七味唐辛子を壜に冬日和
ねじれた柱が
気層を持ち上げる
白と黒と昼
互いを
知らぬ光
穏やかな日には
忘れられた言葉が近づく
思い出されないまま
たたずみ 微笑んでいる
左右 ....
一本の草となり風にゆれている
無数のいのちの気配
静かで心地よいざわめき
一本の草となり風にゆれていた
触覚をおもいっきりのばしてみる
しびれるような蜜蜂の羽音
暑く深く
生と死 ....
二〇一〇年夏。オーケストラのリハーサル。
まだ若い、俊英と称される指揮者が壇上に立つ。
曲の中途。世界的な老指揮者が駆け寄り、大きく両手を振って演奏を止めた。
ここは指揮棒を叩くんだ。なぜな ....
その
首筋に誘われたから
わたしはそっと
おつきさまの
うで
のなかで
砂になるのを
待ちながら
さよならを繰り返す
あぶく
満ちてゆく水は
やがて浸食し
とらわれる
数珠を手に坐る
法然と親鸞は
21世紀の上野の美術館内に
少し離れて向き合っていた
親鸞像の瞳は、無言で
(この数珠を見よ・・・)と呟き
両手の間で輪になる数珠を見ているう ....
ぼくの、僕の捉え方
びっくりするほど悲しくて
なにをしても零になる
自分を思うと泣けてくる
こんな自分になにができる
それでも自信を持てという
見えぬ伸び代にす ....
大学のころひとりで
ヨーロッパの映画をよく観にいった
そのあとは音大生の部屋に行くのが常だった
テロリストがひと仕事終えて
女のところに身を隠しにゆくように
アスファルトには影がばれていた
....
....
このままでは
薄黄緑色の祭典までに間に合わない。
「複眼の君主は、儀式的な世迷言」
果汁は、少しばかり粘り気があるほうが
蠅の眼を欺けるのです。
「悪意のある草と、惑わしの甘美な ....
もう
ゆっくり
静かに
時を
過ごそうと
いたの
何故
何故
風が吹き
木々が揺れ
水面が
波打つの
何故
何故
一滴の ....
つぼみの色が明るくなるとき
もうすぐだよって
私が言う
みどり色がうすくなるとき
もうすぐだよって
季節の風が話している
明るい色が
はなびらから生まれるとき
私が咲く
....
見えないものを舞台に見つめる
それは無念
それは苦渋
それは憎悪
それは諦念
おどろおどろしい明らかなる男たちの声楽
鼓を打つ音
動物のような男たちの吠え声
鎮魂とはこういうことだった ....
わたしだって一生懸命走っているのに
なんか自分だけ後ろへひっぱられてる感覚に囚われてしまって
一緒に走ろうねって誓った友達の背中が
だんだんと小さく小さくなってゆく
※
はじ ....
漫然と眺める視界に映りこむ小さな爪きり
朝日のスポットを浴びる雪印コーヒーの紙パック
得意気な自己主張を欠かさぬ柿の種わさび味の空袋
に詰め込まれたビニールとちり紙の山
テレビで流れる何か ....
やっとのことで仕事を終えて
疲れをしょってバスから降りて
暗い夜道
白い吐息
せかせかと
すると小学校横の歩道を
女が一人こちらへ歩いてくる
――この寒空に網タ ....
月の話を聞いている
祈るために聞いている
祈るとは
どんな奴らの幸せでも
もっともっと幸せになりやがれと
捨て身で想うことなんだ
だからオレは
月の話を聞いて ....
ハンス・ギーベンラート
ホールデン・コールフィールド
小林左兵衛
....
逆立ちしてみれば
総てが180度 別世界であります
たった一人 逆さまな様は
見ず知らずの者から見れば 滑稽であります
この視線で眺めれば
ぞんざいな気の流れが
清浄な気の流れに見 ....
Eテレの白熱教室で
選択というテーマでインド系アメリカ人の先生が
比較調査の結果を喋っていた
都合良すぎで胡散臭かった
幸福という概念ですら
決めつけた枠組みだけで調査結果を説明していた
....
頑固のかたまりが
意に反して崩れていく
駆け出した午後七時
目の前にいるのに届かなかった
臆病の時間
アルコールにばかり手が伸びて
消えていく炭酸が
僕らの距離を近づけて ....
好きやってんでと、うつむくわたし
知ってたよと、うそぶくあなた
きらめくネオンの街で、さようなら、さようなら、
凍えるような
朝
遅刻の崖から身を乗り出し
思う
湯たんぽこの身にくくり付け
布団の海に
身投げしたい
誰かがここで何かを話しかけている、だが俺はそれをはっきりと聞きとることが出来ない、俺の神経は摩耗しきっていて、壁にかけてあるシャツが一枚ハンガーから床に落ちるだけでプツンと途切れてしまいそうだ ....
月は地球ぐらいじゃ消せないね
干し柿みたいに見えてるもんな
雲のほうがすごいよな
風のほうがすごいよな
海のほうがすごいよな
月は地球ぐらいじゃ消せないね
干し柿みたいに見えてるもんな
真夜中自転車を走らせ
小さな橋の上から
欄干に身体を預けのけ反る
晴れた夜空のてっぺんに
仄かに橙月がぶらさがる
雲ひとつなく銀河の河から流れる
ホシボシの瞬きは淀みなく美しい
....
籠から目を離したすきに
泡は部屋を水底にした
河口の伽藍
忘れられた灯に
落ちてくる星
水を孕み 裂き
横たわる
崖に丘に吼え
冷える溶岩
冬の裾野に ....
赤い月をみていた
赤い月が私をみていた
空は遠くなんかない
空は私のすぐ隣からある
君が だから
遠くたって
私のすぐ隣にいるのと
同じなんだよ
そう ....
半魚人
その海には半魚人がおりました。
彼は生まれた時からひとりぼっちでした。
生物学的にあり得ない以前に
遺伝学的にあり得なかったので
地球広しと言えども、同類がなかったのです。 ....
あなたのひとつめの死を現像するための暗室でいくつもの春を指折
り数えていた(宛先のしれない指示語が濫用されてしまう街の隅に
ちいさくうずくまったまま声を発さない亡霊たち(汲みあげる手つ
きで垂れ ....
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