あなたは世界をかくすほどの傘をさして
しのび足のような雨のなかを歩いている
ひらひらするくるぶしまでのスカートはすこしだけ濡れて
きれいにふちどられたショートケーキのようだ
つばめは果 ....
なつかしいテレピンのにおいよ.。
生真面目な心臓に、手かせ、足かせ、口かせ、黒い皮紐。縛り上げて、食い込む、青空。青空に、ねえ、青空に、きみ、青空にさ、青空に磔にするんだよ、なんども、なんども、なん ....
気楽に生きられない性分です
なぜなのだろう
こんがらがった感情を見つめている
楽にリラックスして
くたびれた躰をいたわったり
細胞の隅々に油を足してみたりして
ほんのひと手間で楽になる ....
{引用=涙}
厭きて見上げた雪空から
狙いすまして瞳に降りて
澄んだ涙を装って
誘発するものたち
悲しみに喜び
タマネギや目薬
夏の深い井戸 あなたは
美しいから美しい
詩の ....
インターネット普及前は
情けに弱い人が多かった
人間を信じることを
前提にしている善人の
情弱パラダイスだった
インターネット普及後は
情報に弱い人が多くなった
人間を信じることを
....
正義は勝つ!
ここに光の救世主は現れた!
世界は光を宿し
究極の喜びに導かれるだろう!
敬礼!
閉ざされたままの部屋の、すりガラスの小さな窓のついたキッチンの床に腰を下ろして、目を開けている時に見える夢にうつつを抜かしていた、部屋は隙間風ばかりで寒く、記憶とともに凍てついていて、それはもはや ....
待ち合せの間に珍しい植物を育てる
自転車に乗って行く
種は割と雑にして水は毎日あげる
毎日は確かにあって
待ち合せまではもう少し時間がある
ついでに自転車の錆を落とす
ホームセ ....
ゆめのみかた
わらいかた
よろこびかた
しまいかた
わたしのしまいかた
いきた
たぶんいきた
だれにともなく
うつむかないで
と
わたしのしまいかた
さん ....
赤です、
否。それは違う
そう見せてはいるが
実際は
――青だ
夜です、
たぶんそれもレトリックだ
朝は夜のなかに隠された唯一の希望であり
じつを言えば昼も夜の一部にす ....
私はずっと真似と振りを繰り返してきた
だから
私はずっと真似と振りを繰り返している
良い子供の真似を覚え
良い子供の振りをした
いつか
良い子供の真似に苦しみを感じ出すと
悪 ....
黄昏を乞う
夕餉の香りを乞う
あなたを乞う
寒い窓みとったら
みとったばかりの
顔が浮かんでくる
ずる ずる
おうどん おいしいかぁ
ええ音だして
ずる ずる
いわせやんなあかんで
泣く子も
泣き止み
すう すう
寝入 ....
老いた肉食獣の牙のみで作られた寝台に横たわり、遺伝子に染みついた生温かい血の記憶を弄っていると、脳味噌の隙間に瞬く光がある、針の先のような小さなそれは、けれど深くまで届くような鋭さも感じさせる、俺 ....
{引用=
――水道橋、詩の練習
}
つないでゆく
これから来るもののために
それを信じて
つないでゆく
見極めて
(生き急ぐことなく)
後の者のために
いまこの場所に立 ....
灰色の空を見上げて
最後の雨を待ち続ける間に
きっとアタシたちの歴史は
色褪せてしまうのだろう
気がつけば無音になった街で
みんな空だけを見ている
鳥の瞳で、犬の瞳で、猫の瞳で、
( ....
{引用=梯子}
高く伸びた梯子があった
青い空の真中に突き刺さり梯子は行き止まる
果て無きものに接した微かな上澄み
触れていることすら定かでなはない
その虚無の厚みの中
降り立つ場所もなく ....
仕事が終わった
一日の勤めから解放された
極寒の夕暮れ
車で家へ帰る途中
無性にカップラーメンをすすりたくなって
コンビニに立ち寄った
そこでカップヌードル一つだけ買った
それか ....
お金を差しだす見える優しさと
手を差し伸べる見えない優しさが
同じ価値な訳がない
目に見える物は触れられて
使えるけど
目に見えない物は
姿や形も無く与えられた事も
受け取った事すら気付 ....
水に濡れたまま
雨にうたれている
妻が傘の下からタオルをくれる
いくら拭いても
濡れタオルだけが増えていく
妻は可愛い人
こんな時でも傘には入れてくれない
濡れタオル屋でもや ....
ひとりの時間
明日も神でいるために
人間を満喫する
望んだこととはいえ
神でいることは
想像より重く
(みんなやたら神神神神言うもんなぁ)
人間を体ごと過ごさないと
....
クッションを抱いて
その中に閉じ込めた温もりが
冷めてゆく前に体を丸めた
まだ触れていない場所があったな
まだ聞いていない言葉があったな
もっと時間があると思ってたのに
駐車場は探さなくて ....
亡骸の幻影を抱いて
流木の間を
記憶を縫い取るように歩く
靴底を受け止める
砂浜の感触は優しく
けれど
優しさというのは
時折
無関心と同じで
巡回機のようなカモメたち
薄 ....
直観を疑うとき そういうときには 必然的に
他人任せの あやふやなデータや あやしい話に
乗せられているのが わかっている自分が
よく見えている自分が 自分に見えるときがある
古本屋の ....
下船したじいさんが
「陰性でも周りは嫌がるんじゃないか」って
言ってるのを
如何にも心中察します的に
うんうん頷きながら聞いてる
インタビュアーのお前!
がっつりマスクして
防御してんじ ....
何もしたくない日は
黙って横になる。
考えることを辞めて/空気に溶けて
部屋の中を漂う私の姿を思い浮かべ
聞こえてくる音に耳を澄ましてみる。
(窓の外を走る自転車のブレーキ)
(何 ....
いつまでも、が終わらない
夏のいつまでも
冷やし中華始めました
写真より冷たくなっていく手
冷え性なもので、と
言い支えるせめてもの君
三丁目産まれの君
三丁目の人間はほとん ....
とても良い朝には
きみに電話をして
かわいい化け物の話とか
食べきれないピザの大きさなんかを
評論してみたいんだ
ときどき売りにゆく
柱時計がボーンと鳴り
寺山修司が競馬新聞 ....
見知らぬ駅に降り立つ夢、駅の名も、電信柱に括りつけられたスピーカーから流れているローカルラジオの内容も、その時電話していた相手の名前も、その内容も、駅側のモニュメントのところで出会った年配の男のこ ....
((蒼穹を飛んでみせてよ))
((そんなのいやだ))
((どうして?))
((だって、「蒼穹」なんていう言葉は古すぎるもん))
((じゃあ、「青い空」 ....
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