中村くんとは小学二年のクラス替えのときに出会った
中村くんは絵の天才だった
井の頭公園で学年写生大会があった時に描いた彼の孔雀の絵
僕はそれを観せてもらって圧倒された
画用紙から今にも跳び出し ....
悲しくても
涙を流すこともできず
くやしくても
叫ぶこともできない
誰をうらめばよいのか
問うこともできず
寒々とした
野にさらされている
その積み上げられた姿が
....
元気を出せ!と恐喝しないでください。
金を出せ!なんかよりも恐ろしいのです。
回転台の壊れたヒーター
この部屋を暗室にしているカーテン
うまい嘘をつく季節風
渡すのか
渡すべきか
この使いきれない肉体を
その本質さえ死なぬ我が魂を
なるようになればいいさ
ずっと思ってたことを言った
僕はひどく酔っ払っていて
それが聞き取れない
なんだか自分の言葉は
あんまりに嘘がないので
ちゃんとしてる時じゃないと
理解す ....
ヨラさんは小児麻痺だった
ヨラさんはよく笑った
ヨラさんはそのたび涎を机に垂らした
ヨラさんは頭が良くてクラスでいつも1番だった
僕はヨラさんを笑わせるのが好きだった
僕はヨラさんの涎を ....
妻の嫁入り道具の箪笥の引き出しの奥には
昭和がひっそりと息をしていました
アルバムです
学生時代の集合写真
独身時代のスナップ写真
社員旅行の写真
私の知らない男性と二人で写っていた写 ....
ふたたび目覚めたときには
世界は様変わりしているだろう
おまえは目を見開いて
そのひとつひとつを心ゆくまで確かめることだろう
進化の過程に
われわれは必要ない
疑似餌を食らった ....
遠くの森のザワメキが
木霊するよな透空に
白雲一つ漂って
微睡みの午後に呑まれいく
遠い遠い感覚が
辺りを静かに支配して
わたしはぼんやり日溜まりで
胡座をかいて座っている
....
美しい寝顔に何を置こうか
鼻の高さに届く影を
閉じ込めるまで近くに行き
寝息を感じるだけで
輪郭の間を泳ぐ空気を拾う
この世界の限界ほど
目の前にある青い瞼が散り
....
*
青空ではなく あおそら と
くちびるに纏わる
透けた胎児 月のように
発芽を奥ゆかしくも留め置いた
――エバの種
見上げる大気の透過した青
見下ろす海の反射した青
....
まあ
このくらいで
いいでしょう
すべては過ぎ去るもの
衰え朽ちてゆくもの
明日は在るかどうかはわからない
ならば空になれ
鳥になり海を渡れ
繰り返し繰り返す過ちを忘れ去り ....
自由夫奈伊流自由夫奈伊流
如何尓毛斯久尓毛儂尓毛汝尓毛
如何程尓大人成流刀毛腮出弖尓而
山椒魚尓成良禮奴
自由夫奈伊流奈路於刀流
路於刀流路於刀流己尓言布刀流内波
尚自由夫奈伊 ....
小學校に上がるか上がらない頃でした
ある日の黄昏時
お須賀ばあちゃんは便所で倒れてしまいました
凄い音がしたので
孫の私が見に行くと
お須賀ばあちゃんは横倒しになっていて
小刻みに体が震え ....
その墓はアフリカ大陸が視える小高い丘にある
だけど墓地ではない あるのはその墓だけ
その墓には埋葬された彼の名前も
1894.5.27に生まれたことも
1961.7.1に亡くなったことも彫 ....
車の走る音も消え去る夜
終わりのないテレビは
コマーシャルが流れ続ける
今は砂の嵐がやってくることもなく
平べったい音が妙に落ち着く
明日のことを考える ....
どてらカボチャが降って来る
滝のように降って来る
頭をぶるんぶるん振り回しても
俺の脳は考えない、感じない
どてらカボチャはオンオン鳴く
夜陰を軋ませ鳴き続ける
俺は独り、立ち尽くす
....
透明に見える水が本当は青色だって知ってた?
真実を見抜くその瞳も
本当は透明なんかじゃないんだよね
わたしがその事に気付いた時
君は動揺を必死に隠そうとしていた
その瞳に色を宿して
....
きみはうす汚れた扉にもたれるのをやめて
新しいにおいのする通りのほうへと急いだ
おれは正体の知れないジレンマにすこしとまどったあと
洗面台で昨日の夢をようやく洗い落とした
冬の街は ....
こむずかしいことを言う奴は殺す
わからないことを言う奴から殺す
真夜中にひとり 径を歩いているだけなのに
それを咎めるような奴は殺す
崖の途中にぶら下がる屍体
月と陽 ....
そのひとは
そんなことばかり云ってないで の
そんなことばかりに
ちゃんとちゃんと
耳を傾けてくれるひとでした
そのひとは
呆れるくらい泣きじゃくる私に
何も云わず
私がしゃべ ....
間抜けとすこし話をした
どっかのドラマの中みたいに
でかいグラスに
ウィスキーを注いで渡す
金は、もうない
素直に話した
返すどころか
こっちでやってくぶんもない
マジだ
な ....
五番街に家が欲しくなった
だけど
この国の五番街が何処にあるかを
私は知らない
五番街に棲みたくなった
ボロいアパートでもかまわない
愛しい人と二人だけで棲みたくなった
五番街へ ....
パロディ映画とみまごうような
国会答弁
いやいや世界は
パロディなのだ
すべてはデフォルメされ
筋も脈絡も笑いとばして
矛盾なんて屁でもない
こじつけいいわけ言い逃れ
下手でもバレ ....
グレタさんがグレたとして
暴走族には入らないと思う
何故ならCO2を排出してしまうから
そしてタバコもやらないと思う
何故ならCO2を排出してしまうから
ロックを大音量で流さないと思う
何 ....
空の分け目に白い粉がつく
前や後ろに落ちてくるから
オブラートを飲む街の景色が
吐き出す息に口づけを交わし
窓枠に集まる結晶の跡を
なぞるたびに崩れる模様が
未来や希望のように ....
死ぬまでに全てを抹消してしまおうと
無駄に生きていても天球は確実に回転して
とても言葉が軽い時に
やっぱり訃報と交換なのだが
Resetすることを恐れてはならないと想う
リセットで救 ....
今日も
ボックスに入り
ボックスの電源を入れ
ボックスを叩くと広がる
ワーク・スクエア
ぬくもりのある
白いスクエアをいくつも広げて眺める
その片隅に
小さな赤い
サークルは ....
私に訪れたものは感覚の無為の実感であって、いかなるそれ以外の異観では無くて
実感として得られた私の感覚の消失が齎した空間を感じる気持ちでありました
高い窓などに顔を覗かせて不愉快な気分を空気に ....
デイサービスをやめて
寒くなってきて身体が硬くなってキツいから
寝る時に貼らない簡易カイロを左肩に敷いて寝た。
低温火傷していたなんて気づかなかった
次の日の夜背中が痒くて孫の手で掻いたら ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252