹舟」
ほそくふるえる茎をくわえて吹いてみた
ちいさいころの夕焼けが鳴った
{ルビ百日紅=さるすべり}のあった空き地
少年探偵団のぼくが落とした時間
材木屋のある路地は行き止まり
ふ ....
社会人が仕事をする舞台では
みなが仮面をかぶって役割を演じていた
そこでは魔女狩りが行われ
決闘や縄張り争いが絶えず
仕事の達成と失敗があり
虚構の連帯が結ばれる
自宅に帰り仮面と衣装 ....
風が歌わない日にわたしたちは何を聴こうか
再生し続けることで乾く色彩の体温
その沈黙まで指先で縋るように諦めながら
待っているどちらでもないひとつの結末を
インプットしてきたものが違う ....
海の底から立ち上がる城
瓦礫の泡 草の鎖
空と樹 樹の前の樹が重なり
骸のように立ち尽くす
霧と岩は夜に溶け
雷雲は野外の舞台を照らす
山の裾野を登る波音
水 ....
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